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「エンタテイメント論」(140)

川勝 良昭 Yoshiaki Kawakatsu [プロフィール] :11月号

エンタテイメント論


第 2 部 エンタテイメント論の本質

6 創造
●筆者への「個人的相談」の全貌
 前号では、世界メジャー・トーナメントの「2019AIG全英女子オープン」で優勝した20歳の「渋野日向子」選手の事を、本論の「個人的相談」と深く関わるため、「特別記述」した。

 本号では、筆者が受けた「個人的相談」の事を「復活記述」したい。この記述内容は、多くの読者の関心事に一致するかもしれない。この記述で渋野選手の事を再度引用する積りである。

 さて筆者が受けた「個人的相談」とは何だったのか? 思い出して貰うため、「相談の全貌」を以下に「再度記述」した。その中で「A-1」は、前々号で答えた。本号では「A-2」について答える。

出典:相談対応
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A 大企業に勤務する人物達からの個人的相談
1 自分は大会社に勤める一般社員(新入・新人社員でなく、管理者でない)である。上司から言われた事以上の事をやっていると自負している。しかし現在、日本の多くの企業で世界的規模で発展している企業は殆ど存在しない。自分の会社は「今のまま」では将来は「ヤバイ」と「漠然と感じて」いる。今、何を考え、如何に行動すべきか? 教えて欲しい。
2 自分は大会社に勤める管理職社員である。定年はかなり先である。管理者としてやるべき事以上の事をやっていると自負している。会社はいろいろな深刻な問題を抱え、「今のまま」では将来は「ヤバイ」と「冷静に認識」している。今、何を考え、如何に行動すべきか?
教えて欲しい。
3 自分は大会社に勤める管理職社員である。定年は数年後である。管理者としてやるべき事以上の事をやっていると自負している。会社はいろいろな深刻な問題を抱え、「今のまま」では将来は「ヤバイ」と「冷静に認識」している。今、何を考え、如何に行動すべきか?
定年後、どうするべきか? 教えて欲しい。

B 中小企業に勤務又はそれを経営する人物からの個人的相談
1 自分は中小企業に勤める一般社員(新入・新人社員でなく、管理者でない)である。上司から言われた事以上の事をやっていると自負している。しかし最近、日本の多くの中小企業は後継者不在などで次々と事業を閉鎖している。自分の会社は「今のまま」では「近い将来」「ヤバイ」と「深刻に感じて」いる。今、何を考え、如何に行動すべきか? 教えて欲しい。
2 自分は中小企業に勤める管理職社員である。定年はかなり先である。管理者としてやるべき事以上の事をやっていると自負している。会社はいろいろな深刻な問題を抱え、「今のまま」では「近い将来」は「ヤバイ」と「冷静且つ深刻に認識」している。今、何を考え、如何に行動すべきか? 教えて欲しい。
3 自分は中小企業に勤める管理職社員である。定年は数年後である。管理者としてやるべき事以上の事をやっていると自負している。会社はいろいろな深刻な問題を抱え、「今のまま」では「近い将来」は「ヤバイ」と「冷静且つ深刻に認識」している。今、何を考え、如何に行動すべきか? また定年後、どうするべきか? 教えて欲しい。
4 自分は中小企業を経営する社長(又は役員)である。社長(又は役員)としてやるべき事はやっていると自負している。会社はいろいろな深刻な問題を抱え、「今のまま」では「近い将来」ではなく、現在が「ヤバイ」と「冷静に深刻に認識」している。今、何を考え、如何に行動すべきか? 教えて欲しい。

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●「A-2」の個人的相談
 自分は中小企業に勤める管理職社員である。定年はかなり先である。管理者としてやるべき事以上の事をやっていると自負している。会社はいろいろな深刻な問題を抱え、「今のまま」では「近い将来」は「ヤバイ」と「冷静且つ深刻に認識」している。今、何を考え、如何に行動すべきか? 教えて欲しい。

 「A-1」の質問は一般社員が「自社はヤバイ」と漠然と感じているのに対して、「A-2」の質問は管理職社員がそれを冷静且つ深刻に認識していること、そして両者共に程度の差はあっても、自社の将来に大きい不安を感じていることが共通している。ついては筆者が「A―2」の質問に如何に回答したか? 以下で順次説明したい。

●「安心、安全、安定」の思考と行動
 日本の大会社に就活する人物や大会社で働いている人物の多くは、仕事と人生に「安心、安全、安定」を求めている。それが「本心、本気、本根」ではないか。

 一方以上の様な社員が多い大会社の社長(役員)は、異口同音に「我が社は、新しい時代の到来に備え、新しい事業を生み出し、積極果敢な経営を目指す」と声高に主張する。しかしその社長(役員)も、創業者社長を除き、その「本心、本気、本根」では「安心、安全、安定」を求めているのではないか。

 しかし新しい事業は、そもそも「不安、不安全、不安定」な経営を覚悟し、その実現に挑戦する意志決定を断行しない限り、成功しない事は、過去の多くの経営史が物語っている。

