例会部会
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『第251回例会』報告

中前 正 : 12月号

日頃プロジェクトマネジメントに従事している皆様、いかがお過ごしでしょうか。
今回は、10月に開催した『第251回例会』についてご報告いたします。

【データ】
開催日: 2019年10月25日(金)
テーマ: 「身近な課題とP2M-介護とP2M」
~介護へのP2M「3Sモデル」活用事例~
講師: 富士電機株式会社
パワエレシステムインダストリー事業本部オートメーション事業部
竹田 直規 氏

P2MやPMBOK®といった理論を十分学んでいても、いざ実務に臨む際、その理論を適用したり応用したりすることの難しさを感じたという方もいらっしゃるのではないかと思います。

そこで例会部会では、自身のご経験やAdvanced PMR Clubでの活動などを通じて、P2Mの理論を「介護」の分野に適用する手法をまとめられた竹田直規氏を講師としてお招きし、その手順や重要なポイントをお話しいただきました。

最初に、親等の介護が必要になった結果、介護疲れや介護離職によって生活が破綻してしまうという、誰にでも起こりうる問題について、その実態の説明がなされました。そしてその問題解決にP2Mが役立つ理由として、

介護は、その目的と得られる価値を、自ら設定するものである
介護は被介護者の状況や家庭(家族)環境が千差万別であり、決まった対処方法はなく、それぞれに適した対処方法を組み合わせる必要がある
被介護者の状況は時間の経過(老化)とともに変化(悪化)するので、状況に合わせて対処方法を変えていく必要がある
介護は個人(一人)で行うのではなく、各種介護サービス(チーム)で行う

といった介護の特性を挙げ、これらは(期限がない点を除けば)一般的なプロジェクト特性と同じであると説明されました。

続いて、どのように介護していくかを計画して、実際に介護をスタートさせるまでの過程について、P2Mの理論に当てはめながら順に説明がなされました。以下、重要なポイントを抜粋します。

介護は「スキームモデル」であることを認識する

  P2Mのいわゆる3Sモデルのうち、介護は「スキームモデル」に当てはまる。そのため介護者は「介護スキーム」を作成することに注力すべきである。

一方で、ケアプランの作成などはケアマネジャーに任せるべきである。これも一人でやろうとすると、3Sの「システムモデル」と「サービスモデル」も担うことになり、負荷が高すぎていずれ破綻してしまう。

介護の「スキームモデル作成」には「ミッションプロファイリング」を活用する

  「ミッション表現」→「関係性分析」→「シナリオ展開」と進めて、あるべき姿にどう到達するかのシナリオを描く。

「ミッション表現」では、介護の目的と、失ってはいけない大事な価値を認識し、ミッションを明らかにする。目的の例としては「被介護者と介護者の生活(人生)の質を維持する」「被介護者の終焉を穏やかに迎える」など、価値の例としては「被介護者の生活環境(清潔さ)を維持する」「介護者の仕事を維持する」などが考えられる。大事なのは、「介護すること」が目的ではないということである。

「関係例分析」では、兄弟や親戚など、介護に関わる家族の関係性を具体的に確認する必要があるが、誰かが要介護になってからでは間に合わない。事前に被介護候補者を想定して確認しておくべきであり、そのためにも日頃から良好な関係を保っておくことが重要である。

「シナリオ展開」では、まず、要介護認定を取得する。これを取得しないと要介護レベルが決まらず、シナリオを作成できない。
要介護レベルが決まれば、レベルの高低や同居・別居などの状況を考慮して、在宅介護にするか、それとも施設介護にするかなどのシナリオを考える。
なお、介護に関わる費用は、被介護者の資産を活用するべきである。そのため事前に被介護者の資産を確認しておくことも重要である。

最後に、介護はリスクマネジメントの側面もあるとして、リスク分析やリスク評価、リスク回避などのプロセスが紹介され、講演は終了となりました。

以上が講演内容のご報告となります。講演を聞き終えて、私は介護について深い知識を得られたのはもちろんのこと、

プログラムやプロジェクトの「目的」を明確にすること
メンバーやステークホルダーの「役割」を明確にすること
メンバーやステークホルダーと「継続的なコミュニケーション」をすること

の重要性に、あらためて気づかされました。参加された皆さまは、どのような気づきがありましたか?

例会では、今後もプロジェクト・マネジャーにとって有益な情報を提供してまいります。引き続きご期待ください。

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