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はじめに
みなさんはプログラムマネジメントと聞くと、プラント建設やシステム開発、もしくは、企業経営や新規事業開発など、仕事のために使うものだと思っていませんか?プログラムマネジメントの考え方は、仕事だけに限らず、プライベートにおける持ち家、結婚、子育て、旅行、介護など、身近なところにも活用できます。
私には子供が二人いますが、上の子が就職し、ようやく親の手が離れたと思っていた矢先に”結婚したいと思っている!”と告げられました。子供が結婚することは、親にとしてもちろん嬉しいことですし、親がアレコレお節介を焼くことではありませんが、結婚する当人たちだけでなく、私と妻、婚約者の両親などステークホルダーそれぞれに、さまざまな結婚への思いがあることがわかりました。
そこで、子供の結婚をそれぞれのステークホルダーが満足できるものにするために、プログラムマネジメントの考え方に基づき、結婚の準備にスキームモデル、結婚式や新婚旅行にシステムモデル、結婚後の新生活にサービスモデルをそれぞれ適用して、子供を支援し、親としての大きな役割を果たした事例をご紹介します。
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Advanced PMR Club が考えるプログラムの類型と事例
今回ご紹介する事例は、Advanced PMR Club のメンバーがオンとオフで実践している身近な事例を纏めてPM シンポジウム2019 でお配りした小冊子「プログラムマネジメント実践事例集(エッセンス版)」にも掲載しています。また、第15 回P2M クラブにて話題提供としてご紹しました。Advanced PMR Club については、過去のオンラインジャーナルでも何度か紹介されていますが、PMR 資格を保有する会員が、PMR の認知向上活動およびPMR による価値創造活動を通じて相互啓発し、プログラムマネジメントの普及促進を図ることを目的としたPMAJ における会員活動の一つです。
右表は、Advanced PMR Clubが考えるプログラムの類型と事例です。P2M 標準ガイドブックに記載されているプログラムマネジメントの具体事例に加えて、分類・類型の定義も新たに追加しつつ、プログラムマネジメントをより身近に感じられる事例をあげています。分類については、戦略型、オペレーション型、イベント型の3 つがあり、それぞれの定義は次の通りです。 |
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<戦略型> |
ゼロベースで新しい物事を実現し、運用モデルにつながっていく。 |
<オペレーション型> |
既存のオペレーションに加えていき、新しい物事を実現し、運用モデルにつながっていく。 |
<イベント型> |
通常は一過性であるが、プログラムマネジメントを適用することで「やってみたい。やってよかった。またやりたい。」につながっていく。 |
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子供の結婚の事例
私は電気機器メーカーに勤めており、仕事はシステムエンジニアリングおよびプロジェクトマネジメントに従事し、数年前よりPMO 部門にてプロジェクトマネジャーの支援を行っています。2014 年にPMR 資格を取得し、仕事においては、P2M を実践して来ました。一方、プライベートでは、息子の就職、娘の進学、親の介護、家のリフォームなど、ここ数年大きなイベントがいくつかありましたので、仕事以外でもP2M を活用できないか考えるようになりました。
そんな時、息子から”結婚したいと思っている!”と告げられました。子供の結婚は親として初めての経験でしたから、どういった段取りで進めたら良いのだろうか?結納は取り交わすのだろうか?結婚式はどういった形で誰を招待するのか?海外で二人だけの挙式なども聞くが、親はどのように関わるのだろうか?など、世間の慣習や最近の結婚式事情なども鑑みていろいろと考えました。また、息子(新郎)と彼女(新婦)を取り巻く環境に目を向けると、次のような状況にありました。
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二人は同じ大学の同級生で共通の知人も多い。 |
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二人とも就職して二年目であり、結婚資金はあまりない。 |
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新郎も新婦もそれぞれの両親は健在でまだ現役であることから、親からの援助は可能。 |
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新郎は就職後に転勤で地方へ行っているが新婦は東京で仕事をしており遠距離恋愛を続けている。 |
このような状況の中で、結婚する当人たちや両家の両親などステークホルダーそれぞれに、さまざまな結婚への思いがあることもわかりましたので、子供の結婚というイベントにプログラムマネジメントの考え方を適用し、それぞれのステークホルダーが「やってよかった」と満足できることを目指すことにしました。
右表は、今回の事例の概要をまとめた「プログラム事例紹介シート」です。
プログラムマネジメントの特徴を示す3S モデル(スキームモデル、システムモデル、サービスモデル)を意識してまとめています。今回の事例では、結婚の準備にスキームモデル、結婚式や新婚旅行にシステムモデル、結婚後の新生活にサービスモデルをそれぞれ適用しています。 |
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また、創造した価値は、調和価値とし、プログラムマネジャーは、親である私から子である新郎新婦へ引き継ぐ形としています。
(1) スキームモデル(結婚の準備)
① ミッション表現
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「何のため」の結婚なのか? |
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新郎と新婦が、将来を誓い合う |
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新郎と新婦が、親族や上司・同僚、友人に結婚を公式に披露する |
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「誰のため」の結婚なのか? |
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もちろん!第一は、新郎と新婦のため |
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しかし、“新郎と新婦のため“だけではない?新郎新婦両家のため? |
② 関係性分析
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ステークホルダーそれぞれの思い |
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新郎: |
参列者に「新婦を幸せなお婆ちゃんにする!」と宣言したい |
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新婦: |
