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「日本再生“アベノミクス”を成功させるために何が必要か」 (61)
高齢化社会の地域コミュニティを考えよう (37)

東京P2M研究会 渡辺 貢成: 4月号

Z. 今月は国が目指している地域開発における価値創出とは何か。その価値はどのようにして見つけられるのか。簡単な方式があるのか。あるのなら何故活用させないのか。このような話を簡便にしてほしい。
I. 地域開発の原点に戻ってお話しします。地域開発と称するものはあらゆる分野にわたっていますので、話を広げると、収集がつかなくなります。そこでこれまでお話ししてきた町を例に話を進めます。
( 1 ) 町が実施したこと。
町は新しい地域開発とは何かを識者を集めて検討し、4つの基本目標を立てた。
基本目標1: 安心な暮らしをまもり、住み続けられる地域をつくる。
基本目標2: 当町の強みを活かした魅力あるくらしを提案し、新しい人の流れをつくる。
基本目標3: 若い世代の結婚・出産・子育ての希望を叶え、子育てを楽しめる環境をつくる。
基本目標4: 当町で安心して働き、仕事を生み出しやすい環境をつくる。

( 2 ) 再生協議会が実施したこと
困難な内容のテーマは今時点では実施しない。経験のあるテーマに絞る
5つのテーマを採用した
友情の山部会: 地域と小学校との連携(コミュニティ・スクール化)、やまゆりの育成と社会へのPR、(基本目標2)
文化・イベント振興部会: (基本目標2)
地域福祉部会: 地域ケアシステムの構築、高齢化に対応した地域福祉(基本目標1)
古民家の再活用部会: (基本目標1)
県住宅供給公社部会: 共同農園、共同里山運営、コミュナルダイニング、地域ライブの開催(基本目標2)
公園・散策路部会: 公園の整備、住民の健康向上と観光資源開発としての散策路建設運営(基本目標1)
再生協議会の基本的姿勢:大それた提案でなく、直ぐできるところから始め、リスクの高い提案をしないこと。

( 3 ) 国が求めていた再生協議会の発想
1 ) これまでの経験から、再生とは収益をあげる内容が必要であると気が付き収益を上げる必要性を述べている。そして“アベノミックス”が実施された。
2 ) この“アベノミックス”は変化し、研究開発的要素プラス景気対策としての役割が多くなった。それが現在の景気の源泉となっている。
3 ) 国が行う研究開発に対する常識は今までにない提案が原則で、自立再生に貢献できる内容であることである。大枠の予算は全体像を見て決めるが、初年度は調査・検討程度の予算が交付される。これは予備調査的なもので、数千万円程度のものである。次年度にその成果に見合った開発予算を認められる。後はプロジェクトの進行に伴い補正予算を出すことがあるが、あくまでも補正的な金額である。
4 ) 同一案件であって、取り扱う内容テーマが異なっても、初期の規模を上回るテーマは認められていない。最初に小さな提案をすると、内容が最初の規模以下となってしまうので、国への案件は当該官庁への顔の利く人物を捕まえることが、成功の要因となる。

( 4 ) 私の提案した基本的な発想
地域再生活動とはできるだけ、経験していないところへ進出すること。
人口減少に伴う町予算の低減に伴う、住民へのサービスの低下を補う新たなサービス提供に関するもの。
提案は持続的運営管理可能性あるテーマであること。
国が求めている“アベノミックス”は単なる研究開発ではなく、景気対策的な一面があるので、幅広いアプローチが大切である。
今まで実施したことのない新鮮な内容であること、更に成功の暁には発展成長がのぞまれること、内容が大きいことが求められている。

( 5 ) 私の提案に求められる『新しい価値創出』の発想とは何か
現状分析:人口減少で怯えている組織は何処か
i. 当町(人口減少で予算の削減が強いられている)
ii. 県住宅供給公社(既存アパートの空き家対策が困難になっている)
iii. 幼稚園群、保育園群(子どもの減少で、経営的危機が迫っている)
iv. 町傘下の老人会、社協、自治会、各種会(子供会等)各組織は縦社会的に機能しているが、各組織は高齢化とメンバーの減少で、相互乗り入れが必要になっている。
各組織からの価値ある提案とは:
公社はリフォームし、最適価格で「共稼ぎ家庭」、シングルマザー」を住居人にする工夫をすること。
保育園は新生児を受け入れる体制を整備すること。
幼稚園は独自の価値提供ができるか検討すること。
老人会は保育園児の送り迎えに全面協力できること。
町行政は出産による人口増加にたいし、経済的支援を行うこと。
出産願望の共稼ぎ家庭が公社のアパートを活用すること、現在の日本は各企業の残業禁止は困難である。女性社員の残業に対する対策として、老人会のババ集団が保育園の送り迎えに協力する。利用者は頻度に応じて適正な金銭的な提供を行う(新しい価値創出:無償のボランティア活動は継続する可能であるが有料サービスが実行できると新しい価値が生まれる)
各組織がそれぞれできる範囲内で支援する活動がコンソーシアム全体で行動できれば、大きな価値が生み出される。
これらの戦略的手法をプラットフォーム的価値創出戦法といます。

