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「日本再生“アベノミクス”を成功させるために何が必要か」 (70)
高齢化社会の地域コミュニティを考えよう (46)

東京P2M研究会 渡辺 貢成: 1月号

Z. 皆さん新年おめでとう!今年はオリンピックの年でもある。何かと忙しい。
これまで親切に問題点を指摘してもらったが、今月号は日本の何が悪いかをずばりと大胆に指摘して欲しい。その指摘に問題があれば私から指摘する方式をとる。その方法はどうかな。
I. おっしゃる通りです。その方式に切り替えましょう。私が最も気にしている問題点があります。それは【契約】という概念です。欧米諸国における【契約】という概念と日本的タテ社会における契約の相違です。この問題点を指摘します。
( 1 ) 【契約】の起源について(このエッセイではヨハネ福音書を採用した)
1 ) 契約に関する欧米流の仕来り:契約の概念は【はじめに言葉ありけり】
『ヨハネによる福音書』:「はじめに言(言葉)ありけり、言は神とともにあり、言は神なりき。この言は大切に神とともに在り、万の物これによって成り、成りたる物に一つとして之によらで成りたるはなし、之に生命あり、この生命は人の光なり、光は暗黒に照る。而して暗黒は之を悟らざりき」。欧米の契約の基本は聖書より出ている。
2 ) ユダヤ人とはユダヤの神エホバと契約したユダヤ人をいう。ユダヤの神エホバは大変人間的で嫉妬深い。ユダヤが栄えたとき、多くのユダヤの民が征服した異邦人の美女を娶り、神をないがしろにした。このためユダヤの民はエジプトに追放された。神はこころを改めた民を預言者モーゼに引き渡し、彼らに十戒をさずけ祖国へ戻した。
筆者は「ユダヤの神は義理堅いと感じている。多くの人々はわかっていないが、現在の世界の富の半分以上をユダヤが抑えており、グローバリゼーションが進むとエホバは更に大きな富を彼の契約者に授け、大神様になるだろう」。(筆者の想定)
3 ) 欧米の契約の概念は神との約束で成り立っている。そのため厳密であり、約束を破れない仕組みとなっている。契約者双方は立場が平等であることも厳守している。(この部分が日本の契約思想と異なっている)

( 2 ) 欧米のビジネス社会ではジョブ志向型効率優先社会である。
1 ) 企業と従業員との契約
欧米社会は基本的に契約社会である。それはビジネスで混乱を起こさないように、神 の前であらかじめ決められた事項を忠実に書きとめ、誠実に守る習慣を確立している。
ジョブ志向型優先社会では、これに関係する人々は自己のテリートリーで成果を上げることで社会に貢献している。そのため、その職に就く時に達成目標を提示し、目的達成時には約束した報酬を獲得できる契約書を交わしている。
2 ) 企業間の契約の特徴
欧米の神は現在、キリスト教が主流である。そして契約は神の御前での誓いであり、A(発注者)、B(受注者)は神の前に平等であることが約束されている。
標準的契約様式:欧米の契約は両社間でのトラブルが起きないように重要事項は特に詳細に記載されている。社会的に種々の契約方式があり、方式に従い作成するとトラブルが起こらない工夫がなされている。商取引にはそれぞれの手法で契約案件をまとめていては、契約書が膨大なものになるため、問題点を整理して、契約書の形式を統一することができる。欧米には○○式契約様式、XX式契約様式が存在する。
3 ) 欧州社会の合理性:欧州は島国の日本と異なり、複数の国がそれぞれ競争し、自国或いは自社の発展に努力している。プラント等の契約書は膨大なものになる。そこでビジネス社会では①守るべき法律が指定される。②使われる国際スタンダードが指定される。そのことで契約書は簡略化できる。③本契約の独自性を懇切に記載する④例外事項を記載する形となっている。
4 ) 筆者が実施したシェル石油 ドミニカ共和国に設置した石油精製装置1式
プロジェクトの契約へのInvitation to Bidの事例(入札への招待)
契約書は A.Financial Proposal の提出 見積のための基礎資料と見積書
  B.Technical Proposalの提出 施設建設のための要求事項の確認と施設構築に必要な諸事項の記載
1. 建設に関連する法令、公共的なスタンダード類、
2. シェル社内スタンダード、DEP(Design、Engineering、Practice)
3. Project Specifications(プロジェクト全体の詳細仕様書)
書類を積み重ねると2メータ程度になる
製油所一式を組み立てる必要な詳細な内容書類及びブランクフォーム、素人の我々が読んで設計して、試運転するまで行程すべてが含まれている素晴らしい内容だった。研究所の機材一式等
4. 受注後シェルオランダ本社への訪問
基本設計着工時の打ち合わせ
基本設計終了時での打ち合わせ
エンジニアリングダイアグラム作成時での打ち合わせ
Piping Layout 作成時
都合4回の基本的事項打ち合わせと、その後のテレグラムでの意見交換、作成図面の承認、現場工事図による現場工事実施許可の取得
2年6カ月の建設期間、試運転補助を実施し、試運転は1月1日からスタートし、24時間連続運転を30日間停止なく全装置の運転を継続し、用意した石油貯蔵タンクが満杯となり、運転を止めた。試運転から終了までトラブルのない運転をしたことにシェルは驚き、この種の容量の製油所設備としては世界一であると賞賛された。
筆者の感想は逆で、提供された資料、指示された内容が完璧であったことに、私たちは助けられた。シェルの提供したProject Specification の完璧さに敬意を表す。また、欧米企業の契約に関する取り組みが正しく機能しているからと感じた。
筆者は日本人の契約に対する真剣さの足りなさに危惧を感じている。

