PMプロの知恵コーナー
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ゼネラルなプロ (106) (実践力)

向後 忠明 [プロフィール] :8月号

 前月号ではプロジェクト実行中においてチームメンバーが惑わないようにリーダとしてチームの進むべき方向を示し、結束力を高め、相乗効果や生産性の向上を高めるための行動について話をしました。

 今月号は下記の③について説明します。

プロジェクトメンバーを含むステークホルダーとの密な関係維持のための伝達、連絡そして密な意思疎通に必要なコミュニケーションが取れる手段の構築とそれを可能にする行動を取るということです。

 プロマネはステークホルダー間、異文化間、異技術間等のインターフェースで発生する問題を防止するために必要なコミュニケーション手段を維持する必要があります。

 なお、ヒューマンスキルの分野での企業活動におけるコミュニケーションをビジネスコミュニケーションと呼び、人間の心理的な状態や感情、集団の規模や雰囲気等に影響して作られる状況をコミュニケーションクライメート(Communication Climate)と称します。
 プロジェクトマネジメントにおいても良好な人間関係を保ち、組織を活性化し、プロジェクトの目的を効果的に達成する上で、公的なコミュニケーションと非公式コミュニケーションの双方を使い、より良いコミュニケーションクライメートを作り出す必要があります。
 このようにコミュニケーションには公式・非公式コミュニケーションの総合的処理によりプロジェクトの堅実な遂行が可能になります。
 なお、公式コミュニケーションには文書による場合と話し言葉による場合の2棲類があり、また非公式なコミュニケーションにも言語の場合と非言語の場合の各々2種類があります。

 それぞれのコミュニケーションの関係を示すと下図に示すように3つの形態があります。

コミュニケーションの関係:3つの形態

1. 公式なコミュニケーション
 公式コミュニケーションには文書と話し言葉によるものがあります。
 ビジネスやプロジェクトにおいては図面、文書、手紙、ファックス、そして各種確認書(電話確認書や各種情報源)などに関するものが公式なコミュニケーション媒体です。
 公式なコミュニケーションにはすでに述べたように下記の2種類があります。

文書によるコミュニケーション
 文書によるコミュニケーションは大きく2つに分けられます。
 その一つが外部コミュニケーションであり、製品情報、引き合いに関する図書、契約、仕様書、苦情処理、そして会議や通信手段や通信手段による仕事上のやり取りを示す記録等です。
 もう一つが内部コミュニケーションとしてのプロジェクトメンバーや関係組織と会議や通信手段による連絡票または会議などによるデータのやり取りなどです。

 文書によるコミュニケーションンの中で最も重要なものはプロジェクト関係者の業務、責任、及び相互の関係の取り決め、そしてプロジェクトの情報・データのやり取りを記述する「コミュニケーション計画書」です。

話し言葉によるコミュニケーション
 話し言葉はビジネスやプロジェクトにかかわらず最も基本的なコミュニケーション媒体です。
 話し言葉によるコミュニケーションの公式化には会議議事録や電話確認書等があります。

 しかし、文書化されない話し言葉によるコミュニケーションの公式化は面倒でありまた難しいものです。たとえ信頼のおける相手や緊密な関係の口約束でも後で「言った、言わない」の話となりかえって問題を大きくすることあります。
 そのためには面倒でも必ず文書化を行っておくことが必要です。また、昨今のビジネスのグローバル化において日本語以外の言語でのコミュニケーションの機会も増えてきていることを考えるとさらに文書による確認ということが必要となってきています。

2. 非公式なコミュニケーション
 非公式なコミュニケーションには言語によるコミュニケーションと非言語によるコミュニケーションがあります。

言語によるコミュニケーション
 雑談やジョークそして仲間や懇親会などでの会話や励ましの言葉などはコミュニケーションクライメートの醸成には多いに役立つものです。
 組織内の人間関係を助長し、良い雰囲気を醸成し、良好な業務遂行を達成するにはそれぞれに関係者の行動と共に言語によるコミュニケーションが重要なものとなります。
 コミュニケーションクライメートの醸成は、組織が大きくなればなるほど難しくなるが、その一方では重要なものとなります。
 特に組織の文化、公式、非公式の人間関係や影響力、円滑なコミュニケーションなどにおいてのプロマネの関係調整力にも大きな影響を与えます。
 また、ビジネスのグローバル化に伴い、プロジェクトでは各種用語や外国語などが必要となるが、これらを使用したコミュニケーションには特に言語によるコミュニケーションで重要な発信能力、受信能力、理解能力といったものも必要となっています。
 しかし、昨今のインターネットやメールまたはラインなどでの非公式コミュニケーションは連絡手段としては役に立ちますがコミュニケーションクライメートには余り役に立ちません。やはり面対でのコミュニケーションが大事だと思います。

