理事長コーナー
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フレームワークの勧め

PMAJ 理事長 加藤 亨 [プロフィール] :3月号

 「加藤さん、“前回のプロジェクトでは、一生懸命工夫して、一生懸命努力して、成功裏に完了しました。今回も一生懸命やりますから大丈夫です。”と言っているPMに安心して仕事を依頼できますか。」
「えっ!?」
 10年以上前に交わされた、技術士試験の指導コンサルタントと私との会話です。
 当時の技術士試験では、「技術的体験論文」を申し込み時に提出し、筆記試験の合格後の口頭試験の際に、その論文について面接を受けることになっていました。実は、私はその更に10年ほど前に受けた技術士試験で、筆記試験は通ったのに口頭試験で失敗した経験があり、その反省を踏まえ、その時の試験ではコンサルタントの方に指導を仰ぐ事にして、冒頭の会話になったわけです。
 私は、“一生懸命工夫して、一生懸命努力して成功したことのどこが悪いんだ。”と思っていたのが顔に出たのか、コンサルタントの先生曰く、「加藤さん、前回のプロジェクトは一生懸命やって、たまたまうまくいったかもしれませんが、次回、一生懸命やったからと言って、成功する保証がどこにありますか?」とのこと。つづけて、「“私は前回のプロジェクトでは、こういう方法論(フレームワーク)を使って成功しました。今回もこの方法論を使うので、必ず成功します。”と書きなさい。」
 今思えば、あの時が、私がフレームワークに目覚めた瞬間だったかもしれません。
 以来、私は業務を行う際に、いろいろなフレームワークを研究し、それを応用したり組み合わせたりして業務を遂行することを習慣にしてきました。最終的には、課題解決に普遍的に使える「加藤モデル」というフレームワークを開発し、その後は、ほぼすべての業務をこのフレームワークでこなしてきました。
 この経験を分かち合うべく、先日、PMAJで「PMが身に着けておくべきフレームワーク」というテーマで講義を行わせていただきました。参加人数は多くはありませんでしたが、参加者の皆さんには満足いただけたようです。
 私がフレームワークの講義を行うときにお伝えする、フレームワーク(以下、FWと略します。)の効用は以下のとおりです。
FW自体が、全体感を把握する仕組みを内包している場合が多いので、自然に全体感を確保した業務遂行が可能となる。
FWはもともと、目的を達成するための道筋を形にしたものなので、最後まで目的を達成することに集中して業務を遂行できる。
FWは多くの場合、目に見える形に形式知化されているので、ステークホルダーに説明する場合も理解しやすくコミュニケーションがとりやすい。
自分の業務を後輩に説明する場合や、部署の記録として残す場合も目で見て分かりやすいので、技術継承や人材育成に有効に活用できる。
などが挙げられます。
 また、FWを組織全体で活用することによって、組織の標準化が進み、技術継承、人材育成がなされ、組織のコンピテンシーを高めていくことが出来るなど、非常に多くのメリットを持っています。
 日常の業務の中で、フレームワークを活用し、それを自分なりに改善したり、組み合わせたりして、自分なりの武器を磨いていくことをやってみてはいかがでしょうか。今日の少しの変化が、必ず将来の大きな成長につながります。
 なお、今回は、フレームワークの内容の紹介が目的ではないので、詳細の説明は省きます。ご興味がおありの方は、次回の「PMが身に着けておくべきフレームワーク」にお申し込みください。(残念ながら予定は決まっていませんが。)

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