グローバルフォーラム
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「グローバルPMへの窓」(第130回)
“蘇州再訪”

グローバルPMアナリスト  田中 弘 [プロフィール] :1月号

 世界で「仕事が早いのはどこの国の人か」、という質問を10年前にしたら、大方の答えはまず「日本人」であった。筆者も、ヨーロッパの学生達から、先生、明日でよい仕事を今日やらないでほしい、ということをよく言われた。
 いま、この質問を筆者が受けたら、答えはロシア人(但し女性)となる。ロシアのエキスパートの女性はかつての日本の猛烈サラリーマンの如く強烈によく働く。ほぼワーカホリックの我が研究者仲間、昨年7月のロシア国際PM大会での主催者(全員女性)、ロシアPMサイエンスジャーナルの編集長など超高速ワーカーである。
 逆に遅いのは、なんといってもフランス人であろう。悪気はないのに、時間がかかる。時間感覚は文化である。

 12月に、2年10か月ぶりに中国 蘇州を訪れた。元教え子から要請があり、サービスイノベーションの調査が主目的であった。
 蘇州には上海から陸路で入るが、今回は、往復とも羽田~上海虹橋便が取れたので、通常の成田~上海浦東便と比べ、往路と復路で7時間の節約となり、ほぼ国内出張なみの簡便さとなった。ただし、土曜日昼上海着後、土曜日夕刻から月曜日夜までフル稼働で、火曜日午前には帰国へ、その間、車での移動が4日で700 kmという強行軍となった。東西・南北と駆け抜けた蘇州市は東京都と同じくらいの広さがある。
 元指導学生がフランスPh.D.を無事取得して、2016年1月に筆者が最後に蘇州を訪問した際に指導を要請され開発を始めた、所属先ホテルチェーン(40店)のP&PMマニュアル(特に新ホテルの企画から開店まで)の適用状況の評価を行うことが主眼点であった。そのため、マニュアルが適用された、その後新規開店した2件のホテルの訪問調査を行い、引き続き、関係管理職者5名との1日の評価ワークショップをホテルの山荘会議施設で行った。

清朝後期の大邸宅を改造した無錫市の4星ホテル 山荘でのワークショップ
清朝後期の大邸宅を改造した無錫市の4星ホテル 山荘でのワークショップ

 2004年から14年間で1店から40店にまで、3つのブランドを使い分けて発展したホテルチェーンのダイナミズムと精緻な経営システム、人材教育投資(従業員の平均年間研修時間は実に約40時間)、そして、私の元学生のその後の教育者としての発展を確認できた良い旅であった。
 滞在中3回の夕食と2回の昼食は、各ホテル料理長お心尽くしのフルコース蘇州料理で関係者との会食であったが、蘇州料理は日本料理のように旬の食材を使った油が少ない料理で大変美味で、元々食いしん坊の筆者はすべて食べられた。
 特に5星ホテル平河府のディナーでは、サプライズで総料理長から淡水魚の王者 桂花魚のトマトスープ鍋をふるまっていただき、これはスープがフランス料理風、魚の白身が和風であり、コクが中華風と不思議な美味である。

総料理長は中国十大料理長 桂花魚のトマトスープ鍋
総料理長は中国十大料理長 桂花魚のトマトスープ鍋

 蘇州には大きなサイエンスパークが2つあり、欧米のビジネススクールやアジア首位のシンガポール国立大学の中国キャンパスが軒を連ねるが、筆者が属するフランスSKEMA Business School の蘇州キャンパスは、ここ3年で学生数が倍増し、900名に、そのうち750名はフランス人学生650名を含む外国人とのこと。中国人学生が欧米、オーストラリア、日本のMBAスクールに行き、欧米の学生が中国のビジネススクールに行く、という時代になったようだ。
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