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「知識を知恵に!」
(パーソナルPMの貢献できる領域)

プラネット株式会社 中 憲治 [プロフィール] :1月号

先日、偶然にも違う場面で同じような言葉に出会った。それは“知識と知恵”に関する言葉である。一つは、ある会社でプロジェクトマネジメントに携わっている方との懇談での場面において。もう一つは、12月4日の朝日新聞「天声人語」。
12月3日の懇談では、その会社で行われている「プロジェクト管理実現」プロジェクトの話を伺った。そのなかで「プロジェクト管理には何ができればよいか」の要素の中に「知識を知恵に変える」との項目があった。担当者の方の説明では、「知識を知恵に変える」とは、「PMBOK®」をいくら学んでも、なかなか実務には活かせない。それを実務に生かすためには「知恵に転換する」ことが必須である。とのことだった。
翌日の12月4日の朝日新聞朝刊のトップ記事は、OECDが主催する世界の15歳を対象とした「学習到達速度調査(PISA) *1」において、2018年の日本の成績の下落を報じていた。
*1 「PISA」はOECDが3年ごとに実施する世界79か国・地域の15歳を対象に実施するテストであり、「読解力」「数学的リテラシー」「科学的リテラシー」の3つの分野の能力を図るもの)
「読解力」とは多様な文章を読み解く力や根拠を示して考えを纏める力を試すもので、思考力や表現力を必要とする能力であるが、この「読解力」の平均点が落ち、順位が前回の8位から15位に下がったとのことである。
「天声人語」では、この記事に関連して、筆者が数年前にPISAの担当者に言われた言葉を載せている。そのまま紹介すると「細かな知識はネットで得られる。知識よりも、知恵を出して事態を突破する力が求められています」。(2019.12.4朝日新聞朝刊「天声人語」より)
この記事を目にした時に前日の場面を思い出し、「知恵」とは何だろう、漠然とはわかっているのだが?定義するとどうなるのか?と、定義を確認する必要性を感じた。
広辞苑によれば、「知恵:物事の理を悟り、適切に処理する能力」とある。「知恵」は古代ギリシャ哲学、道教、旧約聖書、仏教、そして心理学の分野でそれぞれの定義がある。
一般的には、「物事の道理を判断し処理していく心の動き。物事の道筋を立て、計画し、正しく処理していく能力」(デジタル大辞泉)と定義できそうである。
PMBOK®」に熟知していても、実際のプロジェクトにおいては、テキストの例題通りの状況に遭遇することはまずない。テキストで得た知識がそのまま使えることは少なく、自分の遭遇した状況にあった形で適用することが必要になる。この「適用する力」が「知恵」といえる。「PMBOK®」第6版にある「テーラリング」がこの意味であるともいえる。
そうすると、「テーラリング」力を高めるのに必須な事項が2つあると考えられる。
1つは「思考力」、2つ目は「経験」である。
「思考力」とは文字通り「考える力」であり、「物事の道理を判断し処理していく心の動き」である。この考える力により、学んだ「知識」を自らがおかれた状況に適用することが可能になる。そして「経験」は「思考力」を働かすときに役立つこととなる。
そして、「経験」 & 「思考力」ともにパーソナルPMを積み上げていくことにより強化されるといえるのではないか。パーソナルPMはこのような時でも有効であるといえる。
先に紹介したPISA担当者の言葉は、天声人語の筆者が行った次のような質問に対する回答だったそうである。
「大学時代に優秀であるといわれた人が、ビジネス社会で評価されない理由は何でしょうか?」それの回答を再掲します。
「細かな知識はネットで得られる。知識よりも、知恵を出して事態を突破する力が求められています」。
以上

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