例会部会
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【第243回例会 報告】

KP 田邉 克文 : 4月号

【データ】
開催日: 2019年2月22日(金) 19:00~20:30
テーマ: 「システムズエンジニアリングって?」
~日本のSEのためのシステム開発アプローチの再考~
講師: 齊藤 善治 (さいとう よしはる) 氏
(独)情報処理推進機構 社会基盤センター
イノベーション推進部 エンジニアリンググループ 研究員

【第243回例会 報告】

IoT等の進展により、システムの多くが多様な構成要素を含んだ複雑なものとなってきている。そのような中で注目されているシステム開発のアプローチである「システムズエンジニアリング」の特徴を、IT業界のSEの視点でわかり易くご講演いただいた。

【講演概要】
近年の技術進歩によりいろいろなことができるので、従来想定されていないモノ・コトがつながるようになった。そのことがビジネスチャンスである半面、リスクも広がり、今まで関係なかったところに迷惑をかけたり、かけられたりするようになりつつある。このような環境では従来のやり方で対応できない。そこでシステム開発の新しいアプローチと手段を体系化した「システムズエンジニアリング」が提唱された。従来のシステム開発は、顧客に言われたものを言われた通りに作ればよかったが、これからは全体を意識した広い視点で役に立つシステムを作ることが求められるようになっている。

◇システムズエンジニアリングとは・・・
「システムを成功させるための複数の専門分野にまたがるアプローチと手段である」
ここで言うシステムはソフトウエアだけでなく、ハードや人間系を含むすべての環境をシステムと捉えて考える必要があり、システムの一部のソフトだけをうまく作っただけでは全体としては機能しないものになる可能性もある。

◇システムズエンジニアリングの思考過程
How to make(どのように作る)、What to make(なにを作る)だけではなく、
Why(目的志向)との整合性が重要。(=全体を俯瞰する。)

Needs ⇒(要求分析)⇒ Intent ⇒(設計)⇒ Function
(出発点の決め方が重要で、複数のアイディアから思考を巡らし評価して選択する。)

<冷蔵庫を例にすると>(太字が選択されたもの)
食べものを無駄にしない …→・腐るスピードを落とす →冷やす
食べ物を腐らせない   →防腐剤使用
  …→・早く食べさせること →消費期限管理

◇システムズエンジニアリングの4つのポイント
 どんな開発にも適用できる上流から使える考え方のポイントを示す。
・目的志向と全体俯瞰 ・多様な専門分野を統合
・抽象化/モデル化 ・反復による発見と進化
 これらの観点は経営者の方にシステムズエンジニアリングの重要性を理解いただくのにも役立つ。

◇システムズエンジニアリングの適用事例
 『発展途上国で乳児の死亡数が年間400万人に達している問題』
  →新生児向けの保育器の開発・普及を行った事例
目的志向/全体俯瞰の考え方から、地域の事情を配慮し、保育器の熱源として現地で調達可能な自動車ライトを部品とするアイディアを選択し、普及に成功した。

◇システムライフサイクルプロセス
 システムズエンジニアリングの理論的拠り所として国際規格ISO15288のシステムライフサイクルプロセスがある。パイロットプロジェクトではこのシステムライフサイクルの考え方が有効であったとの紹介があった。

【筆者の所感】
講演の中でも話があったIoTシステム等の普及により私たちSEも今後より複雑な関連性を持ったシステム開発に直面する機会があると想像され、そのような時にシステムズエンジニアリングの考え方が有効であると聞き、今後も興味を持ってウォッチしていきたい。また、政府からもシステム思考/全体最適化というキーワードを使った関連資料がいくつか公開されていることを紹介して頂いたので、参考としたいです。

最後に、我々と共に部会運営メンバーとなるKP(キーパーソン)を募集していますので、ご興味をお持ちの方は事務局までご連絡下さい。

以上
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