女子高時代の友人を招待して、楽しい披露宴にしたい |
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新郎両親: |
親族へお披露目し、みんなで二人の門出を祝いたい |
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新婦両親: |
嫁いでいく娘にできる限りのことをしてあげたい |
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③ シナリオ展開
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結納まで |
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両家の顔合わせの場でそれぞれの思いを共有する |
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結納をどのような形で行うか両家で相談する(正式結納、略式結納) |
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結婚式まで |
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結婚式のスタイル、式場、規模、招待客などは新郎と新婦に任せる |
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両家で打合せを持ち、それぞれの思いを共有する |
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新婚旅行 |
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新郎と新婦の仕事の都合などから、新婚旅行をどうするか検討する |
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新居 |
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新郎(地方)と新婦(東京)は遠距離恋愛であったため、結婚後の仕事や新居のことを新郎と新婦が中心となり検討する |
(2) システムモデル(結納式、結婚式、新婚旅行の計画と実行)
① 結納式
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両家の顔合わせの場で、結納は「略式結納」とすることで合意 |
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都内のイタリアンレストランにて平服で執り行う |
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「略式結納」とするが、それぞれ結納の品を取り交わす |
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両家でそれぞれの思いを共有して結婚式を進めることとした |
② 結婚式
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式場探しから予約、式場との打合せ、準備は全て新郎新婦で進める |
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両家で打合せを持ち、両家(両親)のそれぞれの思いを共有した上で両親からの費用援助などを相談する |
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当日をイメージするため、両家の両親もそれぞれ式場へ下見に行く |
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新郎は、参列者の前で「新婦を幸せなお婆ちゃんにする!」と宣言 |
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新婦は、友人を招待し、デザートバイキングなどでもてなす |
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新郎両親と新婦両親は、それぞれ費用援助も行い、親族へお披露目して、親としてできる限りのことをしてあげられた |
③ 新婚旅行
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新郎と新婦の仕事の都合や費用都合から、新婚旅行はあらためて計画することとする |
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結婚式から半年後に、ニュージーランドへ新婚旅行! |
(3) サービスモデル(新居での生活のスタート)
① 新居への引っ越し
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結婚に備え、新郎は現在の住居が手狭なため、広い住居に引っ越す |
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結婚式後に新婦が新郎の新居へ引っ越す |
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新婦は引っ越し後にあらためて仕事を探し、新婚生活をスタートさせる |
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新郎は、職場から徒歩15 分の広めの新居へ引っ越し |
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新婦は、東京から新居へ引っ越した後、新たな仕事につく |
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まとめ
今回、身近なところで使えるプログラムマネジメントの事例として、子供の結婚の事例を紹介しました。
結果的には、結納~結婚式~新婚旅行と言った今までの慣例的なやり方を踏襲した形にはなりましたが、プログラムマネジメントの考え方を適用したことによるポイントを最後に纏めると、次のようになります。
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「何のため」の結婚なのか?「誰のため」の結婚なのか?を共有し、 |
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新郎新婦をはじめ両家の両親などステークホルダーの思いを分析し、 |
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この結婚に対するステークホルダーそれぞれの思いを共有して |
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ステークホルダーのベクトルを合わせて進めたことで、 |
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ステークホルダーそれぞれの満足感(価値)を高めることができた。 |
みなさんも是非、ご自身の身近なところでプログラムマネジメントの考え方を適用し、実践していただきたいと思います。 |