PMプロの知恵コーナー
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「エンタテイメント論」(148)

川勝 良昭 Yoshiaki Kawakatsu [プロフィール] :7月号

エンタテイメント論


第 2 部 エンタテイメント論の本質

7 本質
●新型コロナウイルスの感染にご注意下さい。コロナでお命を失われた方には心からお悔やみ申し上げ、ご冥福をお祈り申し上げます。

新型コロナウイルスの感染にご注意下さい。 新型コロナウイルスの感染にご注意下さい。 新型コロナウイルスの感染にご注意下さい。

●「創造」から「本質」への進展
 本号で「6 創造」から「7 本質」に進み、エンタテイメントの本質を様々な観点から考察する。

 しかし、かくも長い間、何故、「創造」について執筆を続けて来たか? 何故、「創造」がエンタテイメントに結び付くのか? 「エンタテイメント」はPM業界で異色なテーマであるだけでなく、世の中にそもそも「エンタテイメント論」はない。それなのに何故、執筆してきたか? 更に言えば、敬語、敬称を使わず、直截な文章で執筆してきたか? 多くの読者は不思議に思ったであろう。

 これらの疑問への答えは既に本稿で書いている。しかし此処で改めて明らかにしたい。また敬語・敬称を割愛し、直截な文章にしたのは、「エンタテイメント論」として執筆する以上、簡潔・簡略な「論文形式」にすべきと考えたためである。しかしこの割愛の非礼は此処で改めて謝罪したい。


●エンタテイメント論の「執筆要請」を受諾した理由
 筆者は「エンタテイメント論」を連載する前は、PMAJからの要請で「夢工学」を連載していた。

 ちなみに「夢工学」とは、PMを基盤にし、「夢(大好きな事、志、目標など)」を実現させ、成功させるための「在り方(基本的考え方)」と「やり方(具体的方法論)」を説いた工学である。本稿の終わりに掲載されている「デック思考」は夢工学式発想法の事である。

 「夢工学」の連載を終了した時、PMAJから「エンタテイメント」をテーマとして執筆する要請を受けた。筆者は「産官学」の3分野での実務経験を過去も、現在もしている。その中にエンタテイメント業界の経験を持っていた。その事を着目したPMAJが執筆を要請したと聞く。

 筆者は、この要請を受けた時、「エンタテイメント論」をほぼ完成させていた。従って本論を分かり易い形で毎月、連載しながら本論を洗練させるのは悪くないと思った。また従来からエンタテイメント事業に関して抱いていた問題の解決に繋がるかもしれないと考え、その要請を受諾した。

 当時、筆者が抱いていた問題点などは以下の通りである。

1 日本ではエンタテイメントやエンタテイナーに多くの誤解や曲解がある。エンタテイメント事業の実務経験者の筆者としては、これらの誤解や曲解を解消すべきと考えた。
2 日本のエンタテイメント業界で「真のエンタテイメント」とは何か? 「真のエンタテイナー」とは何か? 今後、如何に発展するべきか?等の探求姿勢が希薄である。あるべき姿を探求すべきと考えた。
3 日本のTV、映画、音楽、演劇などのエンタテイメント業界は、以前も、今も、単に面白可笑しいだけのモノ、単に流行に乗っただけのモノ、単に変わっただけのモノ、単に新しい技術を活用しただけモノをエンタテイメントの素材にして世の中に提供している。一時の関心や興味を引き、カネは稼げる。しかし直ぐに飽きられる。この現状を解決できないかと考えた。
4 もし「真のエンタテイメント」の中身を明らかにすれば、それがエンタテイメント業界に留まらず、他の業界が直面している問題を解決し、更なる発展をもたらす「鍵」になるかも?と云う「直観」を持っていた事などである。
出典:エンタテインメント nationalwatersportsfestival.com-Entertainment.jpg&action
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●直観から確信に
 「エンタテイメント論」の連載を開始し、続けている内に、上記の「直観」が徐々に鮮明になり、「確信」に変化した。

