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日本の危機の認識とプロジェクト・マネジメント活用への提言 (3)

東京P2M研究会 渡辺 貢成: 6月号

Z. Iさん、日本の危機認識とPMの活用というテーマが大きいので、少しまとめながら話を進めたいと思う。
 4月号が新規テーマの第1回目である。この要約から始めてももらいたい。

I. 4月号のテーマとその内容の大まかな概要を説明します。
i ) 2月号までは町の地域再生協議会とのやり取りでした。そこでこれ以上議論する必要がないので、取りやめの理由を説明しました。
結論は日本政府が求めていた地域開発は今まで実施してこなかったテーマを掘り出し、民間人の協力を得て、持続性可能な自己管理体制の確立を目指すものでした。私の町の地域再生協議会は下記が実行されました。
第一次計画は①古民家の有効活用②小学校敷地内裏山での山百合栽培と町民の融合活動、③県営住宅公社のアパート遊休率50%対策④100名の合唱団設立等でした。その案件は無事終了しました。“アベノミクス”が望む、町の収益向上には貢献できませんでしたが、町には活気が出るようになりました。
⑤として追加案件募集があり、「公社のアパートのリノベーションによる改築を利用して、「子育て願望共稼ぎ家族の公募と、子供の育成に関しては、手の空いた老人会が責任をもって面倒を見ます。その際の面倒見の費用はNPO設立後決定します」という内容でした。

町では前年度に10名の独身者がリフォームしたアパートに入居してきました。そのため、昨年度の人口に関しては現状維持ができました。
その成功があったため、私が会長を務める老人会に子育てできる機能を強化し、この事業の達成可能性を見定め、公募に応じました。残念ながら、町独自のタテ型組織に阻まれました。しかし本件は慌てることもないので、時期尚早という判断で活動を中止しました。

Z. PMの活用はどうするのかな?
I. 米国の企業では個人は自分の業務を企画し、上司に提出し、本年度の成果を事前に決め、成果に対する報酬を契約します。そしてその計画はPMで実施しています。そのため、米国ではPMが毎日使われています。これに比べて日本の企業組織は前年度からの踏襲か、新規テーマが出されるか決まっていません。ここで欧米と違うところは、何を実行しても報酬は年齢に応じたものになります。そのため通常はPMが使われていません。正直なところあなたは今なにをするべきか、命令されていません。これではPM資格保持者も宝の持ち腐れになります。そこで今回私がするべきテーマは大きいものがいいと心に決め、「日本のグローバリゼーションは何が望ましいか」を自ら考え出すことにしました。一つには「日本はグローバリゼーションでは何をするべきか」を考えることに決めました。“アベノミクス”は目下の貴重な案件ですが、これは基本的に国内問題です。
私が危機と感じている問題は、日本の官・民ともに業務を推進する組織が、終身雇用、年功序列と年功賃金、経験実績の高いものという発想があります。結果的に経験者を長とする人脈組織がそのまま生き返って、日本の競争力低下の根源となっています。

Z. わかった。この弊害は次回以降にしよう。グローバリゼーションに関しては何か調べたかな。

I. グローバリゼーションに関する考察
1 ) 環境の変化に伴う考察
グローバリゼーションはコロンブスの大航海時代にさかのぼるが、現代のグローバリゼーションとの相違は国の境界がなくなることで、発想が大きく変わります。強欲の資本主義からの離脱です。
インターネットの出現が情報の国境を破壊したことで達成できる何かを考える

2 ) グローバリゼーションと国際化の相違
ヒト、モノ、カネが国、地域という枠組みを超えて活発に移動し、政治や経済、地球規模で拡大する現象で、技術改革により、経済の自由化や人的交流を可能とするグローバリゼーションが活発化すると日本企業の多くがグローバル化に対応したビジネスモデル創出や、人事制度の改定その他が達成されグローバリゼーション副産物が摘発される。
国際化との相違は「国際的な視野に立って、地球規模で行動する」という概念を指すがグローバリゼーションは国、地域をはじめあらゆる枠組みから外れ、ヒト、モノ、カネ、情報までも交互に行き来し、世界規模での統合が図られる。発想が広く拡大できる。

