PMプロの知恵コーナー
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「エンタテイメント論」(138)

川勝 良昭 Yoshiaki Kawakatsu [プロフィール] :9月号

エンタテイメント論


第 2 部 エンタテイメント論の本質

6 創造
●読者に「考えて欲しい」とした事
 筆者は、前々号で「人生100年論」、前号で第4次産業革命の核となる「AI技術への期待感と不安感」を論じた。

 筆者は経営コンサルタントとして各種企業(日本と海外)、官庁、大学、研究機関などからの相談に日々対応する一方、企業の経営者には経営の実戦現場での「経営支援(指導)」を、社員には業務の実践現場での「業務支援(指導)」を夫々行っている。その際に個人的な相談も受ける。この内容を前号で紹介した。併せて筆者がそれに何と応えたか? 今月号までに考えて欲しいと述べた。

出典:経営コンサルテーション
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 読者の多くは、以上の事に強い関心を持つであろう。ついては大企業と中小企業の夫々に勤務する人物から受けた個人的相談の内容に如何に応えたかを順次、明らかにしたい。もし経営に、業務に、今後の人生に参考になる事があれば、幸いである。

●個人的相談 その1
 自分は大会社に勤める一般社員(新入・新人社員でなく、管理者でない)である。上司から言われた事以上の事をやっていると自負している。しかし現在、日本の多くの企業で世界的規模で発展している企業は殆ど存在しない。自分の会社は「今のまま」では将来は「ヤバイ」と「漠然と感じて」いる。今、何を考え、如何に行動すべきか? 教えて欲しい。

1 自覚
 筆者はこの相談の冒頭、「あなたの仕事が如何に大変であっても、上司に如何に問題があっても、会社が如何にヤバイと思っても、先ず大会社にいる自分の立場が如何に恵まれているかを自覚すること」と述べた。

 世界中で日本の大企業の正規社員ほどその身分や労働条件が法的に保護された国は極めて少ない。余程の事がない限り、絶対に首にならない。毎月必ず給与が支給され、残業すれば残業代が必ず支払われる。半年に1回は賞与まで支給される。これらの支給は、働いた事への当然の対価と考える人物は、世の中の厳しい実態を知らない「初心な、愚かな人物」である。

2 日本の労働環境の実態
 現在、日本の多くのメディアは、日本の景気は良い、失業率は低く、人手不足などと政府、官庁、学者などの意見を報道している。しかしそれらの報道を鵜呑みにしてはならない(★注A)。

 中小企業に働く社員は正規社員、非正規社員を問わず、極めて厳しい環境で働いている。一方恵まれた大会社の社員は、現状に不満を持ち、簡単に会社を辞めDead Fish(★注B)になる。しかし余程の実力がなければ、Dead Fishでの再就職は、辞めた大会社と同等以上の条件で就職する事は不可能である。その結果、条件が幾ら悪くても再就職せねば日々の暮らしに事欠く。必死で再就職し、厳しい労働環境下で必死で働かねばならなくなる。後悔しても手遅れである。また定年後の年金生活の中高年者の多くは、100年時代と云う無責任報道のため、今後の生活不安を煽られ、借金返済までの将来を恐れ、極めて劣悪な環境下で働いている。

 報道の裏に隠された上記の厳しい実態は自分の目と足で確かめれば直ぐに分かる事である。

出典:負債と借金による危機
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 ちなみに筆者は経営危機に直面した某中小企業の某社長から「助けて下さい!」と必死で何度も懇願された。やむなく経営コンサルの範囲を超え、同社の専務取締役を引き受けた。中小企業の経営の難しさと社員の厳しい職務環境を骨の髄まで体験した。昨年までの4年弱を務めたが、幸い経営危機を脱する事に成功したので昨年辞職し、経営コンサルの職務に専念している。

