PMプロの知恵コーナー
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「エンタテイメント論」(144)

川勝 良昭 Yoshiaki Kawakatsu [プロフィール] :3月号

エンタテイメント論


第 2 部 エンタテイメント論の本質

6 創造
●筆者への「個人的相談」
B-3 中小企業に勤務する人物からの個人的相談

 自分は中小企業に勤める管理職社員である。定年は数年後である。管理者としてやるべき事以上の事をやっていると自負している。会社はいろいろな深刻な問題を抱え、「今のまま」では「近い将来」は「ヤバイ」と「冷静且つ深刻に認識」している。今、何を考え、如何に行動すべきか? また定年後、どうするべきか? 教えて欲しい。

出典:専門相談
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●生涯現役社会の実現に向けたシンポジューム
 独立行政法人「高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)」の主催、厚生労働省の後援で標記のシンポジュームが最近、大阪で開催された。JEED代表の挨拶、某大学教授の講演、某企業の人事担当役員による事例発表などが行われた。

 筆者は本シンポジュームに参加したかったが、仕事の都合で参加できなかった。そのため筆者の経営コンサルの仕事に協力してくれる大阪の友人のコンサルに参加して貰い、詳細な内容を伝えて貰った。

 パネル討議では、人生100年時代に高齢社員を如何に戦力化するか? 定年をどこまで延長するか? 高齢社員のモチベーションを如何に維持し、向上させるか? 定年後の起業を如何に実現するか?などが議論された。

 その議論の中で、65歳まで定年延長を検討する企業、定年後の起業を支援する企業などがある事が分かった。しかし生涯現役を実現する為の本当に有効で実現性のある方策は見当たらなかった。また生涯現役でなく、現役引退後の人生の楽しみ方を如何に得るかの議論は殆ど無かった。友人の経営コンサルに申し訳なかったが、筆者は、本シンポジュームから得た事は何も無かった。もっとも彼も筆者と同意見であったので、少し申し訳なさが軽減した?

●数年後に定年を迎えるA列車の相談者
 最近、俄かに「100年人生」が主張される様になり、先行きの経営不安で苦闘する銀行や証券会社は、新しい商材として必死で個人の資産形成のPRをTVや新聞でする様になった。

 この様な状況下で筆者は個人的相談を受けた。今回、相談に来た人物の特徴は、「定年が数年後に来る」と云う点に在った。彼は「A列車」に乗り続けて現在に至り、数年後に定年を迎える人物である。「B列車」に乗ったことはない。しかし今から慌てて「B列車」に乗っても成果を出せるか? 分からない。また彼は、定年延長を期待しているが、延長されても数年の勤務となる。「その後、どうすればよいか?」と云う不安を訴えた。

 彼は、趣味も、道楽もない人物。地元のコミュニティー活動や奉仕活動などの社会活動もしたことがない。まさしく典型的な「会社人間」である。これらの事は相談を受けた時に分かった。

 筆者は、彼に「定年後の人生設計や人生行路」を考えられる限り考えて、それを紙に書く様にその場で指示した。

  出典:人生行路 clipart-library.com/clipart/101572.htm 出典:人生行路 clipart-library.com/clipart/101572.htm
出典:人生行路 clipart-library.com/clipart/101572.htm

 約30分後、提出された紙に色々な事が長々と書かれていた。筆者はその場で纏め直し、彼の了解を得て完成した結論は以下の通りである。

1 再就職する。再就職期間は限度がある。その引退後、以下の「2」か、「4」の道を進む。
2 再就職せず、起業する。生涯現役を続ける。その間に趣味(道楽)や社会活動等をする。
3 再就職できず、年金と貯金等で生活。身に付けた趣味(道楽)や社会活動等を楽しむ。
4 再就職できす、年金と貯金等で生活。趣味(道楽)や社会活動等を身に付けて楽しむ。

 彼は、自ら書いた人生設計と人生行路を筆者が再整理し、纏めた資料を読んだ。「愕然」とした表情を浮かべ、急に無口になり、暗い雰囲気の中で考え込んだ。しばらくして、突然、大きい声で「再就職する方法を考えます。それがダメなら起業します」と発言した。

●再就職すること
 彼は、某中小企業の商事会社の管理者で若い頃から定年近くまで、営業、渉外等の「社外業務」や社内情報システム開発・管理等の「社内業務」を担当し、A列車に乗ってきた人物である。

 この様な経歴の彼が定年後に再就職をするのである。再就職先として彼が満足する企業を見付ける事は難しいと予想される。しかしどんなレベルの低い事(事務整理など)でも構わない。どんなに体を使う事(建設工事、道路工事など)でも構わないと云うならば、見付けられるだろう。しかし年齢制限に引っかかる。