非言語によるコミュニケーション

 非言語のコミュニケーションとは言葉ではなくそこから相手の言わんとしていることを以心伝心で読みとる印象や感覚であり、文化、行動、態度などに基づくコミュニケーションです。
 これはコンテキスト(Context)という概念で定義されているが、コンテキストの共有の度合いによってコミュニケーション方法が変わってきます。
 非言語コミュニケーションの解釈は、民族や文化、社会などが異なる場合、必ずしも同じであるとは限りません。
 文化や地域によって、非言語コミュニケーションの頻度や形式はさまざまな種類が存在するということも覚えておくことが肝要です。

 例えば、いつもより目を合わせないしぐさは、「シャイ」、「退屈している」、「懐疑的」、「非同意的」など、複数の感情を意味するといわれています。逆に、いつもより目を合わせると、「攻撃的」もしくは「誠実さ」という真逆の2つの感情を表します。また、胸の前で腕を組むのは、身構えるしぐさ、よそよそしい態度を表す可能性がある一方で、集中している可能性もあります。目を閉じるのも、同じく集中している可能性と、興味がなかったり、退屈していたりする可能性といった、相対する解釈を含みます。

 次にコミュニケーションをプロジェクトマネジメントの観点から説明します。

 プロジェクトにおけるコミュニケーションマネジメントとはプロジェクトの情報、収集、配布、保管、最終処理等のプロジェクトを遂行する上での各種コミュニケーション媒体に関する計画そしてその運用に関するマネジメントです。

 コミュニケーションの結果として検索しやすい状態で管理されなければならないし、そのため、文書のナンバリングは非常に大事であり、そのベースとなるプロジェクトの枠作りに必要なWBS(Work Breakdown Structure) も関連しているのでプロジェクトの枠組み設定ではこの文書管理についても考慮しておく必要がある。

 コミュニケーションマネメントにおいては大きく分けてその主なものとしては下記の2種類がある。

外部に対しての製品情報、引き合いに対する提案、契約、月例報告そして苦情処理、そして仕事上のやり取り。
内部コミュニケーションではプロジェクトメンバーや関連組織との情報・データまたは書類のやり取り。

 このコミュニケーション活動により、仕事の効率向上や情報・知識の共用等がよりし易くなりプロジェクト実行上においては上記の①及び②は非常に重要なものと考えます。

 そのためにはプロジェクト実行以前にコミュニケーションに関する取り決め(計画)をしておく必要があります。

 その代表的な書類が前にも述べた「コミュニケーション計画書」です。
 この書類はプロジェクト関係者間の業務、責任および相互の活動関係の取り決め、そしてプロジェクトの情報・データのやり取りを具体的に示したもので、プロジェクト業務をスムーズに遂行させるための手順書であり、契約書と同等に位置付けられる書類です。
 広義ではプロジェクトスタートから完了までのコミュニケーション媒体を規定する書類であり、狭義には通信連絡を主体としての応答要領を示したものです。
 そのプロジェクト計画書に示される内容は以下のような項目から構成されています。

1. プロジェクト実行中でのコレスポンデンスに関する項目
1 ) 使用言語や単位
2 ) 提出する又は提出される書類の種類、部数、あて先、及び図書番号システム
3 ) 打ち合わせ及び口答約束の処置
4 ) 図書類の承認に関する手配や方法(承認手順、識別、完成図書)
2. 各段階(要件定義、設計、調達、工事、サービス)での重要書類の規定
1 ) 報告書の作成及び報告手順
2 ) 請求書の作成及び提出手順
3 ) 変更、追加に関する手順

 以上に示すように図書類に関する規定を作成し、その後各担当に提出されるであろう書類の予測を行い図書やデータに関するリストを作成する。
 そして、これに従い図書やデータが:
何時
どこに
なんの目的で
どのような状況にあるか
 等を記録した管理簿を作成し、各書類ごとに整理及び記録、そして必要各部署に配布し、各図書及びデータのそれぞれの状況を把握する。
 また、それを各関連担当者に連絡することがプロジェクト実行中のコミュニケーションにかかわる仕事です。

以上がコミュニケーションに関する話です。

 なお、これまで下記に示すようにPMに必要な3大要素について話をしてきました。

問題や異常事態発生時での対応です。
プロジェクトのリーダとしての行動
今回のコミュニケーション

 来月からは、プロマネの知識として知っていなければならないものであるにも拘らずプロジェクトの仕事外と思われている調達、検査、輸送(海外輸送)引き渡し(検収)そして契約について話をしていきます。

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