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「エンタテイメント論」(146)

川勝 良昭 Yoshiaki Kawakatsu [プロフィール] :5月号

エンタテイメント論


第 2 部 エンタテイメント論の本質

6 創造
●筆者への「個人的相談」
B-4 中小企業を経営する社長(役員)からの個人的相談

 自分は中小企業を経営する社長(役員)である。社長(役員)としてやるべき事は、やっていると自負している。会社はいろいろな深刻な問題を抱え、「今のまま」では「近い将来」ではなく、現在が「ヤバイ」と「冷静に深刻に認識」している。今、何を考え、如何に行動すべきか? 教えて欲しい。

出典:専門相談
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 筆者に経営相談に来た各種の企業の社長や役員の中で、数組の人達が個人的な相談をした。彼らの上記の相談に以下の様に「回答」した。なお筆者は読者に質問を出した。その答えを数月待たせた。そのため先ずその質問から答えたい。

●筆者の読者への質問への回答の前に?
 その質問とは、「自社で新しい商品、製品、サービスを開発する事と新しい事業を開発する事(新規事業)と何が違うのか?」であった。この質問は「本人が経営のプロか? 経営のアマチャーか?」を判断するための情報の1つになる。筆者は相談に来た彼らに、この質問をした。しかし正確に答えた人物は社長の半分、役員の1/3であった。

 さて筆者が「何が違うのか?」を答える前に、そもそも「違う」とは何をする事か?を説明したい。 多くの人は「違う」ことを説明する時、違う内容、違う現象などを説明する。例えば「男と女は何が違うか?」の質問に、男は体が大きく、力が強い、男性性器を持つ、子供を生めないなど、女は体が小さく、力が弱い、女性性器を持つ、子供を生めるなどである。しかし体が大きく、力が強く、両方の性器を持つ、子供が生めない女は男なのか? これでは「違い」を説明できない。

 「違う」事を説明するには、男と女を夫々「定義」する事で初めて可能になる。ならば「定義」するとは何をする事か? この質問に個人的相談に来た彼らは正確に答えられなかった。もっとも筆者が今迄に接したSEなどのシステム事業従事者で正確に答えた人物は皆無であった。驚きを越えてショックを受けた。

 「定義」するとは何か? 本稿で何度も説明した。敢えて繰り返す。「定義」するとはYesか、Noかで答えられる「基準」を明らかにする事である。コンピュータはYesか、Noかで計算する。コンピュータによる新しい事業システムは、その事業の構成要素である全ての業務を「定義」し、その「定義」の累積で完成される。筆者が接したSEなどのシステム事業従事者は「定義」の本質(基準)を理解せず、事業システムを構築していた事になる。大丈夫か?

出典:定義とコンピュータロジック
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  ロジック
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●筆者が「定義」にこれほど拘る理由
 20世紀になって「電子顕微鏡」を発明され、男と女の染色体を識別して、やっと男と女の「違い」を明らかにする事が出来た。人類は600万年前~500万年前に誕生した。人類は男女を定義するために5~600万年掛かった事になる。「定義」するとは「科学」することである。

 しかし上記の染色体の定義でも男女の「違い」を明らかにできていない。それは「男女の精神心理構造」の有無を基準にせねばならなくなったからだ。胎児の時に浴びたホルモンの有無が原因である。欧米の某国や某州では、「女の精神心理構造」を持った男は女とする事を、「男の精神心理構造」を持った女は男とする事を夫々医学的観点から認識し、基本的人権擁護の観点から法的に認めた。その結果、結婚が認められた。タレントの「はるな愛」を完全な女であると日本社会が認めていない。日本は医学的にも、法律的にも遅れている。

 筆者は何故、これほどまでに「定義」に拘るのか? それは「定義」する事こそが「ロジカル・シンキング(Logical Thinking 理性的発想)」をする事の基本中の基本になるからだ。そもそも定義できない人物は、業務も、経営も、何事も、中途半端な成果しか出せないと断言できる。その様な人物には経営論も、リーダーシップ論など何も役に立たない。

 しかも皮肉な事にその様な人物は「非ロジカル・シンキング(illogical Thinking 感性的発想)」が出来ない。何故か? 簡単である。ロジカルの本質(基本、基準)が分からない人物に、非ロジカルの本質(基本、基準)が分かる筈がないからだ。ちなみに筆者が提唱する「デック思考」は、空想~奇想~狂想の「非ロジカル発想」を強く求めるが、同時に徹底した「ロジカル発想」も求める。

 「定義」するロジカル思考の基本姿勢を貫く過程で、逆に「定義」不可能な事象の存在を空想~奇想~狂想する。この「定義」と「非定義」の矛盾領域で「優れた発想」が生まれる。アインシュタインは「理論物理学」と云う「ロジカルシンキングの城」から抜け出し、時間は縮むかも? 空間は曲がるかも? と云う空想~奇想~狂想の発想をした。だからこそ相対性原理が誕生したのだ。

●筆者の読者への質問への回答
 筆者の回答である「何が違うか?」を答える。その基準とは「新しい事業基盤」の有無である。

 「新しい事業基盤を創るか?」に「No」ならば、新規事業ではない。新しい商品、製品、サービス等を開発しても既存の事業基盤の全部や一部での実施を意味する。これは「既存事業の改善(改革)」。しかし多くの日本の企業人は「新規事業」と言う。どう言うかは企業の判断次第。筆者は「既存事業の改善(改革)」と考える。これをビジネス・イノベーションとして活動する場合、改善(改革、小さい)のビジネス・イノベーションと言われる。但しビジネス・イノベーションとするならば、その事業の機能(働き、効果等)を最低50%以上向上させる事、コストを最低50%以上を削減する事に挑戦せずして、ビジネス・イノベーションと言えない。多くの企業はこの事を誤解している。

