グローバルフォーラム
先号   次号

「グローバルPMへの窓」(第129回)
“チリに行くなら Si vas para Chile”

グローバルPMアナリスト  田中 弘 [プロフィール] :12月号

 1965年6月12日、筆者は新日本製鐵チャーターの鉄鉱石運搬船「邦雲丸」で、南米チリ中部のコキンボ(Coquimbo) 港に降り立った。中南米研究に携わっていた筆者には、早朝5時、突如目の前に迫るアンデス山脈の末峰を背景にカモメ舞うコキンボ港はあまりに美しくそれから1年間の南米放浪の旅の強烈なページ1となった。
 1966年4月12日に同じチリ中部のチャニャラルから帰国の旅について以来、今日までとうとう中南米に足を踏み終えることはなかった。ある種望郷の念で時々チリのフォークソング(フォルクローレ)“Si vas para Chile”という曲を口ずさんでいた、「チリ―に行くなら、昔私が愛した人が住んでいた町に寄って、私は元気にしていると伝えておくれ」という歌詞である。チリにもう一度行きたいというのは今日まで一生懸命働いている一つの理由となっている。
 11月19日から、恒例の一般財団法人海外産業人材育成協会(AOTS)主催PMAJ受託の低炭素化社会に資する海外管理者P2M研修(PPTP研修)を北千住のAOTS東京研修センターで実施した。参加者名簿を見ていてびっくりしたのは、なんとコキンボを本拠とするチリの鉄鉱石鉱山企業のプロジェクト部長がいるではないか。ということは53年前に私がチリ往復をした鉄鉱石運搬タンカーの積み荷を輸出している企業だ。この Roberto Lopez 氏は無事コースに参加し、感激の対面を果たした。かくして、筆者のチリ友好のバトンはピンポイントで、11月19日に繋がれた。次は、筆者がこのバトンを持ってチリを再訪する番だ。

日本・チリ友好のバトンはチリの銘醸ワイン
日本・チリ友好のバトンはチリの銘醸ワイン

 今回のPPTP研修は、バングラデシュ、ネパール、スリランカ、パキスタン、マセドニア、スーダン、メキシコ、ペルー、チリ、アルゼンチンの10ヵ国から19名が参加した。
 
全員精鋭で、ネット10日間の研修は大変良い成果を挙げて修了した。たとえば、
 
南アジア、北アフリカ、ヨーロッパ(マセドニア)、中南米と4つの地域から研修生が、初日から完璧に打ち解け、完全なグローバル環境のなかで、多分野のテーマをアクティブラーニング形式で消化できた。
プロジェクトマネジメント演習では、4グループすべて気候変動対応のプロジェクトテーマで、プロジェクトの企画、採算性分析を行っての投資判断、ミッションステートメント、WBS構築などがきちんとできており、評価はほぼA++であった。
プログラムマネジメント演習では、プロジェクトマネジメントとの違いをきちんと踏まえ、こちらも各産業分野、社会における気候変動対応のプログラムが提案されており、評価はほぼA++であった。
気候変動について、理論・経済分析、軽減(mitigation)、社会システム的対応(adaptation)について、講師と参加者全員で、数多のケース共有ができ、問題解決にプログラム&プロジェクトマネジメントをどのように適用するかの議論が誘発された。

 番外編としては、PMAJ古園理事考案のスイーツ・バーがグローバル化し、これまでの日本のお菓子コーナーから各国からの持ち込みスイーツを加えたバーとなった。
 研修生は、毎日のセッションをきちんとこなす一方、放課後は毎日東京探訪を楽しんでいたが、情報収集の仕方が10年と全く変わっている。以前は研修センターのフロントスタッフや我々講師がどこに行けばよいかの質問を多々受けたが、今どきは、SNSの氾濫で研修生の事前サーチや、日々のサーチが進んでおり、完全自立している。

 2週間にわたり毎日6時間研修を行うことは、ピッチャーに例えれば、毎日完投をし、同じ日にロングリリーフを行うか、クロ―ザーをやるということを中日2日休みをいれて10日間続けることで、決して楽ではないが、研修生は麻薬のようなものである。

海外管理者P2M研修(PPTP研修)

次回は3月のフィリピン研修生向けのコースとなる。 ♥♥♥

ページトップに戻る