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英語でコミュニケーションする力

井上 多恵子 [プロフィール] :10月号

 今回改めて、以前も記述したことがある「英語でコミュニケーションする力」について、取り上げてみたい。このトピックについて考える機会がこのところ続いたからだ。

1.英語を学ぶための動機づけ
 先日学生と話す機会があり、「英語の学習方法」について質問を受けた。曰く、「TOEICの点数は上がってきているのですが、今回英語でプレゼンテーションしてみて、自分がいかに話せないかがわかりました。英語を話せるようになりたいです。」私は、英語を学ぶための強い動機づけを彼が得たことをこの発言から知り、嬉しくなった。彼の学習に、今後ドライブがかかることは間違いない。
 もしあなたが、「英語を学んだ方がいいと何となく思っているけれど、やる気がおきない」状態なら、「あるべき姿を描いて、実現のために逆算する」というPMの手法を取り入れることをお薦めしたい。
 「ある特定の場面であなたが英語を使ってコミュニケーションしている姿」をしっかりと頭の中で描けると、どういう種類の英語をどれくらいのレベルで使えるようになる必要があるのか、が見えてくる。営業で商談をしているのなら、商品の売りを伝えるだけでなく、交渉もすることになる。一挙にそこまではいけないから、「それができているようになるためには、何ができていないといけないか」を一つずつ考えていく。最初は売りだけを伝えて、交渉は他の人に任せる形でもいいかもしれない。いつまでに理想の姿にたどり着きたいか、時期を設定することが出来たら、いつまでに個々のスキルを獲得するか、スケジュールを引くことができる。達成しやすい小さい目標をたくさん設定することで、やる気を維持しやすくなる。

2.発音が悪くて通じないという思い込み
 発音が悪くて相手に通じないと思っている日本人は、結構多いような気がする。先日20名弱の学生がプレゼンをするのを聞いたが、ネイティブが話す英語を聞く機会が増えているからか、基本的には皆聞き取りやすい発音だった。職場の同僚も「英語は苦手で、、」と言っていたが、書いた文章を読み上げる分には、十分上手な発音だ。但し、課題はある。
 1点目。自信が無いからと言って、小声でモゴモゴと話をしてしまう人。これだと、「え?何言っているの?」となる。自信を持って、大声ではっきりと話すことで、通じる確率はぐんと上がる。
 2点目。単語の発音を間違えて覚えている人。勘がいい相手なら文脈から推測してくれるが、本来の発音とかけ離れている場合は、推測されない場合もある。例えば、こんな間違いをよく耳にする。
Prove(証明する)カタカナで発音を書くと正:プルーブ 誤:プローブ
Closely(密接に)正:クロースリー 誤:クローズリー
Strategy(戦略)正:ストラテジー 誤:ストラテギー
Theme(テーマ)正:thイーム(スではなくth) 誤:テーマ
対応策としては、わかっている人に聞いてもらって指摘してもらうか、正しく発音された音声を聞いて修正するか、がある。
 3点目。話し相手が、あなたの発音に慣れていないこと。ある米国人の女性と数日間一緒に行動する機会が9月にあった。彼女は日本人の英語の発音に慣れていない。その結果、結構わかりやすい英語を話している人の話でさえ、正しく聞き取れない、ということが何度かあった。これは、慣れの問題だ。私も以前はインド人が話す英語を理解できなかったが、「インド人が話す英語」という音源を繰り返し聞くなどした結果、今では理解できるようになった。9月に行ったロンドンでは、実に多様な英語の発音を聞いた。アフガニスタンやパキスタン出身のタクシー運転手。オフィスでは、9か国もの国の出身者が入り混じって仕事をしていた。相当発音が母国語に引っ張られている人もいたが、通じ合っていた。あなたも、何度も何度も話をすることで、相手に慣れてもらい、あなたの話しを理解してもらえるようにしよう。

 英語で既に問題なくコミュニケーションできている人も、改善余地はある。私は元々帰国子女で英語は得意だったし、ここ数年、大量に英語を見聞きし話す機会があったので、かなりレベルは高まっていると自負している。それでも、まだまだだ、と思うことがよくある。先ほど紹介した米国人女性とある和食のお店で食事をしていた時に、私がThere are many foreigners here.(外国人が多い)と言ったのに対し、「foreignersと言って分けるのは日本だけ。米国では教養のある人は、foreignersとは言わない」と言われて、ショックを受けた。多文化対応に優れていると自負していたのに、、、People from overseas(海外出身)などと言い換えた方が良さそうだ。また、職場で使っていたある表現の頭文字を使った表現は、英語では俗語だということも知った。ある時は、Google翻訳した単語が、今は、違う意味を持っていると指摘を受けたこともある。言葉は生き物。英語でコミュニケーションする力を磨く努力は、辞めるわけにはいかない。

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