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「日本再生“アベノミクス”を成功させるために何が必要か」 (56)
高齢化社会の地域コミュニティを考えよう (32)

東京P2M研究会 渡辺 貢成: 11月号

Z. Iさん!
先月号で、Iさんの再生協議会の実行計画を3つの資料でまとめ上げた。3部作にした理由は「日本的ムラ社会」の人々の発想からはずれると、計画そのものが評価の対象から外される危険があるからだと聞いた。
今回は3つの計画のうち2つまで話し、顔色を見てから第三次案を出すといっていた。ところが、幸か不幸か、手違いがあって、町行政の担当部署に配布されたと聞いた。その後の様子はどうなったかな。
I. 先月もお知らせしたが、3部作にした理由は
第1次計画は初めて手掛けるプロジェクトです。確実にできるところから始め、これを成功させ、その成果を関係者に示し、再生協議会内での信頼感を確立する必要があった。結果として当初の意図は成功し、協議会に対する信頼感と、関係者間の団結が強まった。
第二次計画は第一次計画の延長ですが、完成後には持続可能な維持管理システムの構築を約束しなければなりません。そのためにはプロジェクトが利益を生み出す努力が必要です。この計画は規模が小さいので、実行可能だと思われます。
しかし、この第二次計画では規模が小さすぎます。町を発展させる程度の規模にするプロジェクトを考えなくてはなりません。
Z. 町を発展させるにはそれなりの規模が必要だということはわかる。何をやるかが問題だな。
I. 添付の5枚のスライドをご覧ください。
これは10月8日(月)フジテレビのプライムニュースから採取したものです。
片山さつき氏が内閣改造で第4次地方創生大臣に抜擢されました。
地方創生の充実・強化がテーマとなっています。
スライド1:「歴代大臣の時代のテーマ」から
片山大臣が実施する新しいテーマを下記する
すべての自治体が真剣に実行している地方再生なくして、経済再生はない。
女性の活躍に力を入れる。全国を歩いているが、女性の働き方を変えたい。
今は女性も東京に向かっている。地方での活躍の仕組みをつくる必要がある。
歴代大臣の時代のテーマ
スライド2:民間企業で働く20歳~69歳までの男女の月給給与の平均値
女性の賃金の男性との格差も変えないといけない。
民間企業で働く20~69才の月額給与の平均値
スライド3:【国家戦略特区】の外国人受け入れ
人手不足ではあるが、外人労働者の受け入れには言葉の壁という大きな課題がある。
【国家戦略特区】の外国人受け入れ
スライド4:“アベノミックス”地方創生の変化
地方創生:人口減少 & 地域経済の縮小を一体的に克服する。
女性の寿命の延長→女性の活躍の場をどのように変えるか。
“アベノミックス”地方創生の変化
スライド5:女性を活躍させるための政策とその重点方針
人手不足だけでなく、女性の新しい働く場とその内容の研究が求められている。
女性を活躍させるための政策とその重点方針
Z. 女性の働き方に対する優れた研究が必要ということかな。
I. 女性を新しい経営資源として取り扱う発想が必要かと思われます。
Z. 新しい価値が生まれると計画の変わってくるだろうな?
I. ここで第三次計画についての発想をまとめてみます。
従来の発想は規模が小さすぎた。もっと大規模なビジネス創出が望まれていることが、多くのスライドから理解できます。これまでの再生協議会は小さなテーマのみをターゲットにしてきたが、発展的なテーマを提案する必要があります。
第三次計画は規模の拡大を目指します。ここで町の総合戦略の採用を考えました。
基本目標1: 安心な暮らしを守り、住み続けられる地域をつくる。
基本目標2: 本町の強みを活かした、魅力ある暮らしを提案し、新しい人の流れをつくる。
基本目標3: 新しい世代の結婚・出産・子育ての希望を叶え、子育てを楽しめる環境をつくる。
基本目標4: 当町で安心して働き、仕事を生み出しやすい環境をつくる。

