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「サハラ砂漠西端のビッグプロジェクト」

プラネット株式会社 中 憲治 [プロフィール] :7月号

私のパーソナルプロジェクト「シニアプロジェクト」のテーマは、「端を極める」である。
ユーラシア大陸の西端(ポルトガルのロカ岬)に続き、アフリカ大陸の西端を次の目標とした。
グーグルマップで見ると、パリダカ(Paris-Dakar Rally)のゴール地点であるセネガルのダカールがそれにあたることが分かった。
しかし、ダカールを訪れるツアーがなかなか見つからず、スコープを少し緩め、サハラ砂漠の西端を目標地点とし、ここを訪れるモロッコへのツアーを探した。
モロッコは、さすがに観光国であり、サハラ砂漠に昇る朝日を観るツアーも簡単に見つかった。
パーソナルプロジェクトも計画立案に苦労するのが醍醐味ではあるが、ここは大幅に妥協し、手軽さを選択しこれに参加した。

幻想の国モロッコを旅する

モロッコは農業大国である。3つのアトラス山脈を挟んで西側は大西洋に面し、気候も温暖で雨にも恵まれ、豊かな農耕地帯が続いている。一方、アトラス山脈の東側はサハラ砂漠の西の端に位置し、土漠#1(ドバク)に続いて砂漠が広がっている。
#1 :砂漠とは雨量が極端に少なく、砂や岩石の多い土地のことをさすが、土漠とは土質が砂ではなく、土や岩石の土地を特にこう呼ぶことがある。石砂漠とか岩砂漠とも呼ばれる。
アトラス山脈を越え、サハラ砂漠へと続く道は「カスバ街道」と呼ばれる。
モロッコはもともと「ベルベル人」が住んでいたが12世紀になって「ベドウィン族」に侵略され、アトラス山脈を越えてサハラ砂漠の地に定住することになったそうで、「カスバ街道」沿いは、ベルベル人やその文化が現存している。
カスバ街道沿いのサハラ砂漠の入り口にあたる「ワルザザード」の街を訪れた時、思いもかけないものに出会った。それが、表題のビッグプロジェクトである。「カスバ街道」をバスで走っていると、遠方にピカピカ光る塔を見つけた。
現地ガイドの説明では「ヌール(Noor)プロジェクト」のモニュメントとのこと、

ワルザザード近隣「Noorプロジェクトのモニュメント」 ワルザザード近隣「Noorプロジェクトのモニュメント」
ワルザザード近隣「Noorプロジェクトのモニュメント」
あとで調べてみると次のようなものだった。
「Noorプロジェクト」はモロッコが推進する世界最大の太陽光発電プロジェクトで、現在5%程度(残りはEU諸国からの輸入)の電力自給率を、2020年までに2000MWの太陽光発電所設置により42%まで高めようという壮大な計画であり、ワルザザード近郊の「Noor1~3号」(広さ450ha)で500MWの電力自給が達成されている。モロッコ政府の計画は、将来的に電力自給率100%達成にとどまらず、EUにも輸出を想定しているそうである。
サハラ砂漠は、年間3,000時間の日照時間があり、モロッコのみならず、マグレブと呼ばれる北アフリカの各国(アルジェリア、チュニジア、エジプト)で同様なプロジェクトが推進されているが、モロッコのこのプロジェクトへ、他の砂漠地帯を持つ、チリや中国からも見学者が絶えないことで、砂漠地帯を一大再生エネルギー地帯への転換も予見させるプロジェクトであると思われる。このプロジェクトのコア技術を担っているのは、日本の住友電工である。詳しくは住友電工のWebを参照願いたい。

住友電工Webより
 住友電工Webより

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