今月のひとこと
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 復古調 

オンライン編集長 深谷 靖純 [プロフィール] :8月号

 記録的な長雨の後、暑い夏が戻ってきました。雨傘が愛らしい日傘に代わって、いかにも夏という景色です。環境省も「熱ストレス軽減のために日傘を使おう」と推奨、日傘を使う男性が増えるかもしれません。とはいうものの、通勤途上等の混んだ道での日傘は、かなり迷惑モノになっています。雨の日は皆が傘をさすので、お互いに邪魔になりあうだけですが、晴れた日は傘を差す人、差さない人が混在することになります。背の低い方が差す傘が差さない方のちょうど目の高さになることもあり、かなり危険です。歩きスマホ以上に恐怖を振りまく日傘、どうぞマナーを守ってお使いください。

 ここ数年、復古調のファッションが突然ブームになっていて驚くことがあります。ファシズムや白人至上主義が古いファッションのような感覚で「復活」したりするのはいかがかと思いますが、高齢化が進むと懐古趣味が蔓延するのかもしれません。
 かつての勤め先やら母校の同窓会に参加することが多くなりました。大先輩やら社会人になったばかりの若手が混在しており、話題探しに戸惑うこともありますが楽しい時間を過ごしています。編集子なぞは相対的に高齢層に属していることから、丁重な態度で接してもらっているという面があるかもしれません。
 最近、この同窓会で気になっているのが校歌とかエールの前に口上を述べるのが習慣化というか儀式化してきたということです。口上というのが正式の呼称かどうか自信がありませんが、PMAJ事務局で校歌斉唱の前に指揮者が数分間述べる前口上を創作するとこんな具合になります。
仰ぎ見れば東京タワーの赤橙胸に熱く、
首を巡らせば高層ビル群が若人の夢を紡ぐ。
ビルの隙間から覗くは東京湾の工場群か、富士の峰か。
日本の精気、ここに集えり。
いざ、謳わんかな、謳わんかな。
アイン、ツバイ、ドライ、ソレ・・・。
 かつては、高校や大学で応援団の方々が主にやっていたように思います。編集子の出身校には応援団がいませんでしたが、体育系のクラブの中には独自の前口上を開発し、歴代伝えているところがありました。そんなことで、かつて演じた経験がある人がやっているのかと思っていたのですが、比較的若い参加者が見よう見まねの前口上をしているケースもあるようです。
 編集子の周辺のみで行われるローカルな流行だと思っていましたが、最近、隠れた流行として全国的に広がりつつあるのではないかと疑っています。カラオケでは、装置から流れる演奏に合わせて歌わねばなりませんが、前口上は気の利いたセリフを自分のリズムで語ることが出来ます。間違えても、アドリブOKの前口上ですからストレスなしです。
 罪のない懐古趣味と笑い飛ばせるようなことではありますが、懐かしさの陰に何かが隠れているような気味悪さを感じています。軍国主義的な香りがするからでしょうか、酔っていても難しい口上をスラスラと語る後輩をうらやましく思うからでしょうか。

以上

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