PMプロの知恵コーナー
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「エンタテイメント論」(133)

川勝 良昭 Yoshiaki Kawakatsu [プロフィール] :4月号

エンタテイメント論


第 2 部 エンタテイメント論の本質

6 創造
●人類の歴史=技術の歴史
 人類の長い歴史の過程で発見され、発明され、活用された技術は数えきれない。我々の祖先は、人も、動物も恐れる「火」と正面から向き合い、「火」を活用する技術、そして自らの手で必要な時に「火」を起こす技術を生み出した。その時、「人類の真の歴史」が始まったと筆者は考える。

 人類は、その後、進歩を遂げ、農耕技術、羅針盤技術、航海技術、火薬技術、印刷技術、蒸気動力技術、電波活用技術、飛行機技術、望遠鏡技術&顕微鏡技術、コンピューター技術など数多くの技術を生み出した。そして新しい、優れた技術が誕生し、活用される度に、人類の歴史が塗り替えられてきた。これらの人類の歴史は、換言すれば、「技術の歴史」でもある。この技術の歴史は、人間が持つ身体的機能を「増幅拡大」させ、人間と「融合」させてきた歴史とも言える。

出典:技術の歴史 history+of+technology+images&tbm 出典:AIと人間の融合 ai+images&tbm=isch&source
出典:技術の歴史
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出典:AIと人間の融合
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 現在、我々はAI技術を手にした。AI技術は過去の技術とかなり異なる様相を呈している。コンピューター技術は人間の頭脳の働きの一部を担った。しかしAI技術は、一部を担うどころか、深層学習の力を駆使して、身体の機能の内部に侵入しつつある。具体的には人間の頭脳の思考機能、目や耳など認識機能、手足の運動機能、そして内臓機能などを信じられないレベルまで増幅させ、拡大させるだろう。

 また病気や事故などで身体の機能の一部を失った場合でも、それらを完璧に補完する様になるだろう。その結果、「フランケンシュタイン博士の怪物」の様な醜い姿ではなく、もっと美しい姿の人物に生まれ変われるのだ。

●AI技術の進化とDXによる未来社会
 AI技術は、身体の機能の増幅拡大だけでなく、経済的、産業的、事業的、社会的、国家的な機能も増幅拡大させるだろう。AI技術とデジタル・トランスフォーメーション(DX)による激動は、近い将来、国家の壁を崩し、本格的なグローバル化が起こるだろう。その片鱗は既に始まっている。

出典:DXのイメージ画 digital+taransformation+imagespng&action
出典:DXのイメージ画 digital+taransformation+imagespng&action

 前号ではAI技術を活用し、DXをやり遂げる企業や個人は、新時代に生き残り、発展すると述べた。一方それに適合できない企業は消え去り、適合できない個人は職を失うと述べた。

 しかし筆者は、AI技術の進化が人間社会に「負」の効果(ヂィストピア)だけをもたらすとは考えていない。従ってAI技術の進化に適合できない人物は、誰しも最悪の状況下で生きていかねばならないとは考えていない。
 
 人類の長い歴史の過程で多くの新しい技術が生まれ、新しい仕事が生まれ、新しい企業が生まれた。その一方で多くの企業が消滅し、多くの職が無くなり、失業者が溢れた。しかし新しい企業が生まれ、発展し、新しい産業が生まれた。その結果、以前に増して新しい仕事が生まれ、新しい職が増えたのである。それによって多くの失業者は救われたのである。

 AI技術によって企業が消滅しても、職が奪われても、AI技術によって新しい仕事が、職が生まれるのである。この事は人類の歴史が証明している。AI技術が職を奪う側面は正しい。しかしAI技術は人間のシンドイ、面倒な、嫌な仕事を、シンドイとも、面倒とも、嫌がらず、おまけに昼夜を問わずやってくれる側面を忘れてはならない。

 そして「創造的な経営プロと仕事プロ」こそ、AI技術をより活用し、より「優れた発想」を行い、新しい価値を創り出す企業と社員を育てて欲しい。

●AI仕事ロボット
 AI技術を装備した「AI仕事ロボット」は、既に実用化され、多くの職場、工場で働いている。今後その活動領域は広がり、その仕事の質も高まるであろう。その結果、人間の仕事が楽になり。人間でしかできない仕事だけを人間が担う様になる。AI仕事ロボットを全面的に活用することは、ひょっとすると最も確実な「働き方改革」になるかもしれない?

