理事長コーナー
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プロジェクト型学習(PBL)で学ぶSDGs

PMAJ 理事長 加藤 亨 [プロフィール] :4月号

 先日、A社の方からの依頼を受けて、プロジェクト型学習(PBL)のワークショップを実施してきました。A社は、以前このコーナーで紹介した、「ソリューション研究会」というPBLの場を、20年以上にわたって提供している会社です。私はこの研究会に、最初は研究会メンバーとして、後に、幹事そして報告書の審査員として20年近くかかわってきました。その研究会の事務局のNさんから、「後輩に加藤さんのノウハウを伝授してほしい」とのご依頼により実施することになりました。せっかくの機会なので、研究会のノウハウだけでなく、短時間でもPBLを実践してもらおうと思い、ワークショップ形式で実施することにしました。
 PBLを実施するためには、参加者全員で議論できる題材を選定する必要がありますので、いろいろと考えた末、「今日からできる身近なSDGs(持続可能な開発目標)」を題材として実施することにしました。
 ワークショップ(WS)は、はじめに簡単にプロジェクト型学習の説明とWSの進め方の説明を行ったうえで、WS1としてチームごとのビジョン・ゴールを設定し、WS2として設定したゴールを実現するための提案をまとめてもらい、最後に各チームのプレゼンテーションを実施するという構成で行いました。
 WS1では、最初10分間は一人一人に、国連の定める17のゴールから一つを選び、現状の問題は何か、どうなって欲しいかという願い(ビジョン)を明確にして、その願いを実現するために今日からすぐにできることを提案(ゴール)としてまとめてもらいました。そして次の20分間に、チーム内で一人一人の意見を聞いたうえで討議を行って、チームとしての提案をまとめてもらいました。
 参加した方の多くは、IT系の若手・中堅の方々だったので、開始前は「議論が盛り上がらないのではないか」、「シーンとしてしまったらどうしよう」などとかなり心配していたのですが、始まってみると皆さん、かなり真剣に議論をしていて、ホッとしました。
 WS2では、チームで設定したゴールを実現するために、改めて、現状の問題は何か、その問題を解決するために必要な情報は何か、情報を分析して解決策をリストアップし、ゴール達成ための優先順位から最終的なチームの提案にまとめてもらい、その後、各チーム5分でプレゼンテーションをしてもらいました。
 プレゼンテーションでは、あるチームからは、「良い教育を平等に提供する」というビジョンに対し、シンガポールと日本の教育制度を比較して教育の実情を広く知らせて行くことで議論を高めていく、という提案があり、他のチームからは、「安全に暮らしたい」というビジョンから「今日からできるコロナ対策」というゴールに対して、現状の問題分析から国民の不安を解消する正しい情報の提供方法を紹介したりなど、各チームとも30分という限られた時間の中でギリギリまで議論した結果をコンパクトにまとめてプレゼンテーションをしてくれました。
 その中に、現状の問題として日本のSDGsに対する認知度が16%しかない点を取り上げ、認知度を上げるために会社にこの情報を持ち帰り、身の回りから情報を共有することを始めるという提案をしてくれたチームがありました。
 私は、このプレゼンテーションを聞いていてはっと思いました。
 実は私は、PMAJの理事長に就任したときから、「PMAJとして何らかの社会貢献をすべきではないか。」と考えてきました。ただ、PMAJで何ができるのか、何をすれば良いか見当がつかず、ずっと模索していました。
 まさに、先のプレゼンテーションを聞いた瞬間に、「プロジェクト型学習という形でSDGsを学習・討議する場を提供し、SDGsに対する認知度を高め、その達成に向けた意識を高めて行く取り組みこそ、PMAJがその知見を活かし、人材を活用して取り組むことのできる社会貢献活動ではないか」という考えが頭に浮かびました。
 4月になり、PMAJも新年度を迎えました。まだ、新型コロナウイルスの影響が大きな時期であり、事業計画として、リスク対応計画や事業継続性計画を意識したアクションが求められる年度ではありますが、PMAJの、あるいはプロジェクトマネジメント業界のプレゼンスを示す活動として、「プロジェクト型学習(PBL)で学ぶSDGs」というワークショップを広く提供し、公益に貢献して行く活度を、事業計画の施策の一つとして、実践して行きたいと考えています。
 このような活動にご興味をお持ちの方は、ぜひPMAJまでご連絡ください。お待ちしております。

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