グローバルフォーラム
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「グローバルPMへの窓」(第131回)
2019出初式:初の台湾訪問

グローバルPMアナリスト  田中 弘 [プロフィール] :2月号

 正月は駅伝の月であり、東京都下に住む筆者にはわくわくの月である。箱根駅伝5連覇は惜しくもならなかったが青山学院大学長距離陸上部の選手寮は我が町田市にあり、家から徒歩3分の、我が娘たちが卒業した小学校からはリオデジャネイロ五輪の陸上長距離選手を2名出している。現在マラソントップランナーでかつて箱根駅伝早稲田大学の主力であった大迫傑選手と中学3年生から東京都代表で都道府県駅伝を走り、昨年名古屋女子マラソンマラソンで日本人トップの関根花観選手である。また、小金井市には創部4年にして実業団の雄となったJP日本郵政グループ女子陸上部の本拠地がある。
 
 1月にニューイヤー駅伝、箱根駅伝、都道府県女子駅伝とテレビ応援してきて一番面白く、また感動したのは京都で開催の都道府県女子駅伝であった。各都道府県から、中学生2区間、残り区間を高校生3名以上+実業団の混成でチームを組む不確実性が高い大会で、チームビルディングが非常に重要となる。
 
 今年は東京チームと愛知チームを応援していた。東京は昨年、世界陸上モスクワ大会以来5年ぶりに現役復帰の、アンカー新谷仁美選手が7人抜きの区間賞で強いオーラを発した。新谷選手は筆者が客員教授を務める岡山県立大学のある総社市の出身であり、岡山県のヒーローである。
 
 一方、愛知は、第2区から高校生が頑張りトップ集団を維持し、最終区間ではキャプテンである(日本郵政グループでもキャプテン)鈴木亜由子選手が2位選手を大きく引き離し優勝したが、愛知県の監督は、優勝インタビューで「2016年度の優勝は鈴木さんに勝たせてもらったが、今年度は、鈴木さんが気持ちよく東京オリンピックマラソン選手選考会(MGC)に行けるように勝たせてあげたいと、中学・高校生が頑張った、それで愛知の総合力が上がった」と述べた。日本郵政グループで、また混成の駅伝愛知県チームで大変な求心力をもつ名古屋大学経済学部出身の鈴木選手がチームを纏めるうえで同僚に伝えていることは、お互いをリスペクトして具体的に声を掛け合いましょう、ということだそうだ。
 
 当方のコンテキストにこれを写すと、大学院の演習で、リーダーに指名した学生から、どうしたらグループを纏められるかと質問されることが多い。その際は「テーマの攻め方の議論は置いておいて、まず、各グループ員が持っている専門知識や興味を全員に言わせて、いいね、を連発し、検討に各チーム員の強みを組み込むことからスタートするように、そうするとチームができる、議論はそれから」と薦めている。いまや、世界ではコマンド&コントロールの時代は去り、いかにファシリテーションを行うかがマネジャーに問われている。
 
 このコラムで筆者の毎年の初海外旅を出初め式と書いているが、今年の出初め式は2泊3日の台湾 台北旅行となった。12月中旬に中国蘇州を訪れているので、1ヶ月で中国本土から海峡をまたいで台湾に来たことになるが、かつて両方を訪れる必要がある人はパスポートを分けるなどしていた時代を覚えているので、時代の変化を実感した。
 
 今回は夫婦での観光旅行で台湾訪問は初めてであった。時間があまりないのでプライベートガイドを付けてのツアーを組んだが、効率よく台北市内名所と九份観光を楽しめた。筆者の旅は、観光半分、残りは社会観察・情報収集であるので、なによりも、極めて有能なプロのツアーガイドに恵まれたことが幸運であった。大学の日本語・日本文化学科で学び、日本でも専修ツーリズム課程修了、沖縄滞在経験があり、当方夫婦の興味に合わせて多彩な情報を提供してくれた。
 
 台北は、筆者がよく行く上海と同じ飛行時間で行けるので国内旅行の感覚であるし、景観は日本に似ているといえば似ているが、緯度が北の沖縄の景観がほぼトロピカルであるのに対して亜熱帯にある台北はそれほどでもない(台湾南部は熱帯とのこと)。漢字が繁字体であるので理解しやすいし筆者の断片的な中国語も大体通じた。麵が大好きであるので、代表的な台湾麵である牛肉麵や担仔麺は大変気に入った。ちなみに、少し値の張るコース料理は、中国江南料理(上海、蘇州など)とほぼ同じようであった。
 
 日本の製造業の行方も懸念があるが、台湾の製造業も空洞化が進んでいるようで大変そうだ。しかし、これからの産業と文化の発展に必須なクリエイティビティでは台湾は良い素質と実績を有しているようだ。

華山1914文創園区  台北の中心部 台北中央駅近くに「華山1914文創園区」というクリエイティブ文化テーマパークがある。日本時代1914年創立の酒造工場跡をリノベーションして台湾の創造的文化の発信地としたものだ。最近筆者が気候変動対応の仕組み作りプログラムマネジメントの講義とか研修を行う際にここもアーバン施設再生の事例としているので、是非現物を見ておきたかったが、実現した。
華山1914文創園区

 原建築物の保存が良く、出店している台湾ブティークとカフェが合わさったなんともファッショナブルな雰囲気はまるでサンフランシスコにいるかがごとくであった。
 
 中華圏で唯一残っていた台北行きはハッピーツアーとなり、日本人としての台湾への感謝の気持ちを心で伝えることもできた。多謝台湾。 ♥♥♥

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