 AI技術は「数学と統計と確率」の3要素で成り立っている。まさしく発想理論の観点からは「理性的機能」を高度に果たす技術である。しかし現段階では人間の脳のことは殆ど分かっていないためAI技術で感性機能を果たすことは不可能と云われている。しかし「感性的機能」に疑似した機能を果たす事が出来れば、AI技術は一段と進化することになる。

 ちなみに後述する「デック思考」は、AI技術では不可能な感性機能を究極まで発揮することを求める発想法である。

出典:AI仕事ロボット techhoot.com/wp-content/uploads 出典:AI話し合いロボット Entertainment/barbietalkjpg
出典:AI仕事ロボット
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出典:AI話し合いロボット
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●AI機能型&エンタテイメント型ロボットの生産・販売プロジェクト
 筆者の勝手な予測であるが、今後本格的な汎用性のある高度な「AI仕事ロボット」が出現するだろう。その他にAI技術に身体的機能、即ち顔、手足、体を装着した「技術・技能指導ロボット」、「スポーツ指導ロボット」、「AI学習指導ロボット」、「AI家事・料理手伝いロボット」など「AI機能型●●ロボット」が出現するだろう。更に「AI話し合いロボット」、「AI歌唱・演技ロボット」など「AIエンタテイメント型●●ロボット」も現われるだろう。

 さて最近の日本の大手企業は不祥事を相次いで起こしている一方、世界一と誇れるモノを殆ど作っていない。しかも日本の国際競争力は、往時の面影すら持たない、情けない状態になっている。

 かつて世界をリードした日本の製鐵会社、電機会社、造船会社、製紙会社などの社長に「いつまでコアー・コンピータンスに拘っているのか。新しい挑戦をしろ!」と言いたい。GAFAなどに負けない気概を持って、業界の垣根を取っ払い、「優れた発想」と「優れた発汗」を社内外に求め、社長自ら陣頭指揮を取り、「世界一」を目指した経営をやるべきだ。

 筆者は「世界一事業プロジェクト」を頼まれもしないのに企画している。その1つが「AI機能型●●ロボット&エンタテイメント型●●ロボットの生産・販売プロジェクト」である。何故か? 日本はロボット技術も、ロボット生産技術も世界最高水準にあるからだ。アイデアと技術開発の融合で実現できるからだ。

 AI技術に身体的機能を付加した「ロボット」、特に優れた「手」の機能を持つ「AI機能型●●ロボット」は、人々の仕事を助け、生活を助け、社会に貢献する。従って世界中の人々に歓迎される。電気自動車の比ではない世界的な市場を持つ。何故、日本の大企業の社長がこの事に気が付かないのか。「自分の会社は鐵を作る会社だ」、「電機製品を作る会社だ」など全くどうでもよいことだ。優れた発想をする様に社員を訓練する一方、優れたロボット技術者を日本だけなく、世界から集めればよいのだ。そうやって韓国のサムソン、LG電子は日本を超えたのである。

 もし玩具でない、本格的な「AIエンターテインメント型●●ロボット」が発明され、実用化されれば、世界中の人々に「笑いと楽しさ」をもたらす。是非、エンタテイメント事業会社の社長に頑張って貰いたい。

●エンタテイメント論と夢工学とデック思考
 筆者は、エンタテイメント論の本質として「創造」の表題で数年掛けて「夢工学」と「夢工学式発想法(★デック思考)」の理論と実例を解説してきた。何故そうしてきたか? その理由は以下の疑問に答えるためであった。

 その疑問とは、そもそもエンタテイメントとは何か? 如何なる「在り方(基本的考え方)」をすれば、世界に通用する真のエンタテイメントを創り上げ、エンタテイメント事業を成り立たせることが出来るのか? エンターテイメントの社会的意義は何か? その「在り方」を如何なる「やり方(具体的方法論)」で達成するか? その様な「在り方」と「やり方」を求めるエンタテイナー、エンターテインメント・ビジネスの経営者、その関係者は、何をすることが最も重要か?などである。

 その「在り方」には「夢工学」が役立つ一方、その「やり方」には「夢工学式発想法(デック思考=DEC Thinking)」が役立つ。特に「デック思考」は上記の様々な疑問に答えてくれるだろう。だから長年、解説してきたのである。

●デック思考(DEC思考)
 デック思考とは、夢工学式発想法の別名である。最近、この命名をした人物は、日本プロジェクト・マネジメント協会の佐藤義男・副理事長である。

 彼は、夢工学式発想法をThe Dream Enginerring based Creative Thinking(DEC  Thinking=デック思考)と簡潔に、見事に、正確に英訳した。

 この別名によって「デック思考」は、「デザイン思考」と対比され易くなり、その存在をアッピールし易くなった。それだけではない。「デザイン思考」が発想段階で活用する「ブレーンストーミング法」の限界を「デック思考」が克服し、より発想を強化させ易くした。その結果、「デザイン思考」と「デック思考」を共に活用することを薦め易くなり、「優れた発想」を生み出し易くした。佐藤副理事長に感謝している。

 一人でも多くの人が「デック思考」を活用し、「優れた発想」をし、仕事や生活などに役立てて欲しい。この発想法は、覚えるのが面倒な「発想ルール」「発想手順」「発想マニュアル」などに従うことを一切求めない。「今直ぐ、此処(Now&Here)」で活用すればよい。

 なお「デック思考」は、「畳の上の水練(発想理論編)」と「水中の水練(発想訓練編)」の両訓練を求める。適切な水泳は、理論と実践訓練をしなければ体得不可能である。発想法も技術であるので水泳と全く同じ。理論と実践訓練をしなければ体得不可能で、仕事と生活の実務で優れた発想ができない。

デック思考=夢工学式発想法の略称 デック思考=夢工学式発想法の略称

つづく

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