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「日本再生“アベノミクス”を成功させるために何が必要か」 (58)
高齢化社会の地域コミュニティを考えよう (34)

東京P2M研究会 渡辺 貢成: 1月号

Z. Iさん!新年おめでとう。今年度は決戦の時ですな!
どんなことを考えているのかな?
I. 本号は新年号です。新しい気持ちで仕事をしたいと思っています。ここで読者にお願いしたいことがあります。このエッセイはPMAJというP2M(プログラム&プロジェクトマネジメント)を信奉する組織が地域再生“アベノミックス”という喫緊の戦略的課題をPMR資格者ならばどのように対処するかという視点で読んでいただきたいと願っています。
そこで新年号はこの仕事の経過を簡単にまとめてみました。

第1は再生協議会ができる前の町の総合戦略と3つに分割した中期計画がある。
第2は再生協議会が発足したこと、中期計画の第1期がはじまり、本年度で終了する。
第3は来年度以降の再生協議会の在り方であるが、“アベノミックス”が目指している“サステイナビィリティ”と現再生協議会の計画の不透明さの問題がある。
Z. 新年号は新しい決戦になるのかと期待していた。
I. 何故ですか。
Z. 第1回の町議会が始まっているはずだ。新人の町会議員が新しい立場で発言し、物議をかもすという戦いを見たいからね。
I. われわれサポータがシナリオをつくるから、それまで動くなと指示したのに動き始めました。このエッセイはぬるま湯につかっている地域自治体をどのように変化させるべきかというテーマで戦うという内容のものです。緻密性がないと戦略は成功しません。好奇心抜きの戦いを挑みたいと願っています。
Z. いや、いや申し訳ない。先に進めてほしい。
I. わかりました。第一の再生協議会以前の町の総合戦略の説明をします。
この町には以下に示す優れた総合戦略が策定され、4つの戦略目標があります。そして戦略ごとに具体的に何をするべきか方法が示されています。

基本目標1:安心な暮らしを守り、住み続けられる地域をつくる
 (1) 公共施設の総合的マネジメントとコンパクトさを活かした暮らしやすいまちづくり
  ◎具体的な事業計画
公共施設について:今後の展開は「施設総量の縮減」と「質」の見直しが必要です。既存公園の統廃合とその施設の維持管理を推進する委員会をつくり実施する。
公共施設の適正配置や維持管理について:施設の戦略的な有効利用を進めるため、民間活力の活用や、施設の複合機能化、オープンリノベーションや事業提案型公募を行う。
既存の公園については、統廃合や機能の役割分担について見直し、利用者のニーズを考慮した特色ある公園づくりを進める。

 (2) 誰もが健康で生き生きと暮らせる環境づくりをする
  ◎具体的な事業
高齢者が生き生きと暮らせる生活支援プロジェクト
みんなで健康づくりプロジェクト

 (3) 地域コミュニティの醸成支援
  ◎具体的事業
みんなで(子どもから高齢者まで)町民みんなで地域づくりを盛り上げ、誰でも気楽に参加できる地域コミュニティの醸成を図るプロジェクト
若手層の転出、人口減少、高齢化、それとともに発生する空き家の増加、コミュニティの衰退等への対策プロジェクト

 (4) 災害や犯罪に備える地域づくり
これは比較的充実しているが、不足部分をカバーするプロジェクト

基本目標2: この町の強みを活かした魅力ある暮らしを提案し、新しい人の流れをつくる
この町の住民自らが良さを発見し、実行する。(花のまちづくり等々)
空き家バンク構想プロジェクト(来年度からスタート)
自然観察こども塾の成長、拡大(再生協議会以外で実施している)

 (1) 「この町のLife Style」プロモーションプロジェクト
自然や農が身近にあるメリットを活かした暮らしぶりや、
子育て家庭を見守る地域コミュニティとのつながり、
充実した子育てサービスを利用し、安心して子育てができる環境等
 をつくることが「この町Life」となります。
 (2) 「空き家を活用した定住希望実現プロジェクト」
町への定住希望者の住宅取得を支援するため、住宅ストックを活用した空き家バンク制度を構築する。
空き家所有者に対しては、空き家の利活用に向けた調整を行うとともに、空き家の購入者または賃貸借家に対しては、空き家に対する情報提供を始め、住宅取得前後のトラブル解決等を支援する相談体制の構築を行う。
空き家バンク制度に登録された物件の購入者または賃貸借者に対して住居環境の向上を支援するため、助成制度の創設を検討します。
民間企業との連携により、空き家等の住宅ストックが流通できる市場の形成を促します。
空き家だけではなく、空き地も含めた既存ストックの活用に当たっては、町への定住者に対して住宅を供給する目的のほかに、地域交流拠点や子供の居場所・交流の場、起業・開業の場合、多様な用途への利用を視野に入れた活用方式を検討する。
 (3) 特色ある学校教育による子供たちの生きる力を育成
子どもたちの「生きる力」創造プロジェクト