これを見るとわかりますが、基本目標1は第二次計画に含まれます。しかし今すぐ、この町が企業並みの収益を上げることはできません。
基本目標3は子育て環境整備というテーマです。
これだと人口の減少は鈍化します。
子育てしたい共稼ぎ家族がいます。しかし日本の企業は共稼ぎ女性にも残業を要請してきます。
それでは子育てに際し、夫婦の一方が仕事を止めることになります。企業が欧米のように残業をしない方向で業務改善したら、子育て環境は改善できるはずですが、日本の企業は戦後一貫して、残業問題を取り上げていません。
その事実に対し、この提案は当町の老人会のコミュニティが共稼ぎ家庭に保育園への「送り迎え」をする役割を提供します。
  “知恵袋ばば”孫育てコミュニティ
当該町には県の住宅供給公社があります。現在空き部屋が増えたため、独身男性のためにリニューアルアパートを試しに提供しました。これがなんと、入居者があり、昨年は町からの出入りが同数で、町の人口が+-0となりました。そこで気分を良くしている公社に、子育て希望の共稼ぎ家庭のためのリニューアルを提案し、入居希望者を募ることを交渉したいと考えています。入居希望者が増えると、町は気をよくし、入居した共稼ぎ家庭で子供が生まれた場合、生活補助奨励金を出すなどの措置が取られるなら、再生協議会への信頼感、お手伝いすることへのモチベーションが高まります。
子育てコンソーシウム:なお、当町の子育て環境については人口減少が進めば公社、保育園、幼稚園も次第に経営難になります。そのため保育園への入園児の増加はこのましいことですし、幼稚園も同じ問題を抱えています。これを各組織が単独で実施しても大きな成果が得られません。大きな成果を求めたいならば、関係各社、各機関がコンソーシウムを組んで、共同作業で役割分担を決め実行します。
プログラム・マネジメント:問題はエンジニアリング会社の従業員であれば簡単に対応できると思います。しかし、これらの作業は複雑な関係性の中で実行しますから、経験者の参入が必要となります。まず、関係者が一堂に集まります。この場をプラットフォームと命名します。このプラットフォームで各社は提案できる「価値創出」を提示します。これらはA.プロジェクト、Bプロジェクトとなり、各社はプロジェクトの遂行にはげみます。各プロジェクトを全部統合するとプログラムとなります。この際プログラム・マネジメントは再生協議会がマネジメントします。
各社のプロジェクトは
・公社: 遊休施設のリホームと入居者募集案の提出を行います。
・保育園: 入園予定者の入園枠の拡大案と予定者数に見合った体制を提出します。
・幼稚園: 同上。
・再生協議会: プログラム・マネジャの提供、プログラム・マネジメントの実施。
・町行政: プログラム提案書のチェック管理と県や官への提案書の作成と提案。
行政の立場としての責任業務の遂行。
担当地域の子育てコミュニティの設立と役割表の作成
コミュニティスクールは学校運営のためのビジョンをわかりやすい言葉で説明する必要がある。
コンソーシアムはそれぞれの役割について、各自が他部署と連携しながら、プロジェクト遂行の成果を発表し、祖語のないような運営を行います。
Z. なかなか壮大なものとなるね。「地方創生」と簡単に言っているが、アイデアをどのように出したらいいか、難しい問題があるな。
I. 「地方創生」という新しいアイデアを出すことは難しいかもしれません。広大な問題を扱うときプログラム・マネジメントで実施します。最後の決定はプログラムマネジャーが実施します。
プログラムマネジメントがなかった時は各プロジェクトの責任者ができませんと回答すると他のプロジェクトすべてが賛成しても、前進しません。ここでいう「地方創生」は躓いた問題を課題化し、皆で工夫をすることで、結論が出やすくするのがプラットフォームマネジメントの特徴です。プロジェクトマネジメントの手法、プログラムマネジメントの手法、プラットフォームマネジメントの手法を学びます。この基本ができていると、問題解決が残された「価値創出」になります。この際課題解決をA社に求めてできなくとも、B社、C社の協力でできることもあります。プラットフォームマネジメントによって解決の幅が広がったと考えています。
Z. 今回はこれらの問題に経験のあるIさんが自信をもって説明してくれた。バブル崩壊後の「日本的ムラ社会」との相違は、Iさんの実践的経験と、社会の発展に対する洞察力の差があることがわかった。ありがとう!

以上

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