今月のひとこと
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 クライシスマネジメント 

オンライン編集長 深谷 靖純 [プロフィール] :2月号

 この冬は世界的に暖冬だそうです。編集子の周辺でも、蕾にピンク色がついた桜の木があるなど春の気配がし始めました。早い春は歓迎ですが、オリンピック・パラリンピックが控えているので、気候のリズムが狂うということがないようにして欲しいと願います。どうなることでしょうか。

 適切なリスクマネジメントが行なわれていたとしても、リスクが顕在化してしまうプロジェクトというものはあります。プロジェクトチーム内のリスクについてはある程度コントロールできても、外部に起因するようなリスクに対しては何ともしがたいところがあるということでしょうか。リスクが顕在化すると危機(クライシス)となります。一般的には、危機発生を予防するのがリスクマネジメント、危機が発生した後の対応をクライシスマネジメントと言います。プロジェクトマネジメントにおいては、リスクマネジメントによって失敗をもたらす危機の発生を予防し、クライシスマネジメントによって顕在化した危機を抑え込んでプロジェクトを失敗から回避するように努めるということになるはずです。しかしながら、そのあたりがどうも曖昧です。文献によって巾がありますが、プロジェクトの大半(30%~90%)は失敗していると評価されています。プロジェクトの大半が危機に見舞われて失敗しているというのに、危機に見舞われた際のクライシスマネジメントが機能していないのでしょうか。
 例えば、システム開発プロジェクトにおける失敗原因として頻繁に出てくるのが「曖昧な要件」です。プロジェクトチームが組成されプロジェクトがスタートする時点で「要件が曖昧」だったとすると、プロジェクトスタート時には既にリスクが顕在化していることになります。スタート時からクライシスマネジメントが発動されていなければならないはずですが、発動できているプロジェクトはどの程度あるのでしょうか。
 一つの想像ですが、クライシスマネジメントの対象となる「顕在化した危機」には以下の様な性質があることから、プロジェクトマネジメントのスコープを超えているとされて発動させていなかったのかもしれません。
プロジェクトの内部以外の要因に拠るものもが含まれており、プロジェクト内だけでは対応できないことがある。
顕在化した危機の影響がプロジェクトの外部に及ぶことがあり、プロジェクト内だけでは対応できないことがある。

 従前から、「問題プロジェクトの火消し」といった表現でクライシスマネジメントが取り上げられることがありました。体系的なプロジェクトマネジメントとは一線を画したベテランプロマネの特殊技能といった扱いです。しかしながら、実際に危機に遭遇したプロジェクトにおいて適確な対応が取れたケースでは、特定の「火消し」の活躍があった場合もあるとは思いますが、「情報の集中化」「指揮系統の一本化」等の組織としての臨戦態勢を敷くことができていたのではないでしょうか。こうした組織としての経験を次世代に繋ぐという意味からもクライシスマネジメントの研究が進み、普及していくことを強く望みます。
以上

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