 高度経済成長時代を経験せず、バブル経済崩壊後の長い低迷時代しか経験した事がない現在の多くの経営者、管理者、一般社員は、「安心、安全、安定」の思考と行動の経営と業務を求めるのは当然かもしれない。その結果、経営と業務の主眼点は、効率化、コスト削減、価格削減ばかり追求してきた。そして取り返しが付かない問題を次々と起こしてきた。その一部を紹介する。

●日本に殆どない「世界的規模の新事業成功例」
 現在の日本企業にとって最大の問題は、過去約30年間、ゲーム、マンガ、アニメなどの「エンタテイメント事業」の成功を除くと、世界的規模と世界的持続性を持つ優れた「新しい事業」が全く生まれていない事である。その結果、日本の「経済、産業、事業」が年々、衰退している。

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 この場合の「新しい事業」とは、①新しい価値、②新しい顧客、③新しい収益(売上、利益、資金)の3つを創造し、持続可能な「新しい事業基盤」を実現させ、成功させた場合の「事業」であると筆者は定義している。

 従って既存の事業基盤の上で新しい商品、製品、サービスなどを実現させ、成功させても、その状態で留まっている間は、その成功は、既存事業の「改善」の領域に在る。

 しかしその成功の状態を拡大させ、深化させ、持続させて新しい事業基盤を確立させた時は、その新規事業は「実現」した領域に入る。そして新しい価値、新しい顧客、新しい収益(売上、利益、資金)の3つの創造が実現させ、その後も持続された時は、その新規事業は「成功」した領域に達するのである。

 現在の日本は、構造的危機に直面し、脱出できないどころか、熾烈な世界大競争の「蚊帳の外」にいる。特にAI技術の研究と事業化の分野で米国と中国から相当に遅れた。「今のまま」では、彼らに追い付けないだろう。更に恐ろしい事に、日本は、AI技術を核とする「第4次産業革命」に対処できなくなるかもしれない。「会社がヤバイ」だけでなく、「日本もヤバイ」のである。

●「新事業の成功立証責任」を負わない日本企業の多くの社長
 日本の多くの企業は、何故、世界的規模と世界的持続性のある優れた「新しい事業」を生み出せなかったのか? それは、当該社長が「不安、不安全、不安定」を伴なう新規事業の開発に「挑戦する意志決定」をしなかったからだ。

 また日本の多くの企業は、何故、既存事業の効率化、コスト削減など「改善する意志決定」ばかりしてきたか? それは、その方が「安心、安全、安定」だったからだ。

 前者の「挑戦の意志決定」は何故しなかったか? それは当該社長が部下に「当該事業が成功すると云う立証責任」を負わせたからだ。そして社長であるにも拘わらず、立証責任を自らも負わなかったからだ。

 後者の「改善する意志決定」は何故したか? それは当該社長が部下に「当該事業が成功すると云う立証責任」を負わせなくても、迷わず、容易に成功すると分かったからだ。

出典:成功か? 失敗か? 迷い?
Media=success+or+failure+clipart=f9d8174dc、truth-decisions-businessman-two-oads310x219. 出典:成功か? 失敗か? 迷い?
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出典:成功か? 失敗か? 迷い?
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 日本の企業の多くの社長は、当該新事業プロジェクトが成功するか否かの立証責任を部下に負わせている。従って当該社長が内心に「不安、不安全、不安定」を避けたい、「安心、安全、安定」を求める気持ちがあると、部下が幾ら立証しようと努力しても、YESと決断しない限り、NOとなる。また社長が決断を先送りすると、経営環境や外部事情が変わり、限りなくNOへの道を進む。一方部下は立証できなかった事の不利益を負わされ、左遷されたり、降格させられる場合まである。酷い話である。

●日本の多くの社長と社員の2つの誤認識
 日本の多くの社長は、部下に新事業を検討させたり、部下からの新事業の提案を検討する時、常に「成功する証明をせよ」、「儲かる証明をしろ」と迫る。部下は必死でその証明に務める。
しかし「新しい事業が成功する立証」は、そもそも可能なのであろうか?

 筆者は、既述の通り、新しい事業とは、新しい価値、新しい顧客、新しい収益を創造し、その持続可能な新しい事業基盤を形成することと定義している。新事業は、どれもこれも、世の中に存在しない全く新しいモノやコトを創造するのである。市場調査しても、どこにも存在しないモノやコトをどうやって調査するのか? 如何に売上を予想するのか? 如何に利益を算定するのか?

 日本の企業の多くの社長や社員は、①立証可能認識、②立証責任認識の2つの誤認識を持つっていると筆者は以前から認識している。

 前者は、新事業の成功を証明できると信じていることを云う。後者は、新しい事業の開発を命じられた部下又は自らの意志で新しい事業を社長に提案した部下は、新事業の成功の立証責任が自分にだけ課されたものだと信じていることを云う。

 この2つの誤認識が日本の企業の衰退の根本原因の1つになっていると考える。紙面の制約から、この続きは次号にしたい。

つづく

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