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ゼネラルなプロ (111) (実践力)

向後 忠明 [プロフィール] :1月号

 今月号は前月号のコンセッシオンビジネスにかかわる実行組織について説明していきます。

 実行組織の概要は下記にSPCを中心とした図を示しています。
 同様の図を前月号でも記載していますが、ここに示す図は官民一体で運営まで行う必要があるので前月号には示していない事業運営に大きく関与してくる公共部門組織が参加しています。

実行組織の概要

 また、SPCは業務内容や規模によっては多様な人材の必要性やリスクヘッジの分散ということを考慮し、複数のスポンサーが共同事業体方式で事業運営することが必要になってきます。
 なお、上図には金融機関が介在していますが、事業規模やコンソーシアム内の投資金額の程度にもよりますが、金融機関が介在しない組織形態で行うこともあります。

 さてここで合弁事業体契約についてどのような種類のものがあり、その性格はどのようなものかについて説明します。
 この共同事業体方式には下記に示すような2種類の方式があります。

コンソーシアム方式
ジョイントベンチャー方式

 これらの言葉はよく大きな開発プロジェクトのケースなどの組織体制の在り方で使われている言葉ですが、その違いは以下の通りです。

<コンソーシアム方式>
 主に欧州で用いられる分担方式で、構成メンバーは協働して特定プロジェクトを請負、発注者に対して連帯責任を持つが、内部関係においては各構成メンバーで業務を分割し、各構成メンバーは自分の採算と責任において戦略を遂行し、お互いの損益は考えない。

<ジョイントベンチャー方式>
 主に米国で多く用いられる方式であり、日本もこの方式が多いです。受注したプロジェクトを共同で行うことはコンソーシアム方式と同じです。
 しかし、その共同関係は一個の組織体として行動し、その最終損益は各構成員で分担する。もし、構成メンバーの一角が何らかの問題が生じた場合、残りのメンバーがリカバーし顧客に対して全構成メンバーで責任を遂行する。

 この共同事業体方式には、さらに構成メンバーの相互関係と発注者に対する責任内容によって下記に示す形態に大別されます。

①並列型契約
 共同で仕事をするが、契約上は、発注者と共同体を形成する個々のメンバーが直接発注者と個々の契約を独立して締結し、内部協定によってメンバー間で共同事業またはプロジェクトに関する契約をする

並列型契約

②メインサブ契約
 発注者に対して主契約者は一社になり、その会社がリーダーとなり共同契約までプロジェクト運営を行う。実質的にはメンバー間でコンソーシアム契約を結び、内部関係ではメンバー各社が行動において連帯責任を持ち、業務の遂行を行う。

メインサブ契約

③ジョイントセベラル契約
 共同事業体各メンバーが連名で主契約の当事者となり、全メンバーが発注者に対して、他のメンバーと連帯してまたは個別に(Joint & severally)に責任を負う共同連帯方式であり、この形態が共同事業体の最も通常使用される形態です。
 ただし、この場合でもリーダーとなるメンバーが必要となるので、メンバー間の討議で事業またはプロジェクトの性格を見て、その主たる役割となる会社がリーダーとなる。
 一般の大規模プロジェクトにおいて、数社の企業がリスク分散を考慮し、請負業者たちで連合を結ぶ場合、この形態の契約を結ぶことが多い。

ジョイントセベラル契約

 この形態の場合、通常は各々の所掌範囲内の仕事のみに責任をもって仕事をしています。しかし、先にも述べたように連合の一社が何らかの事情で所掌の仕事ができなくなった場合、残っているほかの会社達が脱落した会社の事業所掌分まで責任をもって連帯で取る仕組みになっています。この合弁契約の内容は工事請負企業体としても、発注者側から見ても仕事の連続性の確保、及びリスクの分散の視点からも都合の良い契約形態です。
 一般的に合弁契約と称するとこの形態が多いようです。

④別法人設立型
 各メンバーが一定割合の出資をして法人格を有する合弁会社または組合を設立し、この法人格を持った組織が事業運営またはプロジェクトの当事者として実行を行う契約です。
 冒頭に述べたコンセッシオンビジネスにかかわるSPCを中心とする実行組織がこのケースです。

別法人設立型

 ただし、このケースの場合、各出資者により、別法人会社を作るにあたり一般の建設請負を目的としたコンソーシアム(またはジョイントベンチャー)とは異なります。
 建設目的の場合はその対象となるプロジェクトの完了に伴う利益分配を得ることにより解散となりますが、別法人設立型はそれとは異なります。
 何故なら、この場合は出資、そしてそれに伴う株式の持ち合い配分に対する別法人会社金融機関への保証等々を考慮しなければならない、といった多くの課題を持っています。

 以上が合弁事業体契約に関する概要ですが、この種の合弁はエンジニアリング業界や建設業界では当たり前のように行われていますが、IT関連業界ではあまり見られません。
 しかし、今後IT関連においてもインフラビジネスなど多様な技術を含み、運用まで面倒を見ていくプロジェクトに対応するとなると自社のみでは賄えない技術や知識も必要となります。
そのような場合は数社の合弁でプロジェクトを実行することになり、上記のどれかのケースに当てはまるような組織体制で仕事をすることになると思います。

 次月号では筆者の経験した電気通信インフラプロジェクトといったコンセッシオンビジネスの事例についてお話していきます。

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