 筆者は、彼に「Live Fish & Dead Fishの掟(本稿で紹介済)」を具体例を交えて、しっかり伝授し、この掟を守って定年前に再就職先を見付ける様に強く訴えた。もしLive Fishの状態で再就職先を探せば、彼が満足する企業又は満足はしないが妥協できる再就職先を見付ける可能性があると元気付けた。

●起業すること
 「生涯現役社会の実現に向けたシンポジューム」でJEED関係者、某大学教授、某企業の役員達は、「起業」する事を薦めていた。しかしシンポジュームで「起業を薦めた人物」は、経営学者や大企業の人事業務従事者であった。彼らは大学や大企業で人事問題を扱う人物である。本当に「起業」し、成功させた経験のある人物か? WEBで調べた限り、誰もその経験者ではなかった。

出典:「起業」の成功ステップ & 夢工学式事業経営(成功イメージからの事業開発)getyourimage.club/resize-10-february.html & The Dream Engineering Concept 出典:「起業」の成功ステップ & 夢工学式事業経営(成功イメージからの事業開発)getyourimage.club/resize-10-february.html & The Dream Engineering Concept 出典:「起業」の成功ステップ & 夢工学式事業経営(成功イメージからの事業開発)getyourimage.club/resize-10-february.html & The Dream Engineering Concept 出典:「起業」の成功ステップ & 夢工学式事業経営(成功イメージからの事業開発)getyourimage.club/resize-10-february.html & The Dream Engineering Concept 出典:「起業」の成功ステップ & 夢工学式事業経営(成功イメージからの事業開発)getyourimage.club/resize-10-february.html & The Dream Engineering Concept
出典:「起業」の成功ステップ & 夢工学式事業経営(成功イメージからの事業開発)
getyourimage.club/resize-10-february.html & The Dream Engineering Concept

 筆者は彼に強く助言した。「貴方が“経営のプロ”に成長する時までは、①起業してはならない。②如何に魅力的な起業への参加提案が友人、知人などから受けても受諾してはならない。③「虎の子の退職金、貯金、年金など」に一切手を付けてはならない」と。

 何故なら彼は、B列車を走らせ、成功させた事がない、新規事業プロジェクトを企画、開発、建設、運営、成功までの所謂「夢トータル成功」をやり遂げた事がないなど、まさに「経営のアマチャー」であるからだ。経営学者ドラッカーは、新しく事業を創業し、成功させた事がない社長、新規事業を成功させた事がない社長、既存会社の事業を運営するだけの社長は、いずれも「半人前の経営者(半分アマチャー)」であると主張している。

  出典:プロとアマ 
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craftsman-expert-ro.html

 「アマチャー」が起業すれば、100%失敗する。会社で新規事業を失敗しても、他の事業でカバーできる。しかし「虎の子の退職金、貯金、年金」を基に起業して失敗すると全財産を失い、多額の負債を負い、年金すら手元に残らない。まさに乞食になり、生活保護を受けながら、定年後から死ぬまでの約40年間(100歳生きたとして)を生き抜く、後悔と地獄の生活をせねばならない。

 筆者は「生涯現役社会の実現に向けたシンポジューム」で僅かな個人の「起業の成功事例」を基に、多くの会社人間やアマチャー経営者に「起業」を勧める事は、あまりにも無責任である。

●本稿の読者への質問
 ある人物が「経営のプロか? 経営のアマチャーか?」を見分ける方法がある。

 この峻別方法と峻別理由などをキチンと文章で説明する事、言い換えれば、「経営とは、何か?」、「経営者は、何をせねばならない人物か?」を論じる事を、本稿で展開するには、本原稿の紙面の10倍以上の紙面を要する。もしそれを書くとなると今から1年以上、この事だけで連載せねばならなくなる。それでは、いつまで経っても「エンタテイメントの本質」の「6 創造」から「7 別章」に進めない。そのため峻別方法等の記述はしない事にした。

 しかしそれでは本稿の読者は満足しないだろう。ついては、その峻別方法の1つを紹介する。この紹介方法として、本稿の読者に先ず「質問」する。正解は次号で紹介する。1か月間、考えて、その答を紙に書いておいて欲しい。もしその質問に正解した人物は、「経営のプロ」への長い階段の最初の一段を上ったことになる。是非頑張って欲しい。

 この質問とは、「新しい商品、製品、サービスを開発する事と新規事業を開発する事の違いは何か?を説明せよ」である。

 今月号で今回の相談者への筆者の回答を書き切れなかった。上記の回答と共に、その続きを次号で書くことにさせて欲しい。

つづく

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