( 3 ) 日本企業はタテ社会と呼ばれている。タテ社会の問題点を提起する
1 ) 企業と個人の契約
日常業務においては報酬契約は交わさない。終身雇用制で、年功序列的昇給にわずかの業績報酬が加算される仕組みである。
業務はジョブ型の部署でもジョブの成果で評価されず、年齢に比例した報酬となっている。努力をする人材、並みの業務をする人材も30代は社員均一である。
企業の評価項目が成功報酬になっていない。規律を重視する評価基準はあるが、できるだけ大きな評価をつけない形をとっている。
結果として、多くの社員はでしゃばって失敗しないことを願っている。
40代以上は評価基準があるが、業種によって大きく異なっている。
最終的には上司が日頃の業績で採点するが、その基準は不明である。
結果として上司受けの良い人材の昇格がはやい。
実力者は評価者にとって困難な競争相手でもある。しかし、日本的社会では欧米流に自己を主張すると小集団から毛嫌いされる。評価者は安心して協調性に難ありという評価を行うことができる。(天才は殺される)本年1月出版
(手法:タテ社会で重要なのは小集団での評価をうまく使うことである)。

2 ) 企業間契約での課題
契約は取り交わすが発注者は甲、受注者は乙という立場で、上下関係である。そのため常に協力を迫られる。
事例 1: 日本では入札で勝利を挙げた業者にたいし、入札勝利者に更なる値下げを要求する企業がある。わが国ではそれを罰する法律がないように思う。AとBが対等であればそのようなことはあり得ない。
日本的縦社会の弊害がある。値下げされたB社は赤字での受注はできないため、部品の品質を落とす等の方法をおこなう。理由は大型プラントでは連続運転が自社製品のコスト低減に貢献するが、小さな部品の故障でプラントが運転停止になると、メンテナンス費用がかさみ、生産コスト高くなり、収益が減少する。結局安物買いの銭失いになる。日本人は目先の評価を大切にしているようだ。
残念ながら日本には絶対的な神様がいない。八百万の神が存在するために契約があいまいになっているのかもしれない。。
海外プロジェクトでの入札的課題
大きな事例1:ボスポラス海峡海底トンネル案件
本海峡には橋とフェリーが交通手段として使われていた。経済の成長で交通渋滞が重大な課題となった。この入札に日本企業が参画し、長方形のコンクリート箱を海底に落とし、これをつなげながら海底に沈める方式を提案し、その実験に成功し、契約に漕ぎつけた。日本の業者はこのテスト費用は、本工事全体の契約に含まれるものと考え総額を提示した。しかし、先方は「テスト実験は受注を成功させるための費用で、建設費用には含めない」と判断しており、日本的発想は拒否された。日本人は常に日本国ではXXだという日本人向けの発想を掲げて、海外企業と戦っている。そして敗れている。
このプロジェクトは某国民全員から評価され、某国の誇りともなったが、日本企業が赤字を出し、経済的には失敗プロジェクトであったことを某国人は知らない。

ゼネコンの海外進出事例:ゼネコンは日本的縦型社会の中で育ったため、海外では日本的発想で仕事を進めてきた。過去の大きな事例では赤字プロジェクトが多いときいている。それは多くの外国人は日本人ほど親切ではない。相手の弱点を捉え、自社に有利さをもたらすと、彼は出世の対象としたクールな発想をする。
ゼネコンが海外プロジェクトで成功した事例をきいてみると、日本の製造業者が海外工場を建設した場合の輸出案件だけだという。

