理事長コーナー
先号   次号

時代はニューノーマルへ、そしてアフターデジタルへ

PMAJ 理事長 加藤 亨 [プロフィール] :6月号

 今、世界が大きく変わろうとしています。
 きっかけは新型コロナウイルスの感染防止対策ですが、国や地方自治体の外出自粛要請の中で、多くの組織がテレワーク、オンライン会議による在宅による業務遂行へと移行せざるを得なくなり、緊急事態宣言が解除されたとしても、テレワークやオンラインによる勤務が継続する新しい常態(ニューノーマル)に移行するのではないかと言われています。
 このニューノーマルという形態を別の観点で眺めると、これまではリアルの世界を補完する役割であったデジタルの世界が、一気に主役に転じ、リアルの世界は、むしろ避けるべきプラクティスとして後ろへ追いやられるという、主役とわき役が一気に逆転してしまったような感があります。多くの人は、その逆転に戸惑っているのではないでしょうか。
 私自身も、その逆転に戸惑いを感じ、世界の状況を参考にしようと思い、外出自粛でテレワークを続ける中で、いろいろな本を手に取ってみました。そして、実はコロナウイルスの感染が起こる前から、デジタルが主役のビジネスモデルが現実になっている国が多くあることを紹介している本に出合いました。2019年3月に発行された「アフターデジタル」(藤井保文氏、尾原和啓氏共著、日経BP社発行)という本がそれです。
 そこで紹介されていたのは、すべてのリアルの世界の動きがデータ化されてデジタルの世界に取り込まれ、リアルとデジタルが融合して動く社会の姿でした。SF映画の話しではなく、注射器で体内に埋め込まれたチップで買い物の決済だけでなく、申請や手続きまでが手をかざすだけで完了している国の話しや、スマートフォンで注文した生鮮食料品が決済を済ませて30分以内に自宅で受け取ることのできることを実現している国々の話しなどでした。
 日本に目を転じると、ニューノーマルにどのように対応するかが大きな課題となり、DX(デジタルトランスフォーメーション)が実現されなければ大きな不利益が発生するという議論が大きな社会問題となっている状況です。
 すでに世界は大きく動き始めているようです。ニューノーマルの不都合を嘆くよりは、これまで日本を束縛していた様々な規制、法令、習慣、価値観が、感染防止のために脇に置かれている今こそ、ニューノーマルの先にある、すべてがデジタル化されたデータの移行だけで物事が切れ目なく進む世界、アフターデジタルへの対応を進めるチャンスだと前向きにとらえる必要があるのではないでしょうか。
 PMAJも、大きく変わっていく必要があると考えています。その一環として、今後予定されている講習会や、日本各地で開催されるPMセミナーを、すべてオンラインで行うことにしました。もちろん、9月10、11日に予定されているシンポジウムもオンラインとオンデマンド配信を併用して実施する予定です。
 改めて、「世界は変わった、私たちは変われるか?」が、今、問われているのだと思います。

ページトップに戻る