今月のひとこと
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 自虐の言葉 

オンライン編集長 深谷 靖純 [プロフィール] :5月号

 令和という時代が始まりました。平成を総括するTV番組や書籍が溢れ、時代が替ったということを実感させられています。改元対応で長い連休となった方も多いと思われますが、どのように過ごされているのでしょうか。溜まった本を読みふける、映画(あるいは溜まった録画)を見まくる、旅行や買い物など景気対策にいそしむ等々、お疲れ様です。編集子は東北方面に出かけて令和最初の花見を楽しもうと思っています。

 「跳んで埼玉」という映画がヒットしています。埼玉県やその周辺の都県を揶揄する自虐ネタ満載の映画ですが、埼玉県民に一番受けているとの噂だそうです。「関西出身なので埼玉県の位置も良く分からない」と言っていたタイガースファンも楽しめたと聞こえてきます。笑いの要素の一つとして人を貶めて快感を得るというところがありますが、埼玉県民自身が喜んでいるのですから、罪悪感なしに楽しめたということでしょうか。
 笑いに持っていくというほどではないけれども、厳しい状況を揶揄することによって、現状打破のエネルギーにしようとすることがあります。例えばプロジェクトマネジメントを学びプロジェクトの経験も多いプロマネが「KKDでやっています。」と呟くことがあります。「KKD」という言葉は、PM関係者の間では、経験と勘と度胸だけでプロジェクトを進めようとする古いタイプの管理手法を、やや非難を込めて使うことが多いようです。しかしながら、プロジェクトマネジメントをしっかりと実施しても壁に突き当たり、プロマネが足掻くという局面は決して少なくはありません。そんな時、どのような打開策を採るかはプロマネ次第ですが、状況を冷静に分析する第一歩として自身やチームの状況を「KKDでやっています。」と茶化してみるということも有効な手段だと考えられます。
 PDCAサイクルをPlan(計画)、Delay(遅延)、Cancel(中止)、Apology(謝罪)だと揶揄する向きがあると朝日新聞4月3日の「折々の言葉」で紹介されていると教えてくれた方がいます。CをChange(変更)とする説もあるようで、こちらの方が多くのPM関係者の実感に近いかもしれません。プロジェクトに取り組む都度、毎回謝罪を繰り返すPDCAサイクルにはまっているというプロマネがいないわけではありません。「折々の言葉」では反省を促すような文章が続きますが、DelayとかChangeという言葉が使われたのは反省しなければならないような状況だったのでしょうか。
 揶揄するという行為自体が悪ふざけに過ぎないにも拘らず、それを基に正論を展開するという手法はかなり変則だとは思いますが、理解を促すという面では有効であり決して間違ってはいません。ただ、揶揄するという悪ふざけを誰がどのような状況で行ったかによって、行為の意味が大きく異なってくるということを忘れないようにしたいと思います。もし、プロジェクトの壁にぶつかって必死に足搔くプロマネ自身が「遅れが収まらない」とか「仕様変更の嵐だ」と呟いていたとすれば、反省せよと迫るのではなく、どのように励ませばよいかを考えるべきではないかと思います。

以上

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