ITプロジェクト事例
事例1.ITプロジェクトの事例:【タテマエIT経営ホンネアナログ経営】
ITプロジェクトでは、まず経営ビジョンを発注者は提供することがIPA(情報処理推進機構)から義務付けられている。ところがビジョンが出たためしがない。経営者がITに詳しくないので、経営ビジョンを自社のIT技術者に任せている。
契約を交わして、プロジェクト業務を進めていくと当初契約した方式ではうまくいかないことがわかってくる。そこで経営に必要なITを見定めると当初の契約の2倍になることがわかった。当初の契約量が2とすると変更契約では4になる。発注者は欲張って4の内容を要求する。そのわけはITプロジェクトではモノを買うわけでもないから改定はタダ同然だと勘違いしている。昨今は人件費がモノの購入より高いことをわかっていないから、「簡単に訂正してよ」と契約価格を上げてくれない。受注者はそれでは赤字になるため、改定量を減らして3という量まで落とし提案をする。3でも赤字プロジェクトとなるが、利益0まで減らす限度で妥協する方式である。
このIT系プロジェクト契約方式は2:4:3の方式と呼ばれている。このようなことは遅れた国のすることである。このような習慣を放置している日本国は決して尊敬されないし、進歩することが阻まれている。
しかしここでの最大の問題は経営者がIT経営のビジョンを持っていないことだ。さらに問題は、多くの日本企業の意思決定はいまだに稟議で行っており、アナログ思考である。これでは未来志向に繋がらない。AI専門家が検討しても未来を築けるネタを探すことができない。

付属的事項:外国人の発想
事例1:これは契約ではないが、日本の電力会社を訪問した韓国電力の技師がいろいろな質問をし、多くの資料をもらって帰国した。次の年に韓国電力の別の技師が来日し、資料を要請した。対応した日本人技師はその資料は既に韓国電力に提供したものだったので、彼から資料をもらうように断った。それに対する2番目の技師の発言は、貴社が提供した資料は彼の所有するものであって、私の資料ではない。貴社が彼に無料で与えたのであれば、私にも提供される権限がある。不平等は許せないと主張した。
事例2:来日したインドネシアの3人の留学生を担当教授が工場見学に同行した。
2人の留学生は先行して目的地に到着していた。1名の留学生は教授と同行した。この時教授は目的地までの切符を2枚購入して付き添いの留学生に手渡した。工場見学の帰りに、行きの切符を自前で買った2人の留学生は、その交通費を教授に要求した。それは平等の権利を正々堂々と請求してきた。
事例3:日韓関係で新任の総理大臣が韓国を訪問した際、某韓国大統領が戦前からの韓国に対する日本の植民地政策を詰問した。某総理はその件はもう解決済みだと断った。しかし、日本の総理大臣として韓国民に詫びを入れてもらえると、日韓関係が改善される。ただ、頭を下げるだけでいいから実行してくれと頼まれた。そこで某総理はその通りに実行した。野党の党首が総理になった瞬間を上手く利用され、日本の総理が日本の非を認めた。それに対する見返りを出すべきだと発表された。
日本人は国内では簡単に誤るくせがついている。誤ればすぐ許されると勘違いしている。しかし、世界では非を認めたら、議論にかてないから、決して非を認めないことを、子供のときから学んでいる。一つの非を認めたことで、毎回同じ手で日本は金をまきあげられている。韓国はベトナム戦争でベトナム人に対する暴行行為がひどく、ベトナム人から韓国は徹底して非難されている。
韓国の暴行行為はひどいのに、情けをかける日本人は馬鹿にされる。韓国は世界中にその嘘の事実を宣伝しているのに、これに対し日本は抗議すらできない状況である。

3 ) 契約という課題の研究
ビジネスにおいて最も大切なのは契約である。これまで書いてきたことは、平均的日本人の姿である。これをよんだ人は日本人という人種は「賢いのか、お人よしなのか、馬鹿なのか」よくわからなくなる。不思議な国民である。契約に対し利口になる努力が必要だということを追加したい。

4 ) 次回のテーマ
契約の項で書き上げた中で欧米と大きく違う課題があることを読者も理解されたと思う。日本の業務遂行組織は未だにタテ社会人脈優先の組織である。この課題は何か研究することになる。しかし、地域開発プロジェクトを実践してみるとこの課題は重要であるが簡単に結論を出せない。
そこで次回は国債活用の日本の在り方は正しいかを検討してみたい。

Z. 今回のテーマは面白かった。次回も期待している。
読者の皆様 よいお年を迎えてください。

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