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「エンタテイメント論」(142)

川勝 良昭 Yoshiaki Kawakatsu [プロフィール] :1月号

エンタテイメント論


第 2 部 エンタテイメント論の本質

6 創造
●筆者への「個人的相談」
B-1 中小企業に勤務又はそれを経営する人物からの個人的相談

 自分は中小企業に勤める一般社員(新入・新人社員でなく、管理者でない)である。上司から言われた事以上の事をやっていると自負している。しかし最近、日本の多くの中小企業は後継者不在などで次々の事業を閉鎖している。自分の会社は「今のまま」では「近い将来」「ヤバイ」と「深刻に感じて」いる。今、何を考え、如何に行動すべきか? 教えて欲しい。

出典:専門相談
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●日本企業の将来への危機感
 日本の経済界、産業界、実業界の大企業や中小企業の企業人は、GAFA(Google、Amazon、 Facebook、Apple<Microsoft?、Netflix?>)、BATH(Baidu、Alibaba、Tencent、Huawei)などのIT巨大企業の躍進とその発展に驚嘆し、将来への危機感を募らせている。

 その結果、最先端デジタル技術(5G、6G、IOT、AIロボットなど)の導入に躍起になり、特にAI技術者の取り合いをしている。一方その分野の技術者育成にも取り組んでいるが、中々育成が進まず、焦っている。更に巷には無責任なGAFA論、BATH論が溢れ、企業人ばかりか、一般人の不安まで募らせている。

 この様な時期に、若い男性の一般社員(新入・新人社員でなく、管理者でない)から久々の「個人的相談」を受け、上記の内容の面談が始まった。

 彼は冒頭から「今、如何に行動すべきか?」と単刀直入に質問してきた。それで筆者も単刀直入に「B列車を走らせなさい」と答えた。彼はキョトン?とした。当然だ。それで「B列車」を含む「人生の列車(ABCDFX)」の意味、それらが仕事と人生に及ぼす影響などを縷々説明した(参照:前号で解説)。その上で、彼が帰属する企業で「今、如何に行動すべきか?」を説いた。以下の通りである。

●「DX時代」と「第4次産業革命時代」に期待される企業人像
 現在到来中の「DX時代」、近い将来到来する「第4次産業革命時代」に企業が生き残り、発展するには、当該企業にとって「どの様な人物が最も期待されるか?」、彼に尋ねた。

  出典:DX時代
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 彼は、即座に「最先端デジタル技術者だ」と答えた。しかし筆者は別の回答を彼に与えた。  最先端デジタル技術は、日々、年々猛烈に進化する。と同時に陳腐化し、劣化する。そのため当該技術者は常に進化、陳腐化、劣化への厳しい対応を強いられる。ならば当該技術者になるよりも、それらの技術の特性を生かし、「企業から期待される企業人」になるべきと助言した。筆者の云う「期待される企業人」とは以下の通りである。

1 「新しい価値」を創造し、既存事業の改善や新規事業の実現を叶える「夢(好きな事、志、目標、目的など)」を持つ人物
2 その「夢」を具現化する「アイデア」、即ち「新しい価値」となる新しい商品、製品、サービス、事業を生み出す「アイデア」を発想し、その「アイデア」を最先端デジタル技術の特性を生かして「新しい価値」を創造する人物
3 創造する「新しい価値」とは、世の中の「深刻な問題」の解決に役立つこと又は世の中に「笑い」「楽しさ」「喜び」など「誠の幸せ感」を与えることに役立つことなどを云う。もし「新しい価値」の存在に世の中の人々が気付けば、自然に「新しい顧客」は創造され、それに依る「新しい収益(売上、利益、資金)」も創造される。従って問題解決と幸せ充足などを創造する人物

 筆者は、更に「期待される企業人」になる為の「具体的方法論」として、「新しい価値」を創造する「無制約・無制限発想(思考)」と「小集団創造活動(行動)」を「思考と行動」の両面から薦めた。

●無制約・無制限発想(思考)による「新しい価値」の創造
 この「無制約・無制限発想(思考)」こそが「新しい価値」を生み出す根源になる。この発想こそが「デック思考」の極意でもある事を力説した。
1 自分に課せられた組織上や規則上の職務内容に一切関係なく発想すること
2 他部門の職務分担に一切関係なく発想すること
3 そもそも自社の経営理念、経営戦略、経営計画などにも一切関係なく発想すること
4 一見違法な事でも一切関係なく発想すること(実現させる時、適法に変えればよいからだ)
5 自社、他社に一切関係なく、既存事業分野や新規事業分野に一切関係なく発想すること
6 発想は「何でもある」で、「空想」、「妄想」、「狂想」であろうと一切関係なく発想することなど。

