例会部会
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「第241回例会」報告

生越 直人 : 2月号

【データ】
開催日: 2018年12月21日(金) 19:00~20:30
テーマ: 「プロジェクトマネジメントの活用事例」
~公認会計士業務におけるPMの活用~
講師: 森 雅司 氏
森公認会計士事務所

【第241回例会 報告】
~はじめに~
 今回の例会では、公認会計士のお仕事をされながら、我々と共に日本プロジェクトマネジメント協会の活動にボランティアで参加されています森氏にご講演をお願いしました。
 公認会計士の業務にプロジェクトマネジメントを結びつけると、どのような活用ができるのか、「PM手法が実際に監査業務で実施されていること」、「個々の監査業務のみならず、多数の監査業務全体でもPM手法を活用していること」を中心に、ご自身の事例を交えてご講演いただきました。

~講演概要~
■自己紹介&公認会計士業務について
 公認会計士の本来業務(法定監査)とは、財務諸表(決算書:BS、PL、CF計算書)に社会的信用性を付与して、投資家を保護することである。
 財務諸表が本当に信頼しうるものかについて、一般投資家が判断することは大変難しい。そこで、公認会計士が上場会社について監査を実施し、適正な有価証券報告書が作成されていると監査証明を行うことによって、一般投資家が安心して株を購入できるようにしている。

■監査業務とプロジェクトマネジメント
 監査法人が行っている監査業務は、以下の流れで行われている。
1. 予備調査
2. 監査計画の立案
3. 監査手続の開始
4. 監査意見の形成
5. 審査
6. 「監査報告書」の提出

 この流れを、四半期毎にレビューを行いながら1年間かけて実施するので、PDCAサイクルに当てはめると、以下のようになる。
1. 予備調査 = 初年度のみ
2. 監査計画の立案 = Plan:1年間に1回実施
3. 監査手続の開始 = Do:四半期毎に実施
4. 監査意見の形成 = Check、Action:四半期毎に実施
5. 審査 = Check、Action:四半期毎に実施
6. 「監査報告書」の提出

 そして、監査現場での進捗管理や取りまとめといった、プロジェクトマネジャーとしての役割は主査の役職者が行っている。

 PMBOKと監査における主な活動・実施項目を比較すると、以下のように考察できる。
プロセス群
  立上げ 監査契約書・キックオフMTG
  計画 監査計画書
  実行 計画書に基づく監査業務
  監視・コントロール 各段階での審査、チーム内レビュー
  終結 監査報告書、監査役への監査結果報告、
最終MTG(来期に向けての課題等)

知識エリア
  統合M 各段階でのMTGなど
  スコープM 監査計画段階における各種スコープ設定
  スケジュールM 主に現場主査による往査日程調整
  コストM メンバーアサイン
  品質M チーム内レビュー、審査
  資源M メンバーアサイン
  コミュニケーションM クライアント、チーム内、審査員
  リスクM 主に計画時に検討、随時発生
  調達M 人手
  ステークホルダーM クライアントの中でも最近は監査役(会)と
内部監査が重視(三様監査)

■IT技術の発展に伴う監査業務への影響
 大企業の決算書をすみずみまで全てチェックすることは、実務上不可能であった。しかし、現在はIT技術の発展により、財務データを全て入手し、全件チェックすることが可能になってきた。

 将来的には、更に契約データ、計上データなどの各取引証憑も全てデータで入手し、財務データと照合することにより、全件監査(精査)が可能になると期待されている。

~まとめ~
 例会のアンケートでは、多くの方から「PMの導入事例を聞きたい」とご要望をいただいていました。
 今回の例会では、我々があまり理解できていない、公認会計士の業務でのPM導入実績を学ぶことができ、大変有意義な講演でした。特に、PMBOKと公認会計士の監査業務との比較は、面白かったと感じました。

 最後になりましたが、ご講演いただきました森氏には、大変お忙しい中、PMAJ 例会部会にご協力いただきましたこと、心より感謝申し上げます。

 また、我々と共に部会運営メンバーとなるKP(キーパーソン)を募集しています。参加ご希望の方は、日本プロジェクトマネジメント協会までご連絡下さい。

以上
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