グローバルフォーラム
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「グローバルPMへの窓」(第133回)
じっと我慢の大型連休

グローバルPMアナリスト  田中 弘 [プロフィール] :5月号

 筆者には、海外の国の中でとくに親しくている国がある。現在関係が続いているのは、北からロシア、ウクライナ、フランス、そしてセネガルとなる。そのなかでも、ウクライナと西アフリカのセネガルは、所属する大学があり、研究者の協力者もおり、ホームステイできるところもある。この二カ国で最近大統領選挙が行われた。
 
 まず、2月に行われたセネガル大統領選挙では、現職のマッキー・サル大統領が圧勝した。セネガルの大統領選挙はアフリカ諸国のなかでは一番民主的に行われると定評があり、今回も選挙不正やこれに伴う国民の動乱もなく、粛々と実施された。
 
 筆者は、マッキー・サル大統領が掲げ、順調に展開中のPlan Sénégal Émergent(PSE: 躍進セネガル計画)という2035年に向けての国家発展プログラムを、その政策理念と現実性ゆえに高く評価している。PSEは、① 経済発展と成長のための構造改革、② 人材開発・社会保障の整備・持続的発展、そして③ ガバナンス・教育・平和・治安、の3つの改革政策を柱としている。これを受けて筆者が所属するCASR3PM大学院大学は、PSEを推進するための高度人材育成を謳っている。筆者はPSEへの思いを同国でのプレスインタビューとか報道番組出演でアピールしていることもあり、2014年に面談できた大統領最側近であるアブドル・アジズ・タルPSE担当大臣(当時)のお勧めもあり、サル大統領に、大学院関係者が作成した筆者のセネガルでの活動を紹介したプロモーションビデオを提出させていただいたこともある。昨年4月には、PSEの第1の柱と第2の柱の実現を主管するマリー・トウ・ニアン高等教育・科学・イノベーション大臣との面談もでき90分にわたりPSEにつき双方向プレゼンテーションと意見交換を行った。

セネガル大統領に提出したプロモーションビデオ セネガル大統領に提出したプロモーションビデオ
セネガル大統領に提出したプロモーションビデオ

 筆者がサル大統領に拝謁かなうことはないであろうが、セネガルが、PSEが謳っているようにナレッジエコノミーの中で発展を遂げることができるように、できることを以て貢献し続けたい。
 
 一方、4月21日に実施されたウクライナ大統領選挙の決選投票では、暫定集計で約75%対25%の記録的な大差で現職のペトロ・ポロシェンコ大統領が敗退し、俳優出身で41歳のボロディミル・ゼレンスキー氏が次期大統領に選出された。旧ソ連邦が崩壊し、ウクライナ国が独立して以来、経済運営が順調にいった政権はなく、政権の腐敗体質も常について回っていたウクライナで、政治経験がない新大統領に政権運営ができるかどうかは未知数である。なんとなく、かつて米国で ABJ (Anybody but Lindon B. Jonson: リンドンB. ジョンソン以外であればだれでも)という嫌政権運動が起こったことを思い出させる。
 
 ブレゼンスキー氏は、現在ほぼ断絶状態となっているロシアとの対話を復活し、ロシアあるいは親ロシア派によるウクライナ領土の一部の不法占拠問題の解決に尽力すると意欲を表明しているが、強力なプーチン大統領とどのように渡り合うのであろうか。「ウクライナとロシアのパートナー達との合同フォーラムを再び開催したい」、「キエフ(ウクライナ)とモスクワの間を寝台特急で再び往復したい」という筆者の切なる願いが叶えば幸せである。
 
 3月中旬に2週間の海外経営者研修を終えてからは少しまとまった歯科治療をしながら新年度の活動の仕込みと、やり残しとなっている論文作成を行っている。研究者生活が13年、うち5年は兼業研究者、であるので、研究者に必要とされる査読付き論文数は、2本/年または1本/年(兼業の場合)であるので、19本となるが、これまでの採用論文は18本(長編論文の分割掲載をカウントすると21本)であるので、2019年度中にあと3本採用されるとそれなりとなる。直近では、ロシアのPM科学ジャーナルに採用された「セクター別プロジェクトパファーマンスの洞察」という巻頭論文(ロシア語訳)のパートⅡが4月3日号に掲載され、フランス人、イタリア人教授との共同研究論文「石油・天然ガス産業におけるプロジェクトマーケティング:EPC企業の組織能力とソフトシステム(エコシステム構築)能力」と題するPM科学ジャーナル狙いの論文が査読中である。このあと、日本の大学院での、プロジェクト&プログラムマネジメントをコアとするプロジェクト・ベースト・ラーニング(PBL)による大学院生・社会人・研究者融合教育プログラムの開発に関するアクション・リサーチ論文を担当教授と共著で執筆予定である。
 
 毎年4月と5月は海外に出かける月であるが、今年は歯の再建が最優先で、じっと我慢となった。アクティブシニアのアクティブ度の指標は、「きょういく」と「きょうよう」、つまり「今日行くところがある」、「今日用事がある」といわれているが、しばし、封印である。
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