関西例会部会
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秋のスペシャル関西例会2019 レポート
(講演3)

PMAJ関西KP 西 毅 : 1月号

開催日時: 2019年11月30日(土) 16:00~17:15
開催場所: 竹中工務店 大阪本店 1階「いちょうホール」
テーマ: 「アジャイル開発への道案内」~経済競争力を得るための方法論~
講師: 小原 由紀夫 氏/富士通株式会社
参加者数: 40名 (スタッフ+講師9名含む)

はじめに
  「アジャイル開発への道案内」、「ITサービスのためのアジャイル」の2冊の本を共著で執筆された小原さんに、アジャイルの基礎となる考え方や手法をわかりやすく解説していただいた。

概要
アジャイル開発の誕生
   米国の著名な投資家が10年前にあらゆる産業がソフトウェアを中心とする企業に飲み込まれると予言し、GAFAや自動車産業など予言通りにソフトウェアを中核とした産業化が進んでいる。
その中、旧来からのウォータフォール型ソフト開発の限界が言われる中、有識者が集まり「個人と対話」「動くソフトウェア」「顧客との協調」「変化への対応」などの4つの価値と原則を共有しアジャイル宣言を発表した。

アジャイル開発の特徴
   アジャイル開発の基本理念は、システム全体を一括して開発するのではなく、時間、業務(機能)、ビジネス優先順位に小さく分割し積み上げて開発する。
開発の優先順位はビジネスでの重要度が高い機能から作成し、ドキュメント量は最小化して動くソフトウェアで顧客に確認を取りながら反復して開発する。反復を繰り返すが、開発の期間、コストは固定化し、要件・開発項目は可変にする。あいまいな要件を顧客からフィードバックを受けながら価値が最大になるように開発を進める。
品質に関しては狩野モデルで提唱された、当たり前品質から、創造性を働かせ魅力的品質を作りこむ、マーケットの満足を得る品質マネージメントが必要になっている。

XPとスクラム
   XPの特徴的な開発手法としてテスト駆動開発、常時結合ある。
 テスト駆動開発とは、要件を開発当初から確定することの困難さから、まずどうなってほしいかのテストコードを書いてそのテストコードに合格するソフトウェアを作成し、リファクタリング(内部の構造変更)を繰り返して無駄を排除していく。
常時結合は常に動作するソフトウェアを開発することで、夜間に自動結合、自動テストをすることで昨日開発した部分での不具合を確認する。
スクラムは日本の製品開発手法論文から開発工程の上位から下位までがチーム一丸となって目標を達成する姿がラグビーに似ていることからこの方法論をスクラムと名付け、その手法をシステム開発へ発展させたものである。
スクラム開発2、3週間後のゴールを決めて開発を進めゴールを達成したもの、未達成のものまたその間の振り返りを行い、チームとしてのスキルをアップしていく。

アジャイル開発の効果
   アジャイル開発は顧客にとって、常に動くソフトウェアを見ながら確認でき、チームとの距離も近く、短納期での納品となり顧客満足度が向上する。
またビジネス優先度の高いものから開発することにより重要度の高い機能からリリースされることで実質効果上の開発期間の短縮が図られる。
また現在では、小規模向けと考えられていたアジャイル開発を大規模開発へも適用範囲を広げるような手法が考え出されている。

アジャイル開発の事例
   プロ野球球団へのサービスをデザイナー、クラウド技術者、モバイルアプリ技術者、アジャイルの知識がある技術者でチームを作成し、スクラムの技法を使って開発した。
開発したソフトが好評で、今後は大リーグやその他のスポーツにまで広げるビジネスに成長している。
次の事例は区役所窓口のサービスを向上し満足度を2倍、不満を3分の1に減らす目標で開発を開始した。2週間のイテレーションを25回繰り返す1年規模の開発となり、利用者との共創開発となった事例を紹介された。
その他請負ソフトウェア開発会社へのアジャイル開発導入事例やウォータフォール開発とアジャイル開発をハイブリッドに適用した米国の公共大規模開発事例が紹介された。
最後の事例としてソフト開発ではなく、家電メーカが35年間継続している新製品の開発に社長筆頭に全社スクラム体制で取り組んでいる事例が紹介された。

感想
   アジャイル開発を名前だけしか知らなかったので、どの内容も興味深く聞かせていただいた。ビジネス価値を優先的に開発するには感銘を受けた。2回の演目を途中にはさみ、理解度を確認しながら講演を進めることも勉強になった。講演後の質疑でも活発に意見交換が行われ特別例会の最後にふさわしい講演となった。(文責:西)

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