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「日本再生“アベノミクス”を成功させるために何が必要か」 (59)
高齢化社会の地域コミュニティを考えよう (35)

東京P2M研究会 渡辺 貢成: 2月号

Z. 先月号では3つの戦略論:①従来からの経験的手法論、②プロジェクトマネジメント手法、③プログラムマネジメント手法(P2M)の話をしてもらい、今月号では最適の戦略論を聞けるということで楽しみにしている。
I. はい、その通りです。しかし、彼らから「そのような得体のしれない手法は取りたくない」という回答があり、更に我々は独自の手法で再生協議会を進めていく。君は老人会の健全化に取り組んだらいいだろう」というメールが返ってきました。
Z. それは大変な権幕だな。なぜ、そんなにかたくななのだろうか。
I. 今まで返事がなく無視されていましたが、ここでは返事があったということで、正式に回答をできる機会を得たと理解しました。そこで私は少し高飛車に出る方策をとりました。
私が何故しつこく提案しているか、その理由をお話しします。
この町では既に総合戦略をまとめあげ、ビジョンとして4つの基本目標を掲げています。私は町の基本戦略をベースに具体策をまとめることにしました。なぜなら基本目標はビジョンであって、具体化された計画ではないからです。私は真っ先に取り上げた総合戦略は基本目標3の子育ての環境整備でした。協議会の幹部は基本目標というビジョンが実施計画と勘違いして、どのように環境整備をしたらよいかわからなかったようです。
そこで次のような提案をしました。実は『地方自治体の再生というのは、ビジネスの再生より更に困難です。誰もやったことのない課題の策定が求められています。私たち専門家はこのテーマの課題策定を行ってきています。私が提案したのは、地域再生で力を発揮しているTOC(制約理論)協会の責任者から、今回『重要な論文ほど廃棄されている』という講演会(無料)の通知がありました。そこで会長と講演会に参加し、責任者との話し合いをする提案をしました。しかし、会長が立派な腹案があるなら、町長の前で私の案と発表会をしようという提案をしました。
Z. よくそこまで詰め寄ったね。回答は何だったかな。
I. 再生に関して、勉強会をつくるよう考えるという返事でした。
Z. よくそこまで踏み切ったね。そこでIさんが提案する内容を説明してくれないか。
I. 実は私の戦略を、すぐに回答をすることはしません。
先にお話ししたように、新人町会議員という武器を大いに活用する考えです。再生協議会の会長は研究会を開くといったが、内容がわからないからまだ、表面上のジェスチャーかもしれません。実は1月17日に町の老人会の新年会がありました。私は当然出席しました。驚いたことに新人の町会議員候補を4位で当選させたことが、老人会でも話題となっており、後援会長の評価が高くなっていました。そこで2月初旬に後援会の新年会を開き、町へプレッシャーをかけるための政策を練ることにしました。しかし、ここでも課題は同じです。私に対する信頼感が形成されているわけではありません。彼らも簡単に人を評価するような、やわな人々ではありません。
私の説明内容が理解できないと、優秀な論文は簡単に没になります。自分が理解できないのは論文に問題があると思いたい心理が働きます。そこで提案の仕方にも工夫をこらす必要があります。
後援会の人々に説明するのではなく、新町会議員に説明する形をとります。もっとよい説明があれば付け加えてくださいと。後援会の意見として提供したいということです。
新人町会議員は攻めの姿勢で臨むと、これも論文同様捨てられてしまいます。この説明はベテランの皆様方のご意見を多く入れたいと説明します。
わたしの立場は会長、事務局長の地位向上のためにこの資料を使っていきたいと思っています。実質的に彼らが理解できないと、何も成就できません。日本的ムラ社会は最近の厚生省問題と同じで、すべて先送り主義です。工夫がいります。
Z. Iさんの戦術はよくわかった。まず、提案内容を説明してほしい。
I. 地方自治の再生問題については多くの研究が出されていますが分類すると3つの方法で行われています。
責任者の経験を駆使して実施する手法:(再生協議会で行われている経験的手法)
プロジェクト・マネジメントの手法:総合戦略に書かれたビジョンを具現化し、複数の基本目標をそれぞれのプロジェクトで実施していく方式。ここでの課題は複数のプロジェクトごとに大切な遂行内容があるが、これが他のプロジェクトとあいいれない内容があった場合、プロジェクト同士での調整に苦労するという欠点がある。
プログラム・マネジメントの手法:総合戦略の各基本目標を課題化する方法として②に示した複数のプロジェクトでまとめあげる手法でなく、町に貢献できる集団を集めてコンソーシアムを創り上げます。このコンソーシアムの各企業はある基本目標に関連する企業です。この町で最も重要な基本目標は「子育て環境の整備」です。小学校への新入生が年々減って、30年度は20名でした。人手不足の小学校でこの人数が減っては教員の更なる削減が待っています。それだけではありません。関係地域の幼稚園、保育園が人口の縮減で経営難に陥ります。小学校だけの問題ではありません。次に困っているのが、県の住宅供給公社のアパートの空き家率が増えていることです。最近独身者相手に既存のアパートのリニューアルを行い、家賃を下げた結果、十数名の若者の入所者があり、昨年の町の人口縮減が一時とまり、町の人口は増減ゼロとなりました。
