図書紹介
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メモの魔力  The Magic of Memos
(前田祐二著、(株)幻冬舎、2019年4月5日発行、第8刷、252ページ、1,400円+税)

デニマルさん : 7月号

今回紹介する本は昨年12月末に発売された。アマゾンランキングでも人気を集めて、たちまち増版され、現在でも書店の店頭で平置きされている。その人気の原点を探りながら、この本を紹介してみる。特長は、著者の経歴から窺えるバイタリティと先見性と社交性ではないか。大学卒業後、外資系投資銀行(USB証券)に入社し、翌年ニューヨークで機関投資家向けのエクイティーセールス(投資企業への出資)を担当し、更に資金運用のファンド・アドバイザーとして活躍。帰国後、DeNA社にヘッドハントされ、現在SHOWROOM社の社長と紹介されてある。この輝かしい経歴の中で小学生の頃に両親を失い、ギターの弾き語りの路上ライブで生計を立てたことが書かれてある。著者は、その頃から「お客の集め方」や「お金を払って貰う秘訣」等をノートに色々メモしていたという。更に、就職活動時では、自己分析を深めるメモをノートに書き留めて、最終的には30冊にもなったと書いている。こうした地道な活動の中から、メモの持つ魔力を感じ、自らそれを実践しながら夢の実現を目指していて、その結果を本書に纏めたと綴っている。著者のバイタリティについては、先の小学生時代の路上ライブの集客メモからも一旦が窺えるが、「メモの魔力」を説く考え方から、アプローチ、実践方法、その結果のフォローに到るまで、全篇を通じて随所に溢れている。中でも、特別付録の自分を知るための「自己分析1000問」は、圧巻である。自己分析をする大きな説問が10項目あり、幼少期から現在と未来に区分した中項目には、それぞれ10から30の説問があり全部で100問となる。その大説問が10項目あって1000問となる。同じ説問でも年代や状況によって答が変わることもある。こうした多面的なアプローチで自己分析すると、自然と自分の本心があぶり出されるだろう。精神分析でも企業調査でも、同じ様な説問が何回も出されているのに近い。自分自身を冷静に分析する方法としては、有効ではなかろうか。最終的に、その説問の回答を誰が評価するのかが問題である。機会があるなら、その評価マニュアルを見てみたい。さて、著者は話題の配信アプリのSHOWROOMの社長であるという。そのホームページには「誰でもスターになれる仮想ライブ空間」と書かれ、生配信を視聴出来るLIVE配信アプリと紹介されている。本書にも、メモから生まれたビジネスであると紹介されてある。このSHOWROOMアプリを使って、パフォーマンス内容を視聴・配信が出来る。そのLIVE配信を見る楽しみと自分がエンターテーナーとして、お金も稼げるし夢の実現も可能だと宣伝されてある。このビジネスの原点が日常的なメモからアイデアの創出に結びつけたと書いている。著者が10代に描いたパフォーマンスの夢を現実のものとした。その考え方というか、生き方を本書に熱く書いている。

メモで思考を深める        ――ファクトから抽象化で転用――
この本の根幹を成すのはメモの作成を通じて自分の思考を深めて、その過程でパターン化を目指し、やるべき目標を明確化する。だから「メモの本質は、『ノウハウ』ではなく『姿勢』である」と書いている。具体的には、メモを書きまくるのだが、「メモはファクトから始まる」と定義している。ここでのファクトは、「自分の琴線に触れた事実や感情を含んでいる」。仕事で言えば顧客からの要望や解決すべき課題や問題点等からチョット気になるヒット商品や出来事等、何でもメモの対象とする。そして、そのファクトから別な内容に転化出来るかを考える。これを「抽象化」と称し、これもメモに書き込むことが重要という。

メモで夢を叶える          ――メモの言語化で夢を実現――
メモの言語化とは、自分の夢や目標をメモに書き出すことで、いわば思考の見える化の方法だ。この書く事によって脳幹の網様体賦活系を刺戟して活性化させ、思考を具体的な「言葉」から「行動」へ導く手助けとする。更に、その言葉が行動に結び付く具体的でなければ、幾ら言葉を羅列しても行動エネルギーに変化しない。先の「抽象化」がこの事である。著者は、あらゆるメモ化した具体的な事象に対して、その『本質は何かを見抜く』ことと書いている。言い換えれば、夢を実現化するプロセスを俯瞰する言葉を探し出す力を養う事か。メモを書きまくり共通する何かを求め、その本質を探す過程で抽象化が可能となる。

メモは生き方である         ――メモを習慣化して行動する――
この本は、全篇に亘ってメモの魔力を説いている。誰でも簡単にメモを書くことが出来るし、そのメモ内容が終ったら目的を達したので廃棄される運命にある。著者はそのメモを捨てないで、もっと深掘りして体系的なプロセスとして活用する方法を書いている。その基本であるメモの作成段階から目的のプロセスを明確にする為に役立てる様にメモを活用する。だから、メモの本質は「ノウハウ」ではなく、メモを作成する「姿勢」が大切であると書いている。メモは「努力」して作成するのではなく、ビジネスを成し遂げる重要なプロセスであり「習慣」であると位置付けている。それとメモ作成には、ある程度の訓練とスキルが求められる。メモ作成によって鍛えられる能力とは、①知的生産のスキル、②情報伝導のスキル、③傾聴力のスキル、④構造化スキル、⑤言語化スキル等であると書いている。中でも言語化スキルと構造化スキルは、ある程度の積み上げが必要であろうと思われる。
メモの作成を生活の一部として日常化して生活の中に溶け込ませる事で、著者は「メモは生きること」と書き、『一行のメモが、一生を変える』と纏めている。筆者は、このメモ作成の「着想と習慣化」から、自分を奮い立たせる「言語化」がメモ魔力の原点と理解した。
メモの持つ可能性と魔力と将来の夢を実現したいと思う方は、是非ご一読をお勧めしたい。

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