今月のひとこと
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 ボランティアスタッフ 

オンライン編集長 深谷 靖純 [プロフィール] :9月号

 ぼちぼちヒグラシが鳴き始める頃ですが、まだミンミンゼミやらアブラゼミが騒がしく鳴いています。蝉は幼虫の状態で3年~17年間を地中で過ごし、地上に出て成虫になると1週間で昇天すると教えられ信じていました。しかしながら、高校生による蝉の生態研究によって1か月以上生存する蝉がいることが判明したというニュースがありました。かなり昔から研究者の間では1か月以上生存する蝉がいるとの噂があったそうですが、誰も実態調査をしなかったということです。考えてみれば、成虫になって1週間経つと揃ってポックリ逝くというのも怪しげな話です。どうして信じていたのでしょうか。

 今年のPMシンポジウムは9月第1週の木曜日、金曜日に開催されます。残暑が厳しい時期であるとともに、台風シーズンですので直前の1ヶ月ほどは毎日の天気予報(長期予報)に一喜一憂させられます。このPMシンポジウムですが、2日間で76セッションもの講演を行なうという大規模なイベントにも拘らず、その担い手がボランティアだと説明すると、大半の方が驚きます。
 PMシンポジウムのボランティアスタッフは、PMAJのHP上で毎年「実行メンバー及び当日運営スタッフ」として募集されます。PMスキルを磨く場であり、多くの気づきを得られると紹介されていますが、どのようなPMスキルを醸成しているのでしょうか。この欄では、これまでも何度かボランティアによる実行委員会活動を紹介してきましたが、今回はボランティア主体のプロジェクト固有の特色について探ってみたいと思います。
 開催日のほぼ1年前に30名程度の実行メンバーが集まり、PMシンポジウム当日になると、さらに当日限りの当日運営スタッフが50名程参加します。大会テーマの策定、プログラム構成の検討、講演者の選定・折衝、当日の受付・司会・進行等を実行メンバーによる実行委員会で1年かけて企画します。当日運営スタッフはシンポジウム前日から会場に集まり、実行メンバーの指揮に従い会場設営、当日運営を行います。
 実行委員会は約1年間に亘り隔週で会議を行ないます。長丁場のようにも思いますが、会議の実施回数は20回程度ですので、ゆとりがある訳ではありません。会議の都度、成果をあげていかないと(結論を出す)直ぐに時間切れとなってしまいます。ボランティアだと毎回の参加が難しく、自分が欠席した日の会議の結論が反対していた案になることもあります。いったん結論が出ると、余程の問題がない限り蒸し返すことはタブーです。委員会方式のプロジェクトでは、一般的なルールかもしれませんが、ボランティアによって運営されるプロジェクトでは特に遵守されなければならないルールです。
 実行委員会には、10年を超えるベテランもいますが、例年数名の新人が加わります。会社等の組織と異なり、職位による階層がないので誰かの意思によって物事を決めるというような場面はありません。一応プロジェクトリーダーとか企画リーダ、運営リーダという名の取りまとめ役がプロジェクトの指揮を執っていますが、物事の結論を出す際は出席者全員の一致を基本としています。賛否が分かれた場合には多数決で決することになりますが、議論が不十分な状態で決をとると個々のメンバーに腹落ちせず、実行段階でもたつくといったことになりかねません。議長役の腕の見せ所ですが、意見を出し尽くしたので多数決で決めるしかないと全メンバーが納得するような状況を作らなければなりません。そうでないと会議に不参加だった人に説明する際に説得力を欠くことになります。ボランティア組織をスムーズに運営するコツといったところでしょうか。
 PMシンポジウム当日限りのスタッフについては、集合時に業務内容をいかにすばやく伝えられるかがポイントになります。的確で簡潔な運営マニュアルを用意し、適度にベテランを配したチーム編成を組み立てるなど、毎年工夫を重ねているのですが蓋を開けるまでは心配が募ります。
 ボランティアスタッフには報酬がありませんので、参加は自分の意思によります。全員が自分の意思で参加しているプロジェクトですので、参加者同士で話をするだけでも何らかの気づきがあります。さらに、全員のコンセンサスを得ながら進めるという点はサーバントリーダーシップの在り方にも通じていると思います。今年のPMシンポジウム2019はもうじき開催され、直ぐに2020年に向けてのプロジェクトが始まります。ボランティアスタッフとしての活動に興味をお持ちの方は、PMAJ事務局に連絡してみてはどうでしょうか。PMスキル磨きではなく、ただ楽しむだけが目的だというのもありだと思います。

以上

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