私たちの提案は県公社を中心としたコンソーシアムの設立です。コンソーシアムを大きく広げると、コンソーシアムへのメリットが増大するという効果が得られます。
仮想コンソーシアムを構成してみます。
A.再生協議会(以降協議会)、B.県住宅供給公社(公社)、C.幼稚園群(幼稚園)、保育園群、D.自治会群、社会福祉協議会(社協)、地域老人会(老人会)、空き家バンク、E.小学校と関連する団体等が考えられます。更に成功を助けるには必要に応じて関連するF.企業群の存在も出てくると思います。
Z. 面白い発想だが、こんなに多くの集団が入ると混乱を起こし成功しないよ。
I. ありがとうございます。今あげたのはこのコンソーシアムが求めているものの将来像を示すためにあえて出したものです。ご示唆に従いわかりやすく、最初は総合戦略、基本目標3に関連したテーマに絞りますと対象はA.~D.を時系列に活用する方式をとります。
Z. そこで何をしたいのかね。
I.
( 1 ) 公社が手持ちのアパートのリフォームする相手に「子育てを希望する共稼ぎ家庭」を対象に募集します。募集条件として以下の体制が必要となる。
入居者のための保育園の確保、(町と保育園が共同で確実に約束を守る)
保育園児の送り迎えや親の不在時間の面倒を実施する組織として、老人会による保育児ケア軍団を設立する。(日本企業は残業低減運動をしているが、現実は根拠のない運動で、実質的には欧米と同じように残業を減らすことができない。理由は通常業務で残業が多いのは、過去の業務データが正確に保存されていないから合理化ができていないにかかわらず、建前上で出来上がったと社会向けに報告している。しかしデータのないものをつくることはできない。結果的に企業は残業が減らなくても困らず、契約社員で代行させている。従って残業をなくすことができない)。
大切なことは企業の残業問題と関係なく、“共稼ぎ家庭”と“シルバー保育園児保護会”の関係が成立すれば当面の課題は解決される。これにはボランティアでなく、NPOの設立が必要である。
幼稚園群:対象児童の数が減少すれば、彼らに経営危機が訪れる。再生協議会は幼稚園の経営改善のための方策を提案し、最近の脳科学の発達を活用した、幼稚園の新しい教育手法を確立することが望ましい。ここではコミュニティスクールの一角に幼稚園教育がふくまれることで将来性の価値が生まれる可能性が高い。
優先入居資格者として:i.子育て共稼ぎ家庭、ii.子育て希望共稼ぎ家庭、iii.子育てのシングルママ家庭の開発。
( 2 ) 公社の企画を成功させるための戦略手法の紹介
公社は町行政と図って、優先入居資格者の資格審査を行い、資格者へのメリットを提案することができる。例えば出産の際の費用への負担等。
このシステムが成功するには再生協議会、公社、保育園群、幼稚園群、コミュニティスクール、老人会がコンソーシアムを形成し、成功のための策とその手順を研究する機関と期間を設ける。同時にアパート入居資格者も成功への道づくりのための協働組織をつくることができる。
コンソーシアムは各自の持つ利点の提案を優先することで、少ない努力でコンソーシアムの総合力を拡大できる。この種の集合体での最大の難点は各組織への根回しである。この手法をプラットフォーム戦略マネジメントと呼んでいる。(ここにP2M戦略の大きな価値がある)。
( 3 ) 町行政のこれからの努力
従来の町行政の手法ではプラットフォームマネジメントはなかったと思う。これは再生協議会が実施できる最大の『価値創出』である。
現在の町の総合戦略をみると、基本目標3が喫緊の課題であると思う。町に子供が増えることは町の経営に直接貢献できる課題である。そこで町の課題として、国に申請し、優先入居者への助成金の交付をお願いしたい。
Z. 今言われたことができれば大成功ではないか。
協議会はなぜIさんの意見を聞こうとしないのかな。
I. それは町の将来像に対するビジョンがないからだと思います。
上記の決定を進めると、小さな課題が解決します。
公社は従来のアパートのリフォームを通じて、独身用へのリフォーム、共稼ぎ家庭用へのリフォーム、子供が小学生となった家庭のためのリフォーム、老人家族用のアパート(丘の上から平地への移動)等空き家対策を兼ねた新住宅構想への確立。
小学校低学年児童のための下校サービス
コンソーシアム内の幼稚園群には送迎用のバスがあります。これをNPOが活用することで、コミュニティスクール内の低学年学童を家庭におくる活動ができる。
幼稚園、小学校、中学校を含めたコミュニティスクールの教育方針の改定(高偏差値教育方針の変更の可能性等がある。高偏差値方針だけでは社会活動に必要なマネジメントや、コンピテンシーを習得することはできません。
私は老人会で実施したいことがあります。今の老人会はジジ、ババの健康管理集団化してしまいました。私がしたいのは老人会メンバーの絆の強化です。これは実質的な健康に対し、仲間間の信頼性、絆の結びつきが精神的な面で大きな健康と幸福感を向上させます。日本人は人の欠点を見つけることに敏です。私は人の欠点を気にせず、人の美徳、長所をほめて、仲良く活動することを実施してほしいと願っています。
Z. そこまで考えているのかね。

以上

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