 中小企業で経営や業務を一度でも経験した事がある人物ならば、大会社で経営や業務をする自分の立場が如何に恵まれているかが分かる。筆者は大会社に長年働いた事があるため余計、その落差が分かる。

 日本の企業数の99%を占める中小企業は、各社とも多くの問題を抱えて苦闘している。大会社と異なり、中小企業は、ひとたび経営危機に直面すると「あっ!」と云う間に倒れるのである。この事実を特に大会社の経営者や社員は知らない。まして日本の政治家、官僚、学者などは殆ど知らないのである。

★注A 日本の誤った報道の「在り方」
 筆者は標記の事を本稿で以前指摘した。しかし筆者が一人主張しても日本の誤った報道の「在り方」は変わらないだろう。それでも主張したい。

 日本の報道関係者は「報道は中立であるべき」と口では建前を言う。しかし実態は、殆どがOne Side報道である。中立とは、Both Side報道を遵守することである。日本の報道関係者は「正義、公平、公正」などを主張して報道をするが、当該報道を評価するのは、報道側ではなく、それを受信した国民側である事をそもそも忘れている。報道対象に関する賛成論だけでなく、反対論も必ず同時に報道することである。これこそが最も重要な報道の「在り方」である。

 更に日本の新聞やWEBでの報道に於いて、「誰が報道したか?」の「個人名」の記載は皆無である。この事に依って報道責任の所在を曖昧にし、時に無責任な報道を誘発する。特に週刊誌、WEB情報などで報道者の作成者名が掲載されない事から好き勝手な報道がなされる。先進諸国で個人名を書かない報道の国は、中国やロシアなどを除き、日本だけだ。

★注B Live Fish & Dead Fish
 「転職を成功させる方法」を説いた所謂「転職本」は、日本で昔も、今も数多く出版されている。しかし最も重要な成功方法の「Live Fish & Dead Fishの掟」を書いた本は皆無である。「掟」と概念化したのは筆者であるが、この言葉自体は外資系のヘッドハンターの「隠語」である。

 筆者は、1990年頃、ある日突然、職場のデスクの電話が鳴った。「ラッセル・レイノルズ社」と名乗る人物からであった。彼は外資系の有名なヘッドハント会社のヘッドハンターであった。当時の日本ではヘッドハントは珍しかった。

 その時、彼から聞いたことが、「会社を辞めてから新しい仕事を探す人をDead Fishと言います。腐って食べられません。会社で現在働いている人をLive Fishと言います。新鮮で食べられます。弊社はLive Fishしかヘッドハントしません」であった。

出典:Live Fish & Dead Fish fish+clipart&fr=uh3_news_web-GraphicsFairy
出典:Live Fish & Dead Fish fish+clipart&fr=uh3_news_web-GraphicsFairy

 余談であるが、「貴方をヘッドハントしたい内外の会社が色々あります」とその人物から知らされて驚いた。筆者は新日鐵でUSJプロジェクト(ハリーポッターの大阪USJが開園する10数年前)の総責任者として同プロジェクトを検討していた。その事が日本や海外で知られていたためヘッドハンターの情報網に掛かったとの事であった。紆余曲折の末、セガからのヘッドハントを受け入れ、セガへの転職を決め、新日本製鐵を辞めた。新日鐵を辞めた理由は、心血を注いだUSJ新日鐵プロジェクトを潰されたためである。セガで「ジョイポリス第1号(横浜)」を実現し、日本での「多店舗展開」の基盤作りを成功させ、潰された「仇」を取った。

 この掟で重要な事はLive Fishのままで新しい職を探すこと、また新しい転職が正式に決定された結果を得てから初めて現職の会社を辞職することである。

 「もし貴社をお辞めなったらいつでも当社に来て下さい」と云う多くの会社からの誘いを信じて、某大手商社の某部長は会社を辞め、Dead Fishになった。彼は再就職先として誘ってくれた各社を訪れた。