3 ) 具体化し始めた環境の調査対象
i) EUの発展と今後の課題
完全なグローバリゼーションではないが、欧州全土が淘汰しあう環境から解放され一体化した。規模の小さな一体化で何がよくて何がまずかったかを見極める。
通貨の固定化はドイツだけの一人勝ちで、いずれ崩壊するに相違ない。
ii) 巨大なグローバル企業の淘汰意識
金融関連事業への考察:少数の大金持ちと大多数の貧困者の増大につながる
技術的独占性の強い業種への考察:全人類に希望の持てる政策の実現を願いたい
低賃金労働者提供企業への考察:世界は今より貧困が進むと思う
iii) 日本企業のグローバリゼーション化への考察(これから大きな検討が展開することになる。地球人の幸せ、不幸せが決まる。
自動車産業からの転換
日本に主体性ある産業からの転換
Cool Japan への転換、Cool Japan からの転換:日本はCool Japanの 展開を工夫することが望ましい。
国からの期待

4 ) 具体化し始めた環境の調査結果
EUの趣旨に同意し、淘汰される環境より、同盟化したい願望が強く、多くの国が参加し、協力しあう環境整備が求められている。
EU全体とすると成果を上げているが、難点は使用通貨の固定である。
EUは独自の概念で、加入者は共通通貨であるEU通貨だけで域内競争を強いられている。そのため現在はドイツ一国の一人勝ちです。その理由の一つはプロのゴルフと同様にハンデキャップなしの試合を強いています。
ここでの課題は「ドイツの一人勝ちです。EUは長生きできるか」です。
解決策の提案
一方私たちアマチュアゴルファーは初心者もベテランに交じって競技します。そのため、初心者には最初にハンデキャップを与え競技します。しかし、このハンデでは毎回過大な支払いを強いられます。そこでアマチュアは努力して生き残るか、やめるかの判断をします。努力してハンデが適切となると競技は面白くなり、競技人口が増えます。
英国のEU離脱は複雑で調査の対象から外します。

Z. では、EU以外のビジネスの世界ではどのような試合をしているかを見ると、その国の通貨の成績の上下で通貨の価値が上下しているが、その通貨の価値を誰が決めるのかね?
I. そうですね。そこが肝心なところですね。これまでの常識はアダム・スミスが証明しています。
-アダム・スミスー(英国18世紀経済学の父とよばれたの)が国富論を出版し、“市場という見えざる手”がある。これは「市場には需要が高まれば値が上がり、これを見て供給が増えれば値が下がるという“市場の見えざる手”がある。政治などが口を出さないほうが良い。その方が「社会全体が豊かになり国民は幸せに暮らせるという」のが当時の国富論の要点でした。
Z. 今はドルを売ると儲かるか、損するかを考えた人々の集大成としてドルの価値が決まるというわけだな!
I. その通りです。この世界ではアメリカという強国がおり、生まれたての小国もいます。しかし市場で評価された通貨価値で競争していますが、不思議なことに長続きしています。
しかし、グローバリゼーション化で戦っている市場ではコロンビア大学ジョセフ・スティグリッツ教授がいう“「強欲」の見えざる手”が存在しているという後述がありますので、その説に従います。
そこで下記の案件の調査をします。
i) PM活用のための展望:グローバリゼーションを展望し、将来有望なテーマがあればPM活動を開始する。

Z. 先月はEUのジャック・アタリEU要人の話があった。
ii) EU関連の件 先月は簡単ながらジャック・アタリのグローバリゼーションの流れの中で、日本国の動きを明確に示してくれた点が役に立った気がする。 しかし、困難かもしれないが、早急にでも全貌を調べ検討し、日本国の対応を示してほしいな。これがわからないと話が進まないとおもう。

I. 先月は非常にタイミングよく、執筆前日にジャック・アタリのテレビ放送があったのは幸運でした。今月はコロンビア大学ジョセフ・スティグリッツ教授の話がありました。

iii) 彼の話は出だしに、-アダム・スミス-(英国18世紀経済学の父とよばれたの)国富論の“市場という見えざる手”がある。これは「市場には需要が高まれば値が上がり、それを見て供給が増えれば値が下がるという“見えざる手”がある。政治などが口を出さないほうが良い。その方が「社会全体が豊かになり国民は幸せに暮らせるという」のが当時の国富論の要点でした。

これに対し、教授は「アダム・スミス」は間違っている。現在の市場は「自己利益追求」が主で、場の名前は“「強欲」という見えざる手”である。
40年前にレーガン米大統領とサッチャー英首相はグローバリゼーションで国民の生活水準があがると説明していたが、高度成長が金持ちにだけ有利に働き、庶民層は60年前の低水準のままである。結果として現在の資本主義はグローバリゼーションによって「強欲」な資本主義となり、政治課題として富の配分の不平等さ残された。

