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「エンタテイメント論」(130)

川勝 良昭 Yoshiaki Kawakatsu [プロフィール] :1月号

エンタテイメント論


第 2 部 エンタテイメント論の本質

6 創造
●発想に役立つ左脳の訓練方法
 左脳は理性機能、即ち論理思考(1+1=2)の機能を持つ。一方右脳は,感性機能、即ち非論理思考(1+1=無限大)の機能を持つと云われている。ちなみに筆者は、便宜的に左脳と右脳とを分けて「発想理論」を展開している。しかし本来は前頭連合野、両脳、胃腸、皮膚などの機能が相互に絡み合い、融合し合って思考し、発想し、行動していると考えている。

 Logical Thinking Powerを鍛える「脳トレ」は、昔も、今も多くの人に一度は試された事がある発想訓練法である。論理的に、徹底して思考すること、特に論理の位相転換をすることは、新しい発想や優れた発想を生み易くする。前号で左脳の訓練方法として、日々接する物事(モノとコト)を日々定義すると云う訓練を重ねる(習慣化)ことを薦めた。と共に「定義するとは一体どう云う事をすることなのか?(定義の定義)」を読者に問うた。

 この所謂「定義の定義」の質問に正確に答えた人物は、筆者が今まで接した人物で殆どいなかった。特にコンピュータ・システム開発に従事する人物、システム開発の国家資格を持つ人物が誰一人答えられなかった。これにはショックを受けた。ショックを超えて、その様な人物にシステム開発を任せて大丈夫かと云う懸念を持った。

  出典:システム開発 system+development+images&tbm=isch&tbs=rimg:Cbv3NzuQ8W5jIjil3- 出典:システム開発
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 コンピュータ・システムの開発は、自然、社会、経済、産業、事業、生活などあらゆる物事に内在する各種の実システムを分析し、再構築し、コンピュータが計算できる論理フローを新構築する事を求める。ならばシステム開発に於ける要件定義の「定義」を定義できない開発者は、如何なる考え方でシステム開発してきたのだろうか?

●定義の定義に関する様々な定義
 定義するとは一体どう云う事をすることなのか? この質問をGoogleやYahooにアクセスして調べた。WEB情報の「定義の定義」を以下に紹介する。どれが正解と思うか? 見極めて欲しい。ちなみに、この見極め作業は左脳の基礎的な訓練になる。

  出典:定義 definition+images&tbm=isch&tbo 出典:定義
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定義とは(Wikipedia)、一般にコミュニケーションを円滑に行うために、ある言葉の正確な意味や用法について、人々の間で共通認識を抱くために行われる作業を云う。最も厳密な定義のためには、「対象を種として含む類」および「対象を他の種から区別する特徴」を述べればよい。前者を最近類、後者を種差という。
定義とは、一般に用語の意味を明確に規定する文章(式を含んでもよい)を云う。例えば、「4頂角がすべて直角である四辺形を長方形という」は、長方形という用語に対する定義である。このとき、長方形の定義という言い方をする。なお、数学の理論建設にあたって、公理系を定めるが、そのときに定義をしない用語を用いることがある。通常、幾何の公理的方法での点、直線などがその例である。そのような用語を無定義用語、または無定義術語という。
定義とは、物事の内容や言葉の意味を明確に決めること、またはそれを述べることである。例えば、「個人情報の定義」については、「個人情報」と言っても幅が広いため、どこまでが個人情報かを決めなければならない。フルネームと市町村はNG、都道府県だったらOKなど、このように曖昧な事柄を明確に定めることが定義である。
定義とは、定義の漢字の語源、由来、意味で明らかにする。定義の「定」は「物事を決めて変わらないようにする事」、「決められていても変わらない事」を意味する漢字である。それは本来は「建物の位置を決める」という意味の漢字である。「ウ冠(うかんむり)=家」に「正=安定」という漢字を合わせたもので、「家の位置を決める」という意味になる。「義」は「道理にかなって正しい」という意味の漢字である。漢字を分解すると「羊(よい)」と「我(自分)」という意味になる。従って「定義」とは、この二つを合わせるもので、「正しく変わらない」ことを云う。
定義とは、言葉の意味を決めることである。それに関係する概念は、大まかな範囲のことを指す。そこで定義によって「これは?である」とハッキリとさせる。「学校」という概念と「中学校」という定義だとハッキリと連想できる。大まかなものと絞ったものが概念と定義の違いである。
定義とは、言葉の意味を決めることである。2で割りきることのできる自然数を偶数という。これが定義である。つまり「偶数」という言葉の意味を規定しているからだ。
定義とは、物事の意味・内容を他と区別できるように、言葉で明確に限定することである。
定義とは、ある概念の内容やある言葉の意味を他の概念や言葉と区別できるように明確に限定すること。