 「新しい事業基盤を創るか?」に「Yes」ならば、新規事業である。新しい商品、製品、サービスなどを考案し、生み出し、供給し続けられる「新しい事業基盤」を計画し、建設し、完成させる。その基盤上で「新しい価値」を持った上記の商品、製品、サービスを供給し、継続し、新しい事業を成功に導く。これが真の「新規事業の実現」と考える。これをビジネス・イノベーションで実現させる場合は、変革(革命、大きい)のビジネス・イノベーションと言われる。

●新しい事業基盤の形成=創業
 新しい事業基盤は、「新しい価値」を持った商品、製品、サービス等を供給し続ける事業地盤、システム、仕掛け等の総称名(プラットフォーム)である。この新しい事業基盤によって「新しい顧客」が生まれ、満足した顧客から「新しい収益(売上げ、利益、現金)」を得る。これこそまさに「創業」である。

出典:事業基盤の構築と事業運営

 創業である「新規事業」を成功させる事は至難の業である。何故なら多くの場合、既存事業の経営体制や体質、時に経営思想をさえ変え、既存経営に「変革(革命)のインパクト」を与えねば、このイノベーションは絶対に成功しない。この事を多くの学者、企業人等が異口同音に主張している。

 トヨタ、日産などの自動車会社、日立、ナショナルなどの電機会社、日本製鐵、JFEなどの製鉄会社、NTT東日本、NTT西日本、NTTデータなどシステム関係会社など日本を代表する会社は、新しい「事業基盤」を実現させ、その基盤で世界に誇る新しい商品、製品、サービスを生み出し、成功しているか? 残念ながら「改善(改革)のビジネス・イノベーション」の領域に留まっている。これでは日本の企業の国際競争力が低下するのは当然である。「革新(革命)のビジネス・イノベーション」を実現させねば、日本の経済、産業、事業の将来が危うい。

出典:アイデア&ビジネス・イノベーション teachervision.com/sites/idea line-images/534139822.jpg Oakland + Tech + Business + innovation + images =1586916883 出典:アイデア&ビジネス・イノベーション teachervision.com/sites/idea line-images/534139822.jpg Oakland + Tech + Business + innovation + images =1586916883
出典:アイデア&ビジネス・イノベーション teachervision.com/sites/idea line-images/534139822.jpg Oakland + Tech + Business + innovation + images =1586916883

●相談に来た社長への回答
 「今のまま」では「近い将来」ではなく、現在が「ヤバイ」と「冷静に深刻に認識」している。今、何を考え、如何に行動すべきか? 教えて欲しい。筆者に相談に来た彼らへの回答を説明する。

 筆者は、敢えて失礼を顧みず、彼らに「貴社は元気な企業ですか? 傾く可能性があるが、それまで時間の余裕がある企業ですか? 傾き始めた企業ですか? 既に傾いている企業ですか?」と質問した。しかし反省して、失礼を顧みて、彼らが答える前に、筆者の方から発言した。

 「新規事業は、元気で隆盛を誇っている企業又は傾く可能性があるが、それまでに時間の余裕がある企業が挑戦しないと成功しない。傾き始めた企業、既に傾いている企業が挑戦すると成功するどころか失敗し、最悪の事態(倒産)になる可能性が極めて高い」と伝えた。

 これを聞いた瞬間、彼らは顔を曇らせ、沈黙した。暫くして漸く「もっと早く相談すればよかった。遅かった」とつぶやき、「ならばどうすればよいでしょうか?」と益々深刻な表情で尋ねた。

 「大丈夫です。方法があります」と答えた。その瞬間、彼らの表情が途端に明るくなった。しかし筆者は「最低でも、以下の事は実行して下さい」と伝えた。

その1 傾き始めた企業、既に傾いている企業は、既存事業の改善(改革)に取り組むこと。
但し「改善(改革)のビジネス・イノベーション」として取り組む場合は、その事業の機能(働き、効果等)を最低50%以上向上させる事、コストを最低50%以上を削減する事で挑戦すること。いずれの場合でも、先ず既存の事業で元気になること。元気になれば、新規事業の実現と云う「革新のビジネス・イノベーション」に挑戦すること。この逆はないこと。
その2 ビジネス・イノベーションは、規模の大小、改善(改革)、革新(革命)を問わず、「優れた発想(アイデア)」がなければ、人、物、金、土地などが幾ら豊富にあっても成功しない。「優れた発想」があれば、人、物、金、土地などが不足しても成功する。従って「本心、本気、本音」で是が非でも「優れた発想」を絞り出すこと。
その3 経営として「やるべき事」、「やってはならない事」を認識し、迷っても、後悔しない様に、失敗を恐れず、決断して、「やるべき事」をやり、「やってはならない事」をやらないこと。

 上記の「その1」から「その3」については更に詳しい解説が必要と考えている。しかしそれを本稿で書くと相当の紙面を要する。そのため次号で解説する事にした。

 筆者への「個人的相談」の内容を数号に亘って解説した。これらは「個人的相談」であるに拘わらず、個人的な相談、例えば趣味(道楽)の相談などでなく、会社での業務遂行や会社経営に関する相談が殆どであった。興味深かった。

 最後に、筆者の回答内容や解説等に読者から質問したい場合、意見を述べたい場合、更に筆者に「経営相談」や「個人的相談」をしたい場合があれば、PMAJ事務局を通じて、遠慮なく、質問、意見、相談をして欲しい。喜んで対応する。

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つづく

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