図書紹介
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the four GAFA 四騎士が創り変えた世界
(スコット・ギャロウェイ著、渡会圭子訳、東洋経済新報社、2018年8月9日発行、第1刷、416ページ、1,800円+税)

デニマルさん : 12月号

今回紹介する本は、今年11月アマゾン売れ筋ランキングのビジネス部門で上位にランクされている。8月の発売以来、この本は色々な意味で注目を集めている。その注目のポイントは、この本が採り上げたIT企業の4社が実際に世界を創り変えている点にある。そして次の10年も支配する勢いであるとも書いている。その企業がGAFAであるという。GAFAとは、グーグル(Google)、アップル(Apple)、フェイスブック(facebook)、アマゾン(amazon)である。どの企業も現在のインターネットに接続されたデジタル社会を生き抜く上で、ビジネスだけでなく我々の日常生活のコミュニケーション手段として4社のシステムは必要不可欠な物となっている。それも世界中に広がって社会の制度やルール等を変えつつある。著者は、この四つの企業を「ヨハネ黙示録」に記されている「四騎士」(『地上の4分の1を支配し、剣、飢饉、悪疫、獣によって「地上の人間を殺す権威」を与えられている』)の如きであると書いている。確かに、この巨大企業が創り出した圧倒的な利便性は、後戻り出来ない仕組みとなっている。この猛烈な竜巻の様な吸引力に引き込まれて、日々進化している。著者は、この凄まじい強さを「グーグルは“脳”(知識)、アマゾンは“脳と指”(狩猟採集本能)、フェイスブックは“心”(感情)、アップルは“美感”(性欲)を刺激することで人間の心理に奥深く入って、破格の成功を成し遂げた」と書いている。その詳細は、それぞれ後述するが、紙面の関係でアップル社を割愛した。だが、将来のパソコン進化に興味のある方は是非読んで頂き、近未来の生活とパソコンの関係を垣間見て頂きたい。さて、この本を纏めた著者をご紹介したい。現職はニューヨーク大スターン経営大学院教授で、ブランド戦略とデジタルマーケティングが専門とある。しかし、この本にも書いてあるが起業家としてL2、Red Envelope、Prophet等9つの会社を起業。更に、ニューヨーク・タイムズ、ゲートウェイ・コンピュータ等の役員も歴任している。学者としても、C・クリステンセン等々「世界最高のビジネススクール教授50人」に選出された実力派である。

GAFAのG(グーグル)         ――全知全能で無慈悲な神――
著者は「グーグルを全知全能の神」と書いている。それは我々の全ての疑問に答えてくれて、あらゆるデータや資料が取り揃えられている魔法の箱を持っている様な神に近いからという。それに世界中から1日に35億件も質問検索が成され、その全てのデータが系統的に蓄積され日々進化している。その内部の詳細な仕組みが明かされていないのも神秘的である。この検索エンジンを武器に、その膨大なデータを日々集積している企業である。時価総額5320億ドルの企業は、ディズニー社やコムキャット等類似企業4社の合計総額を超えている。著者は、この成長こそが人間の本能的なもので止めるのは不可能と書いている。

GAFAのA(アマゾン)         ――地上最大のマーケットプレイス――
この本で「アマゾンがウォールストリートの常識を変えた」との文章に、「利益は小さく、成長は大きく」とある。正にアマゾンは現在まで成長していく過程で株価は高値を付け、同業他社が低迷している中で独走を続けている。アマゾンの時価総額は4329億ドルに対して、同業のウォルマートは半額で、残りの半分を7社で分けあっている。更に、アマゾンは世界最大の商品数を揃え、低コストで迅速に配送する流通革命を実現している。事例として、5億世帯に1時間以内の配送を豪語する。その為の自動倉庫から専用飛行機や船舶を用意して、ドローン配送も視野に入れている。著者は、これから先の雇用破壊を警告している。

GAFAのF(フェイスブック)      ――人類の1/4を繋げた怪物――
フェイスブックは、全世界の人口75億人の四分の1の20億人とネット接続している。それも1日の平均時間が35分であり、1回のネット接続6分に当たる。そのネット接続の根底に、人間としての「他者への共感」があると分析している。ネット接続が多くなると、その口コミ広告の効果が高くなる。共感が信用を支えてビジネスへと繋がっていく。フェイスブックの時価総額は4200億ドルと4社の中で現時点では一番低い。しかし、デジタル広告費の伸び率では、グーグル60%に対しフェイスブック43%アップで、その他がマイナスであり驚異的である。著者はフェイスブックの拡大の中で、お互いの個人情報が無防備に曝される危険性を指摘している。「いいね」をクリックすると、それだけ個人情報が露出する仕組みとなっている。そのデータを保有するフェイスブックは、ビジネスとしての拡大か、公的メディアとして中立性を保持する立場を貫くかは、今後の課題だと結んでいる。

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