●筆者の「定義の定義
 WEB情報の定義の定義を読んで、どれが正解と思ったか? 聞かせて欲しい。筆者が考える「定義の定義」を以下に紹介する。筆者としては、以下の答えが「正解」と考えている。しかし押し付ける気はない。それを決めるのは読者であり、世間であろう。

定義とは、YesかNoで答えられる「問」を明らかにすることである。

 筆者の定義は、簡潔、単純、明快である。この章の表題に「筆者の定義の定義」と書いた。しかし筆者が初めて構築した所謂「定義説」ではない。筆者が高校生の頃、この定義説を筆者に教えた人物がいた。その人物が誰か記憶していない。今もその人物に感謝している。

 筆者はこの定義説を知った以降、物事を正しく定義する一方、正しく定義された事物を選別する様になり、論理的思考力が研ぎ澄まされ、物事の本質を理解できる事になった。本の読み方、先生の授業の理解の仕方、問題や勉強に向き合う「在り方」や「やり方」が根本から激変した。その結果、受験成績も、大学での勉学成績も抜群に伸びた事を今も鮮明に記憶している。社会人になってからも理論的思考の成果は目覚ましかった。

 筆者の定義説と上記に掲げたWEB情報の定義説と比較して欲しい。WEB情報で定義の定義をしている人物自身が定義の本質を理解していない事又は中途半端な理解で「是」としている事がよく分かる。その結果、定義の定義が長文、饒舌、複雑、難解になり、幾ら例示しても論理的説明になっていない。はっきり言って全て「誤り」であると言わざるを得ない。

●コンピュータ技術、AI技術、AI(人工知能)
 コンピュータは、まさしくYes、NOの1+1=2の論理回路で動く。Yesか、NOかで答えられる問を明らかにしたプログラム(定義)を設定しない限り、コンピュータは作動しない。筆者が「ショック」を受けた理由は、此処に在る。

  出典:コンピュータ・プログラム
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 ちなみに今、流行りのAI技術はコンピュータ技術である。従来のコンピュータ技術と異なる点は、深層学習が出来るか否かである。AI技術は、数学と統計と確率の3つの数理に基づく論理計算技術である。この数理の範囲と方法より以上の働きをAI技術はできない。しかもAI技術のコアを動かすのは人間である。

 世の中の多くの人はそもそもAIを定義していない。AIは人工知能を云う。これはこの世に存在しない。シンギュラリティが未来に起こると考えるのは「妄想」である。何故なら「本物のAI」は、人間が人間を製造することが可能になった時、人間が神の領域に踏み込んだ時、初めて実現する。筆者は、AI技術の専門家でも、未来学者でもない、普通の人間だが、それくらいの事は分かる。

出典:AIとAI技術
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出典:AIとAI技術
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 AI、AIと騒ぐ連中に限って、AIとAI技術を定義していない。両者の違いも、その今後の進化の方向も認識していない。その様な連中は、AI技術の進歩で真っ先に「職」を失う連中である。更にその様な連中を基盤としている企業はヤバイ。何故ならAI技術を核とする「先端デジタル革命」に順応できない企業になるからだ。その様な企業は確実に滅んでいくからだ。その兆候は既に始まっているからだ。AI技術に過度の期待をせず、冷徹な理論思考と次号以降で説明する感性思考を発揮し、企業を進化、発展させること、それを可能とする人間になることを目指そうではないか。

 「創造」のチャプターを終え、「エンタテイメント」の本質の「●●」のチャプターの本稿を書く予定であった。しかしそれができない。賢明な読者なら察したと思う。これから先、早くて10年以内に、遅くて20年以内に、日本の企業が今よりヤバくなる一方、多くの働く人の職がヤバくなるからだ。ならばどうすればよいか? これを書き終えないと先に進めないからだ。

 前号で既にその解決策として「創造的な経営プロと仕事プロ」になると述べた。しかしそうなるためには、危機感を持ち、必要不可欠なスキル(発想力)を習得し、「夢」の情熱と意欲を持ち、スピード感を持って挑戦することである。しかし具体的にはどうするか? 次号で述べたい。

つづく

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