今月のひとこと
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 プロジェクトマネジャー人材 

オンライン編集長 深谷 靖純 [プロフィール] :2月号

 このところ冬らしい寒い日が続いています。東京周辺ではほとんど雨が降らず、北海道から東北、北陸と日本海に接する側は晴れの日がほとんどないという典型的な冬の天気です。豪雪があった昨冬はその前年の倍以上の102人もの方が除雪作業中に亡くなったとのことですが、今冬も雪下ろし中の事故のニュースが頻繁です。雪下ろしが必要な建物の住人が高齢者ばかりという状況もあり、有効な対策が取れていないようです。何らかの先端技術を駆使することによって、何とかならないものでしょうか。

 プロジェクトマネジャーを務められる人材が不足していると言われ出してかなりの時が経ちますが、解消したという話は聞こえてきません。だから、日本企業ではイノベーション活動が不活発だということではないと思いますが、どういうことでしょうか。プロジェクトを任せられるような豊富な知識・経験を持ったプロの指揮官ということでしたらそうそうは見当りませんが、そのような特殊な人材を見出そうとしているとは思えません。そもそもどんな人材を探しているのでしょうか。
 例えばPMAJではプロジェクトマネジャーに必要なP2M(プログラム&プロジェクトマネジメント)知識の保有者としてPMS資格者を認定し、その知識を実践に応用できる者としてPMR資格者を認定しています。PMRだとプロといってもおかしくないレベルに達しているので、申し分ないというか、おつりが出るかもしれません。IT系の業務の場合、PMRはIPAが作成したITSS(ITスキル標準)のレベル6に相当するといわれています。社内プロジェクトのプロジェクトマネジャーであれば、レベル5で十分だそうですから、PMR一歩手前の人材を探せばいいということになります。
 そのような人材を社内で育成するにはどうすればいいかについて、IPAではITSSのモデルキャリアパスというものを示しています。初心者の段階からレベル毎に規定された項目を一つひとつクリアしていって10年以上かけてプロジェクトマネジャーになるそうです。あくまでモデルなのですが、育成に時間が掛かるとして人材不足といわれているのかもしれません。新入社員時代から必要な業務経験(キャリア)を全てクリアするようなキャリアパスがなければ社長になれないということがないように、プロジェクトマネジャーになるのに全てのキャリアパスが必要だということはないと思います。ただ、プロジェクトマネジャーを計画的に育成するということであれば、必要スキルが網羅されているITSS等は大いに参考にすべきだということは間違いありません。
 問題は、人材の育成が間に合わない場合でもプロジェクトを立ち上げなければならない時にどうするかということです。プロジェクトではプロジェクトマネジャーの資質が成功を左右するという面が強いのは確かですが、チーム全体のパフォーマンスを上げる方策はいろいろ考えられます。
自部署に人材が育っていなければ、他の部署からのシフトを考えます。プロジェクト固有の業務に関する技能や、ステークホルダーとのタフな折衝能力等、プロジェクトマネジャーに必要とされる項目にはプロジェクト以外の場でも修得可能なものがあるのです。むしろ、製造現場や営業現場経験者の方が優れているかもしれません。
プロジェクトの経験が少なくてもPMOの機能を有効活用することによって、適確な判断を下せるということがあるかもしれません。経験豊富なプロジェクトマネジャーが陥りやすい成功体験を引きずっての判断ミスは防げます。
複数の部署が参加するなどチーム構成が複雑なプロジェクトではコミュニケーションスキルに秀でた人材をプロジェクトマネジャーに選定します。その人物の業務スキルやプロジェクトマネジメントスキルの不足については、それをカバーするための人員配置を工夫します。       等々
 こうした方策は、プロジェクトに直接参加する部署というよりは、企業の人事部門や企画部門が検討することになります。そうした部門の方にプロジェクトの経験があれば、よりよい施策が打てると思います。それが叶わないとしても、せめてPMS資格を取得する程度のP2M知識は持っていただきたいものです。
以上

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