 「えっ! 何故、お辞めになったのですか?」と開口一番をどの会社からも言われ、愕然となった。大会社の大部長へのお世辞であった。それにめげず、採用を懇願した。しかし結局、全て断られた。何故か? 明確である。自分から当該大会社を辞めたと説明しても、相手は内心「首になった。そんな人物は採用できない」と判断しているからだ。これは筆者の身近で起きた真実である。

 筆者は、新日鐵~セガ~岐阜県理事~新潟県参与~大学教授などの「産官学」の異分野の転職を全て成功させた。何故か、この「掟」を徹底して守ったからである。これから転職を考えている人は是非、この掟を学び、守って欲しい。分からない事があれば、筆者に聞いて欲しい。

3 「夢」を実現させる国
 自分自身に向かい合い、上記の「自覚」を持つことに依って、会社の事、上司の事、同僚の事、そして自分の事が今迄と違って見えてくる。この事を基に、自分の「夢(志、使命、目標、目的、好きな事、したい事など)」が何か?を再度確認することである。

 しかし今も自分自身の「夢」が分からない人物は、自分自身と向き合ったことがない人物か? 自分の「本心、本気、本音」を知ろうとしない人物か? そうする事が怖くて逃げている人物か?などである。最近、その様な人物が老若男女問わず数多くいる。これでは「夢」のプロジェクトの実現と成功に挑戦する人物は生まれない。まして日本が「Japanese Dreamを叶える国」になる事は不可能である。

 日本の指導的立場の人物の多くは、トランプ米国大統領を批判し、米国を批判をする。確かに米国はいろいろ問題の多い国である。しかし批判ばかりせず、米国は今も「American Dreamを叶える国」である事を評価するべきである。批判だけなら「子供でも出来る」。中国批判も多いが、最近の中国は「夢」を叶える国になりつつある。

4 目指せ、「夢」を持った「創造的な経営プロと業務プロ」
 現在の日本は「ヤバイ」のである。構造的危機に直面し、脱出できない事、熾烈な各種の世界大競争の「蚊帳の外」にいる事、AI技術の研究と応用に遅れた事、「今のまま」では、AI技術を核とする「第4次産業革命」に対処に出来ないかもしれない事などである。この様な状況下で「今、何を考え、如何に行動すべきか? 教えて欲しい」との相談に応えた。

「他者と過去は変えられない。変えられるのは自分と未来だけである」と考えること
「創造的な経営プロと業務プロ」を目指し、そのための「自己研鑽」の行動を始めること

 「創造的な経営プロと業務プロ」になるための「在り方」と「やり方」は本稿で解説した。「自己研鑽」は、日々の仕事の合間、仕事の場、私生活の場などで実践する事である。しかし「自己研鑽」とは、本を読む事、講演を聞く事などの自助努力の行動だけではない。

再出典:経営プロ&業務プロ
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再出典:経営プロ&業務プロ
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 自分の恵まれた立場を自覚し、誰から命令された訳でなく、自発的に考え、自発的に行動する事こそ最も重要な「自己研鑽」の行動である。

 例えば、大会社の経営基盤や社会的信用基盤を最大限に活用し、自分の「夢」を会社の「夢」に重ね合わせ、その実現と成功を目指して、社内外の同士と集め、彼らと共に「構想」や「計画」を考案し、纏める事である。その構想や計画を会社の上司やトップに提案し、承認を得て行動を開始する事である。承認されなければ、何度も何度も承認されるまで提案を続ける事である。この継続こそが「本心、本気、本音」で「夢」の実現と成功に挑戦しようとしている「証」になる。上司や社長はこの証を認識した時、承認する。「断られてからが本当の勝負」の譬えの通りである。

 しかし幾ら自己研鑽し、幾ら提案を繰り返してもダメな場合がある。その時になって初めて、密かに、「Live Fishの掟」を遵守しながら新しい就職先を探すことである。安易にDead Fishで会社を辞める事は「自殺行為」だ。

つづく

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