関西例会部会
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秋のスペシャル関西例会2019 レポート
(講演2)

PMAJ関西KP 樋口 高弘 : 1月号

開催日時: 2019年11月30日(土) 14:30~15:45
開催場所: 竹中工務店 大阪本店 1階「いちょうホール」
テーマ: もっと身近にP2Mを使ってみよう
「中小規模の全員参加型業務改革プログラム」と「学生開催イベントの新しい進め方」
講師: 藤澤 正則 氏/デリア食品株式会社
参加者数: 40名 (スタッフ+講師9名含む)
■はじめに
 久しぶりの「いちょうホール」、いつ拝見しても変わらぬ立派なホールである。講師には、2015年6月にP2M実践事例紹介をして頂いており、4年ぶりのご登壇である。あれから進化した内容を披露して頂いた。
 ご自身がやりたいことを模索中にP2Mに出会い、PMSを取得したが、その実力がついたかどうかわからず、まずはやってみよう!精神で社内に導入された。筆者もPMSであるが、業務への導入は一部に過ぎず、過去の関西例会アンケート調査に至っては、「P2M実践事例が聴きたい」が多いのも事実であり、その期待度は大きく、ワクワク感の空気を感じながらのスタートであった。
 
■講演概要
 講師が取り組んだP2M実践事例の紹介である。P2Mは難しいものではなく、もっと身近に活用できるものとして、「新しいイノベーションを実現するための理論的モデル」→「P2Mの特徴」→「P2Mの見方、考え方、進め方について」の流れで解説された。
 次に、自社で取り組んだ中小規模の全員参加型業務改革プログラムである最初の10年間の取り組みを「実践編」と、その後の「支援編」の紹介、そして、イベントマネジメントSIG(小規模イベント分科会)での実践事例として、学生開催イベントの新しい進め方を「応用編」として紹介された。
 最後にAPC(Advanced PMR Club)発行のP2M実践事例集のエッセンス版(受講者へ配布)の紹介、まとめとして、「もっと身近にP2M」を実践していく上でのキーワードと、実践の核となる人財について、を結びとされた。

<質疑応答場面> <グラレコ>関西KP 喜野さん提供
<質疑応答場面> <グラレコ>関西KP 喜野さん提供
 
■もっと身近にP2M「P2Mでできること」
 P2Mガイドブックでは、大企業の業務改革やプラントなどの重厚長大なプロジェクトでの適用が中心となっている。身近な業務で活用してみると、よい見方・考え方・進め方になっていることがわかるが、P2Mを知らない人にはハードルが高そうに感じる。その課題認識のもと、講師の実践経験を踏まえ、わかりやすいP2M適用方法の解説、それを実践する場の構築の必要性をトリガーとして、今回の取り組みを紹介するに至った。
 
■P2Mのおさらいと活用の仕方
 P2Mとは「新しい物事(イノベーション)を実現するための理論的モデル」であり、その特徴として、「組織のミッション・ビジョンから方向性、ありのままの姿とあるべき姿から、実現するためのロードマップ(シナリオ)を構築する」→ミッションプロファイリング、「企画構築力・実行力・運用力をつなぐことにより、分業化から統合化を進める」→3Sモデル(スキームモデル、システムモデル、サービスモデル)がある。
 次に、P2Mの見方・考え方・進め方について、「新しい物事をやり遂げるプロジェクトマネジメント」「新しい物事を自ら考え、創り、実行し、運用して価値を提供するプログラムマネジメント」「通常業務(定常業務)の一般的なマネジメント」の3点が挙げられる。
 
■事例紹介「実践編」と「支援編」
 中小規模の全員参加型の業務改革プログラムについての事例紹介である。これは、自社の機能型組織、定常業務が中心の運用モデルに、企画構想モデルと実行モデルを組み入れたプログラムマネジメントで業務改革を推進したものである。グループ10社が集まり、独立した各社を事業ドメインに統合するというゼロベースからのスタートであった。
 
 推進にあたっては、サービスモデル(運用モデル)を業界のベースとして、企画構想モデル(スキームモデル)と実行モデル(システムモデル)へ落とし込み展開していった。その推進には「入口」が大事であることを力説された。具体的には、経営者の想いの理解からチーム編成に至るプロセスにおいて、「一人ひとりが認められ、求められる」「何のため、誰のため」「明日も来たくなる」ような、一体感のある場づくりである。
 3年間でしくみ作りと見える化に成功し、経営の数値化も把握できるようになった。プロジェクトの評価としては、各社間の垣根がなくなり、良い関係性が構築できたことである。
 
 この10年、P2Mは色々な局面で使えることを体感した。その後は、サポート型で参画している。そこでミッションプロファイリングで重要なことは、時代の変化に追随するための前提条件の視点を変えることである。価値基準、環境変化、枠組みは「時間とともに変わらない」から「時間とともに変わる」、そして、改革プロジェクトは「限られた人や組織で進める」から「全員参加型で進める」ことである。10年先の仮設に対して、3~5年先の姿を逆算して物事を考え、小規模プロジェクトで小さなサイクルを回していった。プロジェクトは途中で中止してよく、振返りで次に生かせばよい。その中での体験を通して、自分達が評価され、やって良かったと感じ、また一緒にやりたい気持ちが沸いてくる、その好循環が人と組織を成長させることになる。
 