スティグリッツ教授は進歩的な資本主義という概念を求めており、「民衆・権力・利益」を平等にする仕組みを取り入れ、民衆を重視した、民主主義を目指している」という発言があった。

スティグリッツ教授は日本について以下のことをのべている。
日本の海外援助について、「日本は世界第二位の経済大国であり、グローバリゼーシンをよくするための責任を負っている。日本への期待は世界の平和や貧困撲滅に前向きに取り組んできたことだ。今後とも途上国支援に関与してほしい。
日本がバブル崩壊後から10年以上も名目GDPの成長不全や、デフレーションに落ちいっていることを指摘し、(大蔵省のデフレ政策の継続)その状況から経済を好転させるために財政赤字紙幣増刷によってファイナンスするように提言している。新しく刷られたお金を『ここでは国債でなく、政府が発行する紙幣』を人々が持てば、それらの人々が財やサービスの消費にお金を回そうとするだろうし、銀行など金融機関が貸し出しを増やし景気を刺激するからである。教授は3月14日経済財政諮問会議に出席し、政府・日銀が保有する国債を「無効化」することで政府債務は「瞬時に減少」し、「不安はいくらか和らぐ」と提案した。

日本の経済を刺激する方法に、円高を食い止める製造業の輸出競争力を向上させる、サービス産業の強化、富裕層の資金を低所得の人たちに行き渡らせ、格差の是正に取り組むこと等を挙げている。日本の円について「日本のデフレの原因は、為替の影響が大きかった。円安が続けば、その状況が変わる。現実問題としてアメリカが金融緩和を進めれば、円高になるので対抗することが必要だ。
安倍政権の経済政策“アベノミクス”の副作用が懸念されることについて、「実施しないほうが将来的なリスクになる」と述べた。
“アベノミクス”について、3本の矢の中で第三の成長路線は一番難しく、持続可能な成長を促すために、いかに金を使うか、これが一番難しい。イノベーションといえばこれまで人が働くコストを下げてきた。しかし、今は高い失業率に悩まされている。労働力を省くイノベーションの追求は困難である。
最後に日本についてこう述べた。「“アベノミクス”では、拡張型の金融政策が必要だ。また強力な財政政策が必要であり、そして規制緩和など構造上の強力な政策が必要である。世界の中でも、包括的な枠組みを持っている数少ない国だ。以下政策を成功させるやり方へのコメントがあり、これらの構造改革が成し遂げれば、持続可能な繁栄を遂げることができると信じている。

Z. よく調べてくれました。
I. 私は興味深い本はすぐ購入し、気に入った本は『はじめに、目次、あとがき』をパワー・ポイントに収めます。世界の将来に関する本は購入しています。
グローバリゼーションに関してはいろいろな本がありますが、気になったのがユダヤ資本の動きです。
トランプ大統領になって、二つのユダヤ資本があり、前者は国務省を支配している“ネオコン派”というグループです。今のアメリカはWASPの支配から、ユダヤ系に変わったとユダヤ系ブレジンスキーの自伝書が述べています。トランプ氏が大統領になり、国務省派のネオコンとの戦いとなりました。トランプ大統領は国務省の要人を要職につけ、意見の相違で、次々と解任してしまいました。そのためネオコンの力が弱まったとみられています。
これが米国におけるグローバリゼーションに関する二つの流れです。
先月号で紹介したジャック・アタリ氏にはEUの代表的存在で、欧州のグローバリゼーションを表しています。
トランプ大統領の政策はおわかりとおもいます。
今月号のスティグリッツ教授は2016年に『これから始まる「新しい世界経済」の教科書』を出版しています。『GDPを超える幸福の経済学』―社会の進歩を測る―で究極的には幸福を目指したグローバリゼーションともいえます。次回はこの本の概要と究極の幸福論をお伝えします。

では日本国のグローバリゼーションは何を目指しているのか、目下不明です。安倍総理が進めていますが、財務省は常にデフレ派です。そして最低賃金世界一低い米国と同じ考えです。これについては集めた資料を研究した後に発表します。

また、資本主義も株主資本主義(「強欲」資本主義とは別に、公益資本主義(株主の利益のみを優先するのではなく顧客、取引先、地域社会の利害等を加味した資本主義をいう)、ステークホルダー資本主義もあり、近江商人が実施した「日本的で3方皆よし」というものです。
Z. 来月号は何をテーマにするのかな。
I. 米国における金融資本主義の恐ろしさを紹介します。

以上

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