投稿コーナー
先号   次号

「パーソナルプロジェクト・教訓を得て次のフェーズへ」

プラネット株式会社 中 憲治 [プロフィール] :10月号

1. はじめに
8月に70歳の誕生日を迎え、シニアプロジェクトの完了期限となった。
10年前の還暦時に、残りの人生の充実と夢の実現を果たすことを目的にパーソナルプロジェクトをスタートした。60歳から5年間で「アラ還プロジェクト」、65歳から70歳までを期間とした「シニアプロジェクト」、そのシニアプロジェクトがいくつかのスコープを完了することなく納期を迎えてしまった。
わたしのパーソナルプロジェクトの良いところは、次のフェーズに引き継ぐなり、アップグレードすることができるところにある。
しかし、プロジェクトを終えて、すぐ次のプロジェクトをスタートするのは、PMとしてはあるまじきこと、まずシニアプロジェクトの教訓をまとめることとした。
2. シニアプロジェクトの教訓
教訓としては2つある ①スコープ決めの事前学習、②資源の健康が第一
① スコープ決めの事前学習
これには、成功事例と失敗事例がある。
1 ) 成功から学んだ教訓
「ユーラシア大陸の西端を訪れる」タスクのためポルトガルを訪れた時、事前に観光ガイドだけでなく、ポルトガルに関する書籍を幾つか読んだ。その時の一つが司馬遼太郎の「街道を行く・南蛮のみちⅡ」である。スペインとポルトガルを舞台としているが、フランシスコ・ザヴィエルを一人の主人公として、インドのゴアまでの東方布教の航海に出るまでの経緯を描いている。フランシスコ・ザヴィエルは、ゴアの後日本への布教を行い、日本に近代(西欧)文明をもたらせたことはよく知られている。この本を通じて、ザヴィエルの航海を可能にしたポルトガルの大航海プロジェクト、その礎を築いた「エンリケ航海王子」、ザヴィエルがインドまでの航海に使った700トンの「サンチャゴ号」が出港したリスボンのテージョ川河口港など多くの詳しい知識を得ることができた。この事前学習により、実際に現場を訪れた時に一層感慨が増した。また、疑問点を現地のガイドさんに尋ねることにより、より深い学びを得ることができた。
リスボン:テージョ川河畔「世界発見のモニュメント」
リスボン:テージョ川河畔「世界発見のモニュメント」
大航海時代に世界発見に貢献した30数名が刻まれているが、下から2番目に
フランシスコ・ザヴィエルの像がある。
2 ) 失敗から学んだ教訓
一方、失敗事例もある。中央構造線博物館を訪れた時のことである。もともとは、JR東海が推進している「リニア中央新幹線」の南アルプストンネル工事現場を訪れる予定であったが、断念せざるを得ず、行き当たりばったりで付近にある「中央博物館」訪ね、学芸員の方の話を伺う機会があった。中央構造線、日本列島の始まり、プレートテクトニクス等々、地質構造学の話を聞くにつれ、前もってこれらに関することを学んでいればより多くの知識が得られたのにと反省した。
プロジェクトのスコープ設定、あるいは遂行の前に事前に学習しておくことでプロジェクトがより有意義になることを学んだ。
3. After「シニアプロジェクト」
プロセスとしては、教訓を生かして次のプロジェクトの立ち上げに移行することになるが、70歳からの5年間で行うプロジェクトのスコープ決定を行った。
名前はまだ付けていないが、スコープとしては次のタスクを含めることとした。
① プレートテクトニクスの聖地を訪ねる
1 ) 大陸の割れ目:アフリカ大地溝帯を訪ねる
現在の地球上で、大陸の分裂を起こしているところがある、それがアフリカ大地溝帯と呼ばれる場所である。
2 ) プレートのできるところ海嶺:アイスランドを訪ねる
海洋プレートが生まれるところが海嶺と呼ばれる。海嶺は通常海の底にあるが、地球上で唯一海嶺が地上に現れているのがアイスランドである。海洋プレートの誕生活動を見ることができる聖地である。
② キリマンジャロに登る
富士登山は未達に終わったが、これに替えてキリマンジャロ登山を目指す。理由は2つ
1 ) キリマンジャロは登山のアプローチが長く、高山病にかかりにくい。
2 ) 嘗て自動車メーカー勤務時代、アフリカ市場の営業担当としてケニア、タンザニアを訪問した時、ケニアからタンザニアへの機上からキリマンジャロの頂上を眺めることができた。アーネスト・ヘミングウェーの「キリマンジャロの雪」を読んでいたこともあり、いつかこの山に登りたいと夢を描いていた。この夢をかなえたい。
夢は叶えることができる、しかし、そのためには、夢を具体的な目標に置き換え、目標達成のための計画を立て、遂行することが重要である。人は老いていく、しかし、生命が尽きるまで有意義に生きるためには、夢・目標を持ち続けていくことが大切だそうである。
夢物語に終わらないようにパーソナルプロジェクトを続けていきたい。

ページトップに戻る