新P2Mクラブ
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『リアルなP2Mプログラムマネジメント』の実践とは

PMR 森 邦夫 : 8月号

プログラムマネジメントをどうやって実践するか。これは長年重要な課題として認識され、幾多の有識者がその範となる事例・考え方を紹介して頂きました。そのご活動によって広く啓発にご貢献頂いたと思います。一方で、今日実際の職場において、プログラムマネジメントをよく実践しているということを聞く機会がございません。普及はしたが実施はこれから。これは、啓発の必要はもちろんありますが、次の実行の段階に入ってきたと考えております。私もPMR資格者として、P2Mプログラムマネジメントの現場での実行について、微力ながら貢献していきたいと思います。

まず最初に、プログラムマネジメントと聞いて、世間のプロジェクトリーダやプロジェクトマネジメントの有資格者がどのように考えているかを聞き、まとめてみました。

1. プログラムマネジメントと聞いて思い浮かぶこと
プログラムマネジメントを知らない。或いは認知度が低い。
プログラムマネジメントの実践のツールがよくわからない。
プログラムマネジメントの事例を読んでも、それがプログラムマネジメントの知識体系に、どのように関係しているのかわからない。
プロジェクトマネジメントを担当している人がプログラムマネジメントを学ぶと、「これは経営者層や上級管理者の仕事であって、自分の仕事ではない」と思う。
プロジェクトリーダは自分の負荷が増すプログラムマネジメントを避ける気持ちになる。
プログラムマネジメントは普段の業務の中で進めているといわれてもピンとこない。普段の業務で実践しているのなら、なぜうまくいかないのか。

このように、実際に業務を推進している人やプロジェクトマネジメントの有資格者から見た場合、プログラムマネジメントに対する認識や期待は高いとはいえないように思います。これは皆さまも同じように思われたのではないでしょうか。それでは、プログラムマネジメントが必要、或いは有効と思うのはどのようなケースでしょうか。私が考えるケース4件を挙げてみます。

2. プログラムマネジメントが必要と思われるケース4件
ケース1
プロジェクト内で解決できない問題について、解決のためのプロジェクト(群)を立ち上げ、当該プロジェクトと連携してプログラムマネジメントとして推進する。
ケース2
終了した案件について、プログラムマネジメントの知識体系から振り返り、良い点・改善点を見い出し、次の案件に活かす。
ケース3
経営幹部自ら、プログラムマネジメントを認識し、経営幹部の役割を認識する。「中期計画は作った。あとは現場で頑張れ」にならないようにする。
ケース4
現場のメンバーだけでプログラムマネジメントを推進する。プログラムリーダは、必要に応じて経営幹部・上級管理者・他部門の協力方法を考える。

今回のこのご報告では、4件のケースのうち主にケース1について述べます。

ケース1について
P2Mプログラムマネジメントの概念は、皆様がよくご存じの図-1です。説明するまでもないと思いますので解説は省略します。
【図-1】
【図-1】P2Mプログラムマネジメントの概念

図-1とは別に、最近私は次の図-2のようなプログラム&プロジェクトマネジメントを思い浮かべることがございます。

【図-2】
【図-2】プログラム&プロジェクトマネジメント
【参考】 プロジェクトAを牽引するリーダをプロジェクトリーダAと呼び、そのプロジェクトマネジメントをプロジェクトマネジメントAと呼ぶ。

図-1と図-2の違いはなんでしょうか。図-2の矢印は関係性を表すものです。要は図-2ではすべてのプロジェクトが関係し、プログラムマネジメントがプロジェクトA~Dの関係性を見ながら統制していることを図-1より明確にしています。「ただそれだけ」と思うかもしれませんが、ケースによっては個々のプロジェクトは他のプロジェクトとの関係性を踏まえて、独自性を有することもございます。この場合は、相互連携した自律分散型のプログラム&プロジェクトマネジメントと思います。
この図-2の成り立ちとしては、まずプロジェクトAが最初に立ち上がります。その中で解決できない問題が発生してプロジェクトB・C・Dが立ち上がったと思っていただければと思います。そして、ここでのプログラムマネジメントの役割は、各プロジェクト間の関係性を把握しつつ、交通整理的な役割を果たします。例えば、社内会議で各プロジェクトの交わる場を設けるとかです。プロジェクトAを仕切るプロジェクトリーダが眼前の課題のクリアに追われ、派生した問題に対処できないためプロジェクトB・C・Dが生まれたのです。派生したB・C・Dも問題解決に追われて他のプロジェクトとの連携を怠ることを回避するため、それらを連携させる、あたかもサーバントリーダーシップを行う役割としてのプログラムマネジメントです。これは『リアルなプログラムマネジメント』を推進した事例と思います。
【具体例】
新規ビジネスを担当するプロジェクトAではQCD達成に追われ、それ以外の課題には対応できない。プロジェクトBは、新規ビジネスと既存製品の双方の開発プロセスに有効となる規定の新設・改定プロジェクトを立ち上げる。プロジェクトCは開発の効率性を上げるために、既存製品のプラットフォームを視野に入れた改善施策を立ち上げる。プロジェクトDでは、新規ビジネスのアフターサービス体制を既存の仕組みで使えるか否かを検討する。そして、A~Dが各課題の対策に追われる中、それらの状況を把握してミッションの達成に向けてプロクラムマネジメントを推進する。皆様からみたら、最初からこの形にすべきと思うかもしれませんが、現実は霧が立ち込める中、「とりあえずやってみよう」で始まり、その中で問題が見えてプロジェクト群を立ち上げ、プログラムマネジメント化していくという考え方もありではないかと思います。
ケース2~4についても簡単に触れておきます。
ケース2では、プログラムマネジメントの案件をプログラムマネジメントの知識体系で振り返ると抜けが生じるというものです。ケース3は戦略立案を終えた後の戦略実行という観点から考えるものです。そして、ケース4は実はプログラムマネジメントを担当すると負荷が増して避けたいと思うプロジェクトリーダでも、担当すべきプログラムマネジメントはあるというものです。

以上、ケース1については少し事例も交えて展開させていただきました。また、より詳しい内容やケース2~4については、来年1月10日(金)~11日(土)に行われるP2Mプログラム実践研修の場で皆様に考え方と事例を紹介したいと思います。

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