番号 |
発行年(月) |
名称 |
ISO 21500 |
2012年 |
プロジェクトマネジメントの手引
Guidance on project management |
ISO 21503 |
2017年 |
プログラムマネジメントの手引
Project, programme and portfolio management -
Guidance on programme management |
ISO 21504 |
2015年 |
ポートフォリオマネジメントの手引
Project, programme and portfolio management -
Guidance on portfolio management |
ISO 21505 |
2017年 |
ガバナンスの手引
Project, programme and portfolio management -
Guidance on governance |
ISO 21508 |
2018年4月 |
アーンドバリューマネジメント
Earned value management
in project, programme and portfolio management |
ISO 21511 |
2018年5月 |
ワークブレークダウンストラクチャー
Work breakdown structure
for project, programme and portfolio management |
( 1 ) |
EVM概要
ここではEVMの概要として次のようなことが記述されている。
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EVMの目的と利点
プロジェクト/プログラムのコントロールと分析を目的とし、客観的な測定技法、マネジメントの意思決定、監視システムに有益である。 |
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EVMシステムの指針
WBSで定義されたスコープやパフォーマンス測定ベースラインを含むベースラインを統合する。 |
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EVM計画
統合されたプロジェクト/プログラム全体計画の俯瞰、計画からの差異の監視、パフォーマンス測定システム、客観的な進捗評価、資源の利用が可能になる。 |
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EV測定とパフォーマンス尺度の利用
任意の時点でのプロジェクト/プログラムの状態を評価するためのパフォーマンス尺度を決定するために用いられる。 |
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( 2 ) |
EVMプロセスステップ
EVMのプロセスステップが計画段階と実行段階に分けてそれぞれプロセスステップが示されている。
計画段階では、次の6つのステップがある。
ステップ1 |
: スコープの分解 |
ステップ2 |
: 責任の割り当て |
ステップ3 |
: 作業スケジュールの設定 |
ステップ4 |
: 予算の時系列展開 |
ステップ5 |
: パフォーマンスの客観的測定法の割り当て |
ステップ6 |
: パフォーマンス測定ベースライン(PMB)の設定 |
実行段階では次の5つのプロセスがある。
ステップ7 |
: 作業の認可と実行 |
ステップ8 |
: パフォーマンスデータの収集と報告 |
ステップ9 |
: パフォーマンスデータの分析 |
ステップ10 |
: マネジメントの取り組み |
ステップ11 |
: ベースラインの維持 |
ISOという国際標準としては比較的細かくプロセスステップを規定していると思う。因みに、PMI®のEVM実務標準でも同様のプロセスが示されているが、両者を比較すると計画段階ではステップ数は同じで内容的にも類似であるが、実行段階はPMI®のEVM実務標準の方がステップ数は少なくなっている。
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( 3 ) |
EVMシステムレビュー
EVMシステムが組織の要求事項を満足していること及び適用標準や組織の手順を遵守していることを確認するために、プロジェクトやプログラムのスポンサーが確立されたEVMシステムをレビューすることとされ、次の3つが挙げられている。
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統合ベースラインレビュー(IBR)
パフォーマンス測定ベースライン(PMB)を評価するためのレビュー |
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デモンストレーションレビュー
EVMシステム全体のレビュー |
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サーベイランス
標準が維持されていることを確認するためのレビュー |
APMのEVMハンドブックにはこれらEVMシステムレビューについて詳しい説明があり、特にIBRについてはAPMのIBR実施ガイドに更に詳述されている。
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( 4 ) |
コストとスケジュールのパフォーマンス測定分析
ここではEVMの基本的な考え方が示されている。すなわち、PV、AC、EVの尺度(Metrics)を用いて、CV、SV、CPI、SPIといった現状の指標(Indicator)をどのように計算するか、そして将来の予測であるTCPIやEACをどのように求めるかがまとめられている。
EACには計算によって求める方法とプロジェクトマネジャーが見積る方法の2つが示されていて、特に計算によって求める方法をIEACとして区別している。IEACについてはPMI®のEVM実務標準でも同様に区別している。ここでIはIndependentの頭文字からきている。
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( 5 ) |
アーンドスケジュール(ES:Earned Schedule)
付属書の扱いではあるがESが国際標準に記載されたということは大きな意義があると考える。
プロジェクトの終盤ではSVは0に近づく、「0への回帰(Reversion to Zero)」と言われている。SV=EV-PVで表されるが、スケジュールが遅れているという前提で、計画時の完了予定日を過ぎるとPVは一定(PV=BAC)になるので、これ以降はスケジュールが更に遅れようとも進捗がある限りはSVは0に近づき、完了時点でEV=BACになるのでSVは0になる。
通常のEVMではSV=0は予定通り、SV<0は遅れを示すが、この場合、プロジェクトがどんなに遅れても最終的にはSV=0になってしまい、SVが指標として用いることが適切ではないことになる。
一方、コスト差異であるCVではこのような問題は起こらない。CV=EV-ACで表されるが、プロジェクトが完了(EV=BAC)するまでに要するACはコスト超過が大きくなればなるほどマイナスの値が大きくなるからである。
このようなSVの問題を解決するために考えられたのがESである。SVにはなぜこのような問題が起きるかというと、それはSVをコストの軸で測っているからである。CVがコスト軸で測るなら、SVは時間軸で測ることによりCVと同様の考え方ができる。
ESの詳しい説明はここでは割愛する。
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( 6 ) |
プロジェクトやプログラムのマネジメントプロセスとEVMとの統合
クリティカルパス、リスクマネジメント、クリティカルチェーン、ES、およびアジャイルなどのマネジメント手法やPMO、継続的改善、ガバナンスは、EVMと統合されるべきとしている。
PMOはEVMを用いて実務者が用いる標準やプロセスを提供している、継続的改善プロセスはEVMもその役割を担う、そしてプロジェクトやプログラムのガバナンスはEVMとの整合性が重要としている。 |