■事例紹介「応用編」(資料作成と実践)
 ここからは、PMAJのイベントマネジメントSIG(小規模イベント分科会)で、講師がP2Mを実践されてきた知見を活かして、成果を上げた事例紹介である。分科会テーマ「はじめての学生開催イベントの新しい進め方」について、先ずは前述の「入口」として、自分達の想いを実現するための見方・考え方・進め方の提言を行い、一過性で終わるイベントでも次に活かせる仕組みづくりに取り掛かった。
 
 第一に「学生開催イベントとは何か?」の定義であるが、筆者は前提・制約条件と読み替えてみたが、その中には、マニュアル通りではなく「目標に向かって臨機応変に状況に対応しながら造り上げるものである」というアジャイル的発想が入っていた。第二に「イベントを成功に導くポイント」、第三に「イベント開催までのロードマップ」として資料化されたものが紹介されていた。ここでは、スキームをしっかり作って共感を得ること、そして、来年はこうしたい!と振り返りができる一連のロードマップであった。更に、イベント主催者のP2M適用として「入口→3Sモデル(段取り→準備→運営)」のプロセス、そして「全員参加型プログラムフレームワーク」では個の力と組織の力との関係性を整理されたわかり易い図が参考になる。
 
 次に分科会がお手伝いした、想いを形にするプロジェクトマネジメント「高校生ダンス部、初めての自主公演」の事例である。学生側は何も考えずに場所取りからやってしまって、放置状態からのスタートであった。3回の打合せ機会を得て、レクチャーすることになった。
 1回目の打合せでは、顧問・部長へのアドバイス(課題提起、P2M流のステップ説明)を行って納得を得て、次回に向けて、部員に「なぜやりたいのか、誰に来て貰いたいのか」を再確認することになった。
 2回目では、部員の想いをカードにして貼りだし、それぞれの想いを共有し分析できる様にした。
 3回目では、部員の想いを再確認し、現状確認と今後のスケジュールを整理し、実行の段取りを確認した。そこで見えてきたのが、役割が明確になっていないこと、当日までに使える時間が少ないことがわかり、その時点で手を打つことができた。
 
 さて、講演当日を迎えたが、満員御礼、成功裡に終わることができた。P2Mは結構使えることがわかった。プロジェクトの振り返りも行われ、良い点として、部員の自覚が芽生え、イメージが沸き、段取りの大切さを学んだことであった。次の世代がまた同じイベントをやってみたいと思うかどうかであり、今回の推進を活かすことが現実的には難しいのではと感じており、2回目のスパイラルが課題である。
 
■プログラムマネジメント実践事例集(エッセンス版)
 次に紹介されたプログラムマネジメントの実践事例集(エッセンス版)であるが、これはPMRで構成されているAPC(Advanced PMR Club)のメンバーが編集されたもので、身近な事例を採用し、PMRの認知度向上とプログラムマネジメントの普及促進を図ることを目的としたものである。講師もそのメンバーの一人であり、今回の事例紹介も含まれている。今回の例会参加者に、その冊子が配られた。
 
■まとめ
 「もっと身近にP2M」と最初に戻るが、前提や要件が変化する中で、「中小規模の全員参加型で締め切りのある新しい物事を実現したい」ことを成し遂げるために、3つのキーワードで運用している。
 一つ目は、人を活かすことであり、「よく会ってよく話し合う・創りこみにみんなが関わる・自ら考え行動する」ができる場を構築して運用することである。
 二つ目は、チームを活かすことであり、「いつも、関わる一人ひとりに感謝し、評価し、向き合うことを意識する。
 三つ目は。組織を活かすことであり、「何のため、誰のため」から入り、「段取り、準備、運用と振り返りをつないで、進め、「やってみたい・やってみた・やってよかった・またやりたい」のスパイラルアップを具現化することである。
 また、P2Mを活用していくには、核となる人財が必要である。それがPMRの役割であり、実践力を伴ったプログラムマネジメントが必要である。そして、4つの視点(*1)の繋ぐ場をつくり、3つのマメジメント(プログラム、プロジェクト、一般的なマネジメント)で組み合わせて、流れを作ることである。
*1 Ⅰ:自ら考え行動する Ⅱ:こうするとよい、こうしたい
  Ⅲ:これを行えば、うまくいくいつものこと Ⅳ:場当たり的、思い付き、新しいこと
 
■おわりに(感想)
 講師が長年にわたって実践されてきたことを体系的に解説して頂いたことで、筆者のみならず参加の方々も腹落ちしたのではと確信する。PMSの方々の中には、今一度P2Mを再び学ぶ機会となり、PMSで終わることなく、実践力を高めてPMRへのチャレンジ精神も芽生えさせてくれる時間でもあったのではないだろうか。また、P2Mを知るきっかけになった人は、PMSにチャレンジしたいと思って頂いたであろうか、大いに期待するところである。
 Q&Aも盛況のうちに終わり、大成功であった。ありがとうございました。

以上

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