 「真のエンタテイメント」とは何かは今までの連載の中で紹介している。しかし今後、それをより鮮明に、詳細には解説する予定である。

 いずれにしても、エンタテイメント業界に限らず、それ以外の業界、即ち製造・製作・加工、流通、物流、金融、情報ソフト、医療、福祉、教育などの業界が「真のエンタテイメント」の本質を理解し、活用すれば、既存事業の改革、新規事業の実現と成功に寄与すると確信している。

 しかし残念な事に日本のエンタテイメント業界では「真のエンタテイメント」とは何かを追求する姿勢が希薄である。ましてや非エンタテイメント業界の製造、流通などの業界では、「エンタテイメント」が経営や業務に関わる事など誰も知らないだろう。しかしもしそれが「ビジネス・イノベーション」の成否に大きく関わていると筆者が主張したら、彼らは如何なる反応を示すだろうか?

●エンタテイメント論で「創造」を長年、連載した理由
 「真のエンタテイメント」を実現するために最も重要不可欠な事(Crucial Matter★)は、一にも、二にも「優れた発想」を生み出す事である。

出典:「優れた発想」で新しいエンタテイメント
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 「優れた発想」を生み出す事は誰でも可能である。しかし何もせず、出す事はできない。そのためには「創造理論」、「創造技法」、「創造実例」を理解し、体得し、発想法を実務に活用し、数多く発想する事が求められる。だから「6 創造」で長らく執筆してきたのである。

 ★Crucial Matterとキザに英語を使った訳ではない。「重要不可欠」の表現では不十分で筆者の真意を現わす日本語を知らないだけだ。Crucialには「ある事」が充足されないと、「他の事」が全て充足されても「すべて」が無になると云う意味があると聞いた。酸素が充足されないと、食べ物が幾ら充足されても死ぬ。酸素がCrucial Matter。エンタテイメント事業も、非エンタテイメント事業でも「優れた発想」がCrucial Matterである。この認識がもっと広まって欲しい。

●「優れた発想」は自分が最も使い易い発想法を活用して獲得
 「優れた発想」を生み出すには、天才でない限り、①発想理論と発想技法を学び、体得し、実際に活用する事、②自分が最も使い易い発想法を活用して「優れた発想」を獲得する事、③それでも「優れた発想」を獲得できず、暗礁に乗り上げた時は、「デック思考」の活用を薦める事である。

 ちなみに「優れた発想」に関する事例を参考までに簡単に例示する。

 例えば、テーマパーク事業の場合

出典:ユニバーサル・スタジオ、セガ・ジョイポリス
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出典:ユニバーサル・スタジオ、セガ・ジョイポリス
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 パークの施設と施設内のエンタテイメント・ショーは、数えきれないアイデアの結晶で完成したものである。「優れた発想」を生み出し、それに基づいて全体コンセプトを構築し、専門分野の知恵を結集してハード施設やショーを作る。

 ハード施設とショー・システムの設計~建設・製作~試運転~完成~稼働~運営の全ては「優れた発想(アイデア)」を基に実行される。もし「愚かな発想」で実行されると全てがダメになる。

 例えば、エンタテイナーの場合、
出典:エンタテイナー 
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clipartoday.com/clipart/entertainment/musicnotes_164477.html 出典:エンタテイナー 
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出典:エンタテイナー
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 エンタテイナーは誰もが演技内容や衣装等に工夫に工夫を凝らし、他にないユニークな事物を生み出すため人知れず必死の努力している。しかし幾ら努力しても「優れた発想(アイデア)」を生み出せないエンタテイナーは舞台から、TVから自然に消える。

 「優れた発想」が出来た人物は、演技と衣装とそれを支える環境システム(舞台、照明、音響など)を工夫する事が可能になり、舞台やTVで観衆を満足させる事ができる。

 しかし日本のエンタテイナーが発想法を駆使して演技を開発したと云う話を聞いた事がない。使えばもっと人気が出るのを知らない。

 それにしても最近の日本のTVや舞台に出演する日本人のエンタテイナーの演技の質の低さは目を覆うばかりである。知恵が無さ過ぎる。ちなみに筆者は若者と同様にTVを殆ど見ない。見るのは①ニュース、②ドキュメンタリー番組、③面白そうな映画だけ。しかしYou Tubeは若者と同様に「優れた発想」で作られた世界の映画や音楽などを探して見ている。

つづく

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