PMプロの知恵コーナー
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「エンタテイメント論」(136)

川勝 良昭 Yoshiaki Kawakatsu [プロフィール] :7月号

エンタテイメント論


第 2 部 エンタテイメント論の本質

6 創造
●人生100年時代構想
 平成29年(2017年)9月8日、安倍総理及び茂木大臣は、「人生100年時代構想推進室」の看板掛けと職員への訓示を行った。しかしその後、その成果はあったのか?

  出典:人生100年時代構想推進室と構想会議
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出典:人生100年時代構想推進室と構想会議
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 最近、100歳まで従来と変わらず普通に生きることは年金生活では成り立たないと言われている。ならば幾らの蓄財が必要なのか? 最低2千万円? それとも1億円? などの議論がTV番組で盛んに取り上げられている。若者はTVをあまり見ないが、中高年はTVをかなり見る。そのためTVコマーシャルでは、中高年向けの投資信託の宣伝、持ち家を担保にした生活補助策など様々な「100歳生活対応案」が提示されている。

 しかし手元に投資に回せる金などない、家もない、家があっても借金がある、貯金が殆どない、そもそも金がなく、日々の生活が苦しいなど多くの問題を抱えている人達が大勢いる。この様な現状で「100年も生きねばならない」と云うこと自体が多くの人々に不安を煽る。そればかりか、漠然としていても未来に期待する「夢」を持つことさえも根底から打ち砕く。「100年時代構想」を云々する前に眼前に実存する「構造的危機(下記)」からの脱出を図るべきである。

 筆者は来年80歳になる。しかし100歳まで生きるなど一度も考えた事がない。今後も考えないだろう。何故なら「いつ死ぬか分からないのが人生」だからだ。100歳まで生きると抽象的に描き、投資や蓄財するより、大好きな、叶えたい「夢」が近未来に実現し、成功した「状況と効果」を具体的(字、絵、数字など)に仮説する。その仮説を現在まで逆算・連結させ、「今、此処で(Now & Here)」実行できること実現させ、近未来に繋ぐ事を薦めたい(夢工学の考え方)。

●日本が直面した「構造的危機」
 筆者は、著書、論文、各種記事などに約30年前から何度も、何度も主張してきたことがある。本稿でも何度かその事を述べた。

 日本は、明治維新と戦時を除き、多くの分野と階層に於いて「構造的危機」に直面した。「今のまま」で推移し、「自己改革(革命)」を断行しないと、日本は、そう遠くない将来、アジアの小国に凋落する。

出典:経済危機~財政危機~国家危機
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出典:経済危機~財政危機~国家危機
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 当初、筆者は「バカな奴だ」と軽蔑、蔑視、無視された。しかしその後、徐々にバカにされなくなり、この暗い予想が正しいのではないか言われ出した。しかし正しくても嬉しくない。この複雑な気持ちにいる現在、筆者を散々こき下ろした学者、評論家の連中は、我先と「日本の危機説」を、メディアを通じて主張している。更に「具体的に問題指摘をするが、具体的に問題解決をしない」。批判や問題指摘だけなら「子供」でもできる。子供にも劣る事を彼らは恥ずかしいと思わないのか。

 最近、筆者の「日本アジア小国論」を遥かに超える「日本国消滅論」を主張する人物が登場した。「未来の年表」と「未来の年表2」を著した「河合雅司」である。彼の論拠は「人口減少」である。それは筆者が約30年前から指摘してきた「構造的危機」を起こした根本原因の1つである。もし筆者の構造的危機を「軽蔑、蔑視、無視」せず、約30年前に「人口減少」の歯止めと「人口増」に取り組んでおれば、彼の日本国消滅論は生まれなかった。人口減少が既に加速された今となっては、「手遅れ」である。

●新・事業プロジェクト創造(New Project Creation=NPC)」の活動
 前号でPMとP2MをPMAJの技術基盤と活動基盤にする事だけでは、企業も、個人も、AI技術を核とする「デジタル・トランスフォーメーション(DX)」と今後確実に起こる「第4次産業革命」に対処できないと指摘した。対処するためには、例えば「新・事業プロジェクト創造(New Project Creation=NPC)」の活動をPMAJの活動に加えてはどうかと提言した。

 仮称「NPC活動」とは、①世の中に役立ち、企業も求める「新しい価値」を創造する活動、②その価値を活用する「新しい顧客」を創造する活動、③その顧客の活用を基に「新しい収益(売上+利益)」を創造する活動の「3つの創造」を実現させる活動を云う。

  出典:新・プロジェクトの創造
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出典:新・プロジェクトの創造
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 この活動を成功させるには、以下の事が求められる。
1 その「3つの価値」を生み出したいと云う「夢」を持っていること
2 その「夢」の実現と成功に挑戦するため「優れた発想(思考=アイデア、事業プロジェクト・コンセプト)」と「優れた発汗(行動=実現と成功への挑戦)」を発揮すること
3 その「夢」~構想~計画~建設~実現~成功までの一貫した「事業プロジェクト」を適時、適切に遂行する具体的方法論(PM、P2M、夢工学&夢工学式実践論など)」を体得し、当該プロジェクトに活用すること
4 その「夢」の実現と成功のための「在り方」と「やり方」の基本を体得させ、実践できる人材を教育・育成すること等である。