 ここまで徹底して「考えろ、考えろ、考えろ」である。この発想累積が「新しい価値」を生む。IBM社が昔、標榜していた「Think、Think、Think」である。

●小集団創造活動による「新しい価値」の創造
 この「無制約・無制限発想(思考)」を実践し、「新しい価値」を生み出す方法論として「小集団・創造活動(行動)」を薦めた。以上の「思考と行動」の両面からの薦めは、「個人相談」の彼だけでなく、本稿の読者を含めた、全ての企業人に薦めたい事である。

 「小集団活動」は、日本企業が世界に誇る優れた組織活動方式である。日本の高度経済成長を根底で支えた活動で、QC活動、JK活動(自主管理活動)と言われ、日本全国に広まった。この活動は今も行われているが往時の様な勢いはない。この管理活動の「創造版」がこの「小集団創造活動(行動)」である。筆者は、この活動を日本全国に広めるため、ささやかなPR活動をしている。是非、読者の賛同を得て、読者も広めて欲しい。

 この活動のやり方は簡単明瞭である。社内や社外からメンバーを募り、4~5名を小集団単位として仕事の合間や仕事の後で集合し、「無制約・無制限発想(思考)」を行うのである。メンバーの数が増えれば、新しい別の小集団を結成する。そして小集団が時々集まり、情報交換、アイデア交換をする。6人以上になると纏まらず、発言しない人が生まれる。4名が最適人数(グループダイナミックス論)

出典:グループ思考&個人思考 Groupdiscussion&alonethinking=mrc&uact=8 出典:グループ思考&個人思考 Groupdiscussion&alonethinking=mrc&uact=8 出典:グループ思考&個人思考 Groupdiscussion&alonethinking=mrc&uact=8
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 小集団での発想では「グループ思考(メンバーで討議)」と「個人思考(討議の場で全員沈黙し各自が黙って発想)」を何度も繰り返し実行する。それを集積させ、その中から優れた、新しいアイデアを抽出する。そして実現させ、成功させたいアイデアを幾つか選択。この選択こそが「新しい価値」として評価されたものとなる。その選択されたアイデア(価値)が実現し、成功した状況と効果を徹底的に具体的に紙や模型で描く所謂「仮説」の設定を行う。

 この設定された仮説を戦略的、技術的、経済的に具現化する作業を「オープンイノベーション方式」で実施する。その過程で「新しい顧客」の創造と「新しい収益」の創造が生まれる。以上の発想を「デック思考」、仮説設定とその具現化創造を「夢工学」を活用して実現させる。

●そもそも日本の中小企業とは
 筆者は「中小企業」に勤める一般社員から「個人的相談」を受けた。筆者を含め、多くの人は、この中小企業と云う言葉を日常的に使っている。しかしその正しい意味を知っているか? 良い機会なので説明したい。

 中小企業とは、「中小企業基本法」が定める基準に沿って定義されたものを云う。下図を参照して欲しい(税務上は異なる)。この機会に日本の企業の全体を簡単に一望した。

 日本の企業総数は全部で約382万社ある(平成26年調査)。大企業は1万社で0.3% 中企業は56万社で14.6%、小企業は325万社で85.1%を夫々占める。従って中小企業の合計数は381万社で企業全体に99.7%になる。日本は中小企業の国とも言える。

出典:日本の中小企業 2017年版中小企業白書 概要 平成29年4月 中小企業庁調査室
出典:日本の中小企業 2017年版中小企業白書 概要 平成29年4月 中小企業庁調査室

 しかし日本の従業員総数は約4800万人、大企業の従業員数は1400万人で30%、中企業は2300万人で50%、小企業は1100万人で20%、中小企業は3400万人で70%である。日本の大企業は、数が0.3%であるが、国レベルでは30%の従業員に「働く場」を提供している。しかし中小企業は、70%と最も多くの「働く場」を提供している。従って中小企業は、国レベルで最も重要な役割をしている企業である。

 中小企業の課題や問題に関して、中小企業の経営実態、中小企業の再生と地方活性化計画、地方活性化と都市開発、日本の大企業の実態、日本が抱える問題の解決策など論じる必要がある。しかし紙面の制約から次号にしたい。

つづく

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