基本目標3: 若い世代の結婚・出産・子育ての希望を叶え、子育てを楽しめる環境をつくる
(1) 子育て世代を見守り、支えるための妊娠期、出産期における切れ目のない支援と環境づくり
  ◎具体的な事業
子ども、子育て家庭への切れ目のない支援実現プロジェクト
子育て世代包括支援センターを設置し、保健師等による妊産婦の状況の把握、必要に応じた支援計画の策定といった利用者支援事業(母子保健型)を実施する等、育児期を通じた切れ目のない支援の充実。
子供を安心して預けることのできる保育・子供の居場所づくりプロジェクト

 (2) 子育てと仕事の両立の推進
  ◎具体的な事業
   ①子育て世代のワーク・ライフ・バランス実現プロジェクト
妊娠をきっかけに夫婦で子育てする意識を共有したり、育児休業中に仕事との両立を考える機会を提供するため、学習機会や情報の提供を行う。
町内の各事業所への働きかけにより、育児休業体制等の普及啓発、職場の環境づくりの促進、男性に対する子育て支援を推進する。
男性の育児参加のモデルとなるよう、役場男性職員の有給取得や役場の子育てと仕事が両立できる職場環境づくりを進める。

基本目標4: 当町で安心して働き、仕事を生み出しやすい環境をつくる
 (1) 地域に仕事を生み出し、資金循環させるしくみづくり
 (2) 町の環境を活かした再生可能エネルギーの地産地消等の可能性検討

本項目は長期の取り扱いになる可能性を持っているので、今回は検討の対象外として取り扱うことにした。

Z. 先月、先々月号の中でIさんが主張していた内容と、今回のIさんの当該町の総合戦略との相違を話してくれないか。
I. 新年号で説明したいのは、この町の地域再生を突き詰めて眺めると、町が指示した思想、再生協議会が行っている思想、私たちが提案し拒否されている思想の3つがあること。そして大切なのはその思想が将来どのように展開するかを今理解しておくことだと思います。そこでこの3つの思想を説明します。

【思想Ⅰ戦略】 当該町が策定した総合戦略論:
従来から行われているPM(プロジェクトマネジメント)系戦略

【思想Ⅱ戦略】 再生協議会が進めている戦略:経験的PM

【思想Ⅲ戦略】 PGM(プログラムマネジメント)系戦略

Z. 現在やられていることをこんなに簡単に整理できるのか!
簡単に説明してほしい。
I. 【思想Ⅰ戦略】は町が企画した思想です。地域再生の専門家が企画した戦略です。基本的にはシステム・エンジニアリング系の発想ですが、通常のプロジェクトマネジメントで、企画・設計・建設・運営をまとめたものです。“アベノミックス”ではPM手法を採用して、採用したシステムの持続的可能性を持たせたシステムとすることを約束している。
従来の町の維持管理方式との相違は、従来方式は維持管理を計画当初から維持管理費予算として組み込んでおり、本方式は収益を上げることで、維持管理の可能性を保証していることである。

【思想Ⅱ戦略】は現再生協議会が実施している方式で、本年度までは国からの予算が維持管理まで含めて保証されている。もし、今後国からの予算提示がなければ継続できないことになっている。
これまでの再生協議会の決議は民主的に行われているように見えていますが、2人の幹部の判断で決済ができてしまうので、2人の能力を超えるものの活動が自由に行えない。将来性に疑問を感じている。2人の幹部は国からの予算のないところは町からの予算を期待している。これはネゴによる従来方式の継続で、このままでは改革になっていない。

【思想Ⅲ戦略】はPMAJのPMRが実施している戦略方式の採用である。
これはPM(プロジェクトマネジメント)系の戦略ですが、多くのプロジェクトを集めてプログラムとして取り扱います。一つ一つのプロジェクトで実施しているとプロジェクトとプロジェクトが相矛盾するとき喧嘩別れとなり、大きな成果を上げられない。これが一つのプログラムの中で調整できれば、Aプロジェクトの良さを活かす部分を採用し、BプロジェクトからはBの良さを活かす部分を採用できると、A+B<<Cとなることができる。
私たちは何か新しいことをするとき、常に発生するのが旧組織の縄張りに拒否されることです。多くの人々は制約条件にぶつかり、計画をあきらめてしまう。しかし、この制約条件をTOC(制約条件の理論)でプロジェクトとプロジェクトとの対決でなく、良いとこどりの解決ができれば、この成果は「新しい価値創出」になるというTOCの理論を習得すると、あなたはPMRの能力を持つことができる。
私たちは子育てプログラムで「新しい価値創出」を提案できると信じている。

Z. 3つの戦略思想に分けてもらってありがとう。新年号も盛りだくさんになったので、あとの楽しみは2月号にしたいがいかがかな!
I. 結構です。次回以降具体的な事例を入れて討論すると面白いと思います。

以上

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