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「日本再生“アベノミクス”を成功させるために何が必要か」 (65)
高齢化社会の地域コミュニティを考えよう (41)

東京P2M研究会 渡辺 貢成: 8月号

Z. 先月号でIさんは再生協議会の方針と、Iさんの発想に歴然たる相違があるのがわかった。しかし、協議会は十分な検討無しにIさんの提案を却下した。それにも関わらずIさんは腹も立てず平然と引き下がってしまった。それには訳があるのかな?

I. 私はPM協会で経営戦略の研究をしてきました。この協会はPMC、PMS、PMR、PMAという資格があります。
PMC: PMコーディネーター 初心者向けの資格です
PMS: プロジェクトマネジメント・スペシャリスト P2M(プログラム&プロジェクト・マネジメント)知識全般の筆記試験合格者;標準ガイドブックに書かれた内容の知識をマスターし、資格試験に合格した人の資格
PMR: プロジェクトマネジメント・レジスター PMS取得後、いくつかのプロジェクトを経験し、その能力ベース資格認定ガイドライン(CPC)の中の「職業人の倫理と責任」(信頼性の向上、倫理責任、説明責任、成果責任)を求めている。
PMA: プログラムマネジメント・アーキテクト プロジェクトマネジメントの一段上のプログラムマネジメントの実践的知識・実践的能力の高さを評価されて資格者となる。現実には世界情勢の変化が激しく、内容が高度化してきた。そのため能力ベースの基準を決めかねている。しかしPMRは経験を積めば容易ではないが資格は取れる。PMAはある種の感性が求められている。アイデアが簡単に出る人。時代の流れを上手く読める人、交渉者相手の心が読め、説得力のある人物等である。
 そこで私はこれら社会の変化の中で、上記能力を発揮できる方々とは何が付加されればいいかと研究を進めてきた。付加される要点とは何か、実践を通じて理解しようと2006年から実践事例をオンラインジャーナルに掲載しはじめ、今日に至っている。このエッセイは社会の動きと、それに対応する能力とは何か実践上の要求を追い求めてきた。

 現在書いている地域再生プロジェクトで、現実に県市町村が実施している内容は決して高度なものではない。しかし、PMが持っている価値ある内容が無残にも無視され、PMがあたかも無能なごとく取り扱われていることは情けない。
 この問題の大きなポイントは「日本的ムラ社会」の存在である。この社会は仲良しクラブであることが最高の幸せなのである。
 この問題を調べると日本国(権力者)が何を考え行動しているかが見えてくる。日本が敗戦した後、新たに復活した活動の中にこの「日本的ムラ社会」の習性が残され、『仕来り』として温存されている。その中に目立つ発想がある。それは「日本人はいまだに東大入学者を成功者と認める習慣である」。その要因は官僚組織での東大卒の率の高さである。明治時代から東大法学部卒が官僚組織のエリートであった。その理由は国会で新しい法案を作成する際、新規の条項がいずれの条項とも抵触しない法改正を行ってきた人々の実績が残されているからです。
 しかし、官僚体制の中での研究部門から成果がでたことが少ない。学閥の影響で新しい組織改革ができないとのマイナス面が出ている。そのマイナス面とは日本の国外が成長しているのに、官僚組織はつぶれない組織であることを誇りにしているが、残念ながらこの組織から新しいものが生産されず、業績という点で世界からの評価が下がっている。「日本的ムラ社会人」は、この現実を理解していない。産総研という経産省傘下の研究所がある。毎年数百億円という予算を使いながら特許取得が少ない。少ない特許の中で収益を得ているのは1件だったとの内部情報を得た。
 そこで「日本的ムラ社会」からの仕打ちに腹をたてるよりか、戦後から現在までの戦略の変化を過去のオンラインの記事の中から抜粋し、再度まとめてみることにした。それは、インターネットという化け物の出現で、世界が根本的に変化したことである。
インターネットの普及に伴い企業経営の変化(デジタル経営への転換)
デジタル経営からAIによる新しい技術の模索的変化
インターネットがさらに普及したことによる、経営の内容も変わり始めた。さらに大きい変化はグローバリゼーションへの急速な変化で、巨大組織が自己資本の活用から米国国債の大幅活用法としてデリバティブ取引が盛んになった。
その結果として従来にないMES(種々の製造ができる仕組みとなっている巨大製造設備)をつくり、中国大陸での合弁会社の設立。
EU統合による欧州連合という巨大マーケットが出現

 世界では2000年から2010年までに上記のことが発生している。読者のみなさん、この意味をご自分なりに考えていただきたい。そして自分の身の回りの課題が『日本的ムラ社会的』でありすぎないか、も含めて検討していただきたい。

 私が今変わって欲しいと願っているのは2019年の現実の「日本的ムラ社会の現実」です。世界の国々の動きとの比較を見てください。そこで疑問を持ったら、来月号から始める『終戦直後から現在までの世界の動きと日本国の動き』とそれ以降を読んでください。
Z. わかった。ぜひわかりやすく説明して欲しい。
I. 私がPMAJを退いてから地元の再生協議会に首を突っ込むことになりました。町がつくった総合戦略が素晴らしかったため、人材募集に応じて再生協議会のメンバーとなりました。その時は既に第一次“アベノミックス”に応募し、5つのテーマを実施していました。私は残りのテーマとして総合戦略の中の基本目標「子育て環境の整備と展開」をテーマとしてP2Mが持っている最新手法を含めて提案しました。