●セルフ・トランスフォーメーション(ST)の薦め
 筆者は、本稿で何度も、「創造的な経営プロと仕事プロ」に変身し、それを基に「創造的な企業」に変身することを主張してきた。この変身をSelf-Developmentよりもっと強烈な意味を持たせるため、Self-Transformation(ST)と英字名で造語した。自己変身による「自己改革」である。

 STは「デジタル・トランスフォーメーション」より遥かに重要な意味を持つ。自己変身による「自己改革」を断行すれば、道が拓かれるからだ。日本が構造的危機に直面しながら「自己改革」を断行しなかったから今日の国家的危機に突入し、将来、国の存立を危うくしているのだ。その逆の「自己改革」を断行すれば、AI技術が幾ら進化しても、激しい「第4次産業革命」が到来しても、個人、企業、国は成長し、発展できるだろう。

 筆者は、前号で「一個人として、一企業として、そろそろ覚悟(意思決定)を決め、挑戦(行動)しようではないか」と呼び掛けた。その覚悟と挑戦こそが自分自身のためになる。それだけではない、家族のためにも、会社のためにも、社会のためにも、日本のためにも、そして世界のためにもなる。

●筆者に相談に来る人達への訴え
 筆者は、現在、「経営コンサルタント」をしている関係から、大企業や中小企業に働く多くの若手社員(男女が半々)、ベテラン管理職社員(女性が一部)から、また会社を経営する多くの社長(役員)から、様々な「経営相談」や「業務相談」を受ける。

 筆者は、彼らからの相談に助言をする時、以下の事を伝えると共に、「自己変身」による「革新的(革命的)な自己改革」を実践することを薦めている。その一部を紹介したい。

出典:自己変身による自己改革
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★AI仕事ロボット
 周知の通り、AI技術の超進化で「AI仕事ロボット」に我々の「職」の半分以上が確実に奪われる。弁護士、公認会計士などの「士業」の専門家も、医師も、医療技師などもその例外ではない。しかし人間はロボットによって単純反復作業から解放され、楽になり、より創造的仕事ができる。これがAI技術の良い、歓迎される側面である。

 しかし創造的な仕事ができない人間は、どうなるのか? 「職」を外される、「首」にされる、自ら「辞職」せざるを得なくなるなどの険しい道しかない。この様な人間はAI仕事ロボットが普及している時代に失業すると再就職は極めて難しくなるだろう。何故なら簡単な仕事、熟練を要しない仕事、創造的でない仕事は全てロボットがやっているからだ。

 この様な最悪の事態を避けるには、AI技術者になるか? AI技術応用技術者になるか? 創造的な経営プロと仕事プロになるか? その準備行動を始める事である。筆者は技術の進化に振り回される前2者の「技術者」になるより、最先端技術を導入・活用し、既述の3つの価値を創造し新しい経営を生み出す「創造的な経営プロと仕事プロ」になることを薦める。

出典:AI仕事ロボット
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出典:AI仕事ロボット
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★管理職のポストの激減
 AI仕事ロボットの普及は、「職」を半減させるだけでなく、管理職のポストも半減させる。最低でも50%、最高では70%まで消滅させるとの予測がある。管理職ポストが削減されることは、昇給や昇進の機会が極めて狭まることを意味する。

 社長や役員から「命令された事だけを処理していた管理職」は、今迄はそれなりに評価されてきた。しかし命令された事だけしか出来ないが、その命令に一切の文句を言わず、24時間、365日働き続け、しかも100%の成果を出す「AI仕事ロボット」が今後、職場に出現する。その一部が出現し、日本の某企業ではAI仕事ロボットを「社員」として扱う検討までしているのである。

 その様なロボットを部下にしている社長(役員)は、命令された事だけしか処理せず、それ以外の事を何もしない。まして改善提案など一切しない「管理者」や「社員」を見て、どう思うか? 如何に評価するか? 答えは明白である。社長(役員)は、管理者や社員を評価する時、彼や彼女がロボット以下の存在か? それ以上の存在か?を評価する。その様な時代は、早くて10年以内に、遅くて20年以内に到来する。

出典:社長、管理者、社員
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出典:社長、管理者、社員
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★筆者が経営・業務相談以外に受けた個人的な相談
 「人生100年論」の是非はともかく、これからの厳しい時代、 日々の仕事に精一杯頑張っているサラリー・マン&サラリー・ウーマンは、会社の中で、社会との関係で、何を目指して働けば良いのか? 若い社員は今、何をすべきか? 管理者は今、何をすべきか? 近い将来、定年を迎える社員は、定年後の仕事や生活を如何に想定するか? 定年前の在職中に何をすべきか? 仕事に「やり甲斐」を持ち、人生に「生き甲斐」を持つには具体的にどうしたら良いか? 企業経営者は個人として何を最も重視し、何を目指すべきか? 日本の将来に明るい未来はあるのか?

 以上の質問は、大企業や中小企業に働く多くの若手社員、ベテラン管理職社員、会社を経営する社長(役員)から様々な「経営相談」や「業務相談」を受け際に、個人的に受けた質問である。

 これらの個人的な質問は、多くの読者にとっても関心が事柄であろう。しかし筆者は、今月号から「創造」の章を終えて、創造論と創造技法以外の「課題」をエンタテイメント論の観点から論説を開始する予定であった。

 しかし上記の質問に答えず、先に進むことは、読者の期待を裏切ることになる。そのため今回も先に進まず、次号で上記の質問に答え、具体的な処方箋を述べることにしたい。

つづく

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