今月のひとこと
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 センサーだらけ 

オンライン編集長 深谷 靖純 [プロフィール] :12月号

 年の暮れが近づくにつれ「平成最後の○○」という表現がやたらに目につきます。紅白歌合戦も箱根駅伝も、除夜の鐘も初詣もなんでもかんでも平成最後です。締めくくりは来春の「平成最後の花見」でしょうか。北海道P2M研究部会が発足したばかりの北海道では「新元号下最初の花見」を楽しむことになるのですね。

 ここ数年で、自動運転の技術が格段にアップし、実用に供される日も近いと言われています。乗員を目的地まで事故なく運ぶことが自動運転車のミッションです。「自動運転車の安全技術ガイドライン」には、「自動運転システムが引き起こす人身事故がゼロとなる社会の実現を目指す」と謳われています。安全を実現する為に様々な技術が使われていますが、人間を検知し識別するセンサー系の精度がまずは重要なのだろうと思います。自動車製造関係の方の話ですと、人間を識別するシステムの精度はかなり高くなってきたが、検知した情報を基に作動する制御機能の開発にはまだ課題が残っているとのことだそうです。開発中の自動運転車を公道に走らせて大量の事故情報を集めて分析すれば、課題解決も早いと思われますが、絶対に選んではいけない方法です。くれぐれも慎重に取り組んでいただきたいと思います。
 人間検知のセンサーは自動運転車以外にも様々な機器・設備に組み込まれています。自動ドアやエスカレーターなど、人間の代わりに機械が動くシステムでは殆どセンサーが検知した情報を基に制御されているようです。センサーの不具合を原因とする事故も、時々起きているようですが、IoTの世界を始めセンサーの利用分野は急速に拡大しています。  そうなると、キワモノかと思うようなモノも出てきます。先日、編集子宅では古くなった給湯器を交換しました。浴室のリモコンスイッチのパネルも交換され、そこには浴槽に人が入っているかどうかを検知するセンサーが付いていました。このセンサーが検知した情報を使ってどのような機能を働かせるのかを全て調べたわけではないのですが、つい「本当に必要なのですか」と呟いてしまいました。
 設定した温度と湯量でお湯を沸かすというのは、以前の自動給湯浴槽にもあった機能です。新型機は設定温度よりも2度低い温度で湯を沸かすことになっており、人が浴槽に入ると追い炊きをして設定温度まで高くするようになっています。いきなり高い温度の湯に入ると身体によくないということで、低目のお湯に入って身体を慣らしてから温度を高くするのだそうです。また、のぼせ対策として、浴槽につかっている時間を計測する機能もついています。浴槽内で居眠りしていても、一定時間が経つとブザーが鳴って起こしてくれます。こうした機能も、慣れると当たり前だと思うようになるのかもしれませんが、今はまだ「本当に必要なのですか」と呟いてしまいます。
 手を差し出すと水が出る水栓の発売は1984年だそうです。その後様々なところに、人の動きを検知して動き始める機器が増えてきました。ドアを開けると自動点灯し便器の蓋が開くトイレ、人の動きに合わせて風向きを変えるエアコン等々、使い慣れて当たり前と感じている方も多いのではないかと思います。
 編集子の場合、年齢のせいかもしれませんが、こうした機能があまりにも多く一つひとつ憶えられなくなってきました。家電・設備に単発で備え付けられた機能をトータルでコントロールするような機器が開発されると一つひとつを憶えなくてもよくなるかもしれませんが、どうでしょうか。そうなると、自身の神経が張り巡らされたセンサーに置き換わっていくことになるような気がします。ただでさえ鈍い感覚がますます鈍くなっていき、暑さも寒さも、熱いも冷たいも判別できなくなるのではないかと心配しています。検知する機能が残ったとしても、適切な反応をすばやく取れなくなるかもしれません。開発中の自動運転車と同じような状態にまで退化する可能性は高いと思われます。例えば、熱いお湯に手をつけて熱さを感じても、とっさには何をしていいか分からず、お湯に手をつけたままとなって火傷を負うというような事故が増えるかもしれません。

以上

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