募集に応じた理由はPMではレベルの高いプログラム・マネジメント系のテーマであったこと、複数プロジェクトを取りまとめる際に使われるプラットフォーム・マネジメントの分野のテーマであること、町では手掛けないであろうと考えたテーマで、人口減少に歯止めがかけられるテーマであったこと、県の住宅供給公社が28棟の5階建てアパートの50%が遊休状態であること、このプログラムにはこのほかのステークホルダーとして保育園、幼稚園、小学校、中学校、自治会、社会福祉協議会、老人クラブが関与するコンソーシアムを組むことができること、テーマは大きいがPMAという資格は今ないが、あるとしたら最適なテーマと考えたこと。

さて、本題に戻りますが、本件を提案したとき再生協議会からこのテーマは大きすぎてこの町には適さないという採用拒否の宣告をされました。

このテーマは確かに大きい、広範なテーマの集合体であることは事実です。しかしこの中で起こっている課題は当該町の永久の課題でもあります。

そこで私は議論だけでもさせてくれと頼みましたが返事もありませんでした。彼らはこのテーマに対し意見を交わす知識と見識に欠けていたために拒否したと感じました。
そこで次の手を考えました。たまたま、町会議員の選挙が昨年11月にありました。たまたま面倒を見ていた地元出身者を候補に仕立てて、有力者を後援会長とした後援会をつくり、4位で初当選させました。
更に私自身は再生協議会で公園部会長を仰せつかっていましたが、本年3月でリタイアしましたが、町の老人連合の地区会長をしています。

世の中とは面白いもので、本年1月に【天才を殺す凡人】という本が出版されました。
内容は社内で天才的存在の社員が提案したイノベーションのテーマは社長という凡人が自分の社長任期中は失敗したくないという意味で採用延期するようです。また、本年4月には【優れた発想はゴミ箱に捨てられる】という本が出版されました。
TOC協会「制約条件の理論」を活用した本で素晴らしい本でした。いずれもアマゾンから書評の依頼を受け、前者を4☆、後者を5☆として提出しました。

冒頭に「腹も立てずに平然と引き下がってしまった」と書きましたが、本案件を一地方の問題として議論することではなく、日本中の地域再生に役立つことを書くべきと決意したのは、若手町会議員誕生。日本的ムラ社会の行動に対する抗議的本が2冊も出版されたことは時代の流れが始まったと感じたからです。また、【優れた発想はゴミ箱に捨てられる】の著者は米国のTOC協会でゴールドラットCEOの下で勉強し、今日本のTOC協会CEOの岸良裕司氏で、彼はPMAJ設立時からの親しい親友で彼からもアマゾンへの書評提供を依頼されました。また、今月PMAJの事務局からPMシンポジウムへの招待状が届きました。このような動きは単なる偶然ではなく、早く動き出せという時代の動きととらえました。

幸い13年間に書かれた中に貴重な内容が多々あります。そして日本ではPMその者がまだ発展途上でありますが、世界では経営の決定の多くが科学的です。これに対し日本の経営はまだ稟議制で、タテマエではデジタル経営と言っていますが、依然アナログ経営です。日本の競争力と東大の地位は年々下がっています。

次に国債発行とその活用方法が日米正反対です。そして国債発行とその活用が官に偏っており、その貴重な金を使ったが成果が出なかった。事故が発生しても責任を感じていない等の問題があり、日本国の実力低下が著しいことに国民は気が付いていません。

これらの課題にPMがどのように役に立つかという視点で問題を捕え、その課題を考えてみたいと考えました。読者の皆さんはグローバリゼーションの動きの内容の真相をよく知っていないと思います。知ると恐ろしさを感じるかもしれません。戦後から今日までの履歴を説明していきたいと考えています。

Ⅰ. 終戦(1945年)から1990年までの簡単な経済発展の歴史と成果
  i. 日本の製造業:終戦から製造業世界一となるまで
  ii. 日本企業の組織構造の特殊性と世界一となった要因
  iii. 米国製造業との対比

Ⅱ. 1990年から2000年までの経緯
  i. 製造業世界一から2000年までの大変化
“バブルと知らずの貴族気分”と“韓国への支援とその結果”

1995年インターネットの普及とその対策(米国経営のデジタル化への邁進)
1997年山一証券自主破産宣言と財テク優先企業への後処理(日本)

Ⅲ. 2000年から2013年までの変化
  i. 米国企業のデジタル化経営の進展
  ii. バブル被害者としての大企業への救済とその後の経過
  iii. 国債発行と国による国債利用とその成果
  iv. 国内企業のデジタル経営活動とその成果
  vii. 国際金融資本による国債の活用と中国と合弁会社設立とその成果
  viii. EUの発展と種々の課題の拡大
  ix. 日本企業のグローバリゼーション対策への疑問

Ⅳ. 2013年から2019年への転換
  i. “アベノミックス”とその発展
  ii. 財務省によるデフレ政策(官僚が責任を取らない国家運営システムの拡大)
  iii. 見えてこないグローバリゼーションとその問題点(どの方向へ進むのか)

 これらのテーマを5回程度に分けて解説します。
Z. Iさんの話は面白そうだな。期待している。

以上

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