Z. 解説ありがとう。先月号では再生協議会の発想やその成果が記されていなかったので、Iさんの提案の素晴らしさを理解できなかった。また再生協議会のレベルの低い対応は何か、その比較がわからなかった。複数でコンソーシアムを組んで人口増大に寄与することで、大きな価値創出ができ、将来に向かって住民に大きな期待をあたえられることができたのに残念だった。
I. Zさん、解説ありがとう。私がこの案を無理強いしなかった理由をお聞ききください。このような高度な提案は仲間として協力してくれる人材があと2名は必要でした。孤軍奮闘はありえません。その点再生協議会会長はそれを見越して賛成しなかったと理解しています。
Z. Iさん、あなたの政策は町が考えたビジョンをうわまわる発想だと思う。
これは戦略家の仕事ではなくて知恵者の仕事だな。ここまで視野を広げて先の先まで目先の利く人は少ないと思う。再生協議会の幹部との戦いは簡単には終わらない気がする。そこで、今月号は話を変えて、Iさんの発想の原点を教えてもらいたい。それがわかると今後の展開の面白さが見えてくると思う。
I. 今月は再生協議会がどのように展開するかを書きたかったのですが、幹部と私との落差を知っていただくことも大事だと考えます。彼らの考えをお話しする前に価値創造に関する私なりの発想をお話しします。
Z. Iさん、読者の皆さん。面白い本が出版されたので紹介する。
東洋経済2/23号 “地方の反撃”-稼ぐ街は何が違うのか-
今週のおすすめ!北野 唯我著「天才を殺す凡人」
      -職場の人間関係に悩む全ての人へ-

内容説明: この世界は天才と秀才と凡人でできている。この種の相違を3つの「才」で表すと「創造性」、「再現性」、「共感性」という才能に置換でき、最終的に誰の中にも潜む1つの成分に着地できる。『天才は創造性を、秀才は再現性を、凡人は共感性を武器にする』。そして『天才は秀才に対し「興味がない」が、凡人に対しては以外にも「理解して欲しい」と思っている。反対に凡人から天才への気持ちは冷たいもので、理解できないから排斥しようとし、秀才を「天才と思い込む」。さらに秀才は、天才に「妬みとあこがれの相反する感情」を抱き、凡人を「心の中で見下す」』。この構造において3者間のコミュニケーションの断絶が起きてしまった時、全員に悲劇が訪れる。

この町の再生協議会は幹部の反省のないまま、「天才を殺す凡人」の典型的事例に落ちいった感がある。しかしIさんに話してみると、私の人生はまさにこの本の通りです。成功させるには3人の仲間がいない限り周囲が認めてくれないというものでした。今回Iさんは将来を見据えて、有望な若手を町会議員の新人候補として立候補させ、後援会会長やサポーターの熱心な努力で4位当選が決まった。しかし、若手が無謀に議会で暴れることのないように、これからの在り方を指導し始めた。この内容も面白いのでこの後紹介したい。
しかし、この後援会のサポーターは再生協議会に関心が薄いので、Iさんは引退を決めた。Iさんの経歴はすばらしい。Iさんによると成功事例は、Iさんの案を認めなかった経営陣が失敗した後に修復してきた事例ばかりだ。
華々しい過去の事例をこのエッセイで述べることではなくて、失敗から成功に至る種々の手法をわかりやすく提案するのが彼の希望であったので、紹介は差し控える。

今月号は再生協議会とIさんの相違を説明したことで、コトの成り行きを理解してもらえたと思う。
しかし、読者は先月号の内容は協議会とIさんの相違の比較なして説明されたために、私は迂闊にもIさんの提案の素晴らしさの部分見落としていた気がする。読者の諸氏にお願いする。プロジェクトマネジメントより、プログラムマネジメントのよさを理解して欲しい。次に「価値創出とは何か」を再度理解して欲しい。
「モノづくりの価値創出」と「コトづくりの価値創出」はことなり、まず問題があり、この問題をどのようにして課題化するかと考えるのが第1である。
課題化する対象が複数あればその調整が面倒であるが、逆に創出される価値が複数となり、1社ではできないことが数社で容易になる。数社にならないと価値がでないと考えると、プラットフォームマネジメントは価値の高い価値創出手法であることが理解できる。
更にお願いしたいことは先月号の解説を再読して欲しい。

以上

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