グローバルフォーラム
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「グローバルPMへの窓」(第127回)
夏のキャンパス往来

グローバルPMアナリスト  田中 弘 [プロフィール] :9月号

 7月から9月は、例年大学の合計6つのキャンパスを往来することが続いいていたが、今年は、北陸先端科学技術大学院大学での夏季集中講義2本を冬一本に集約したので、4本まで減った。しかし猛暑の今年はこれでもかなり大変である。8月初めに岡山県立大学にオリエンテーション授業をやりに行った際は、ようやく大学に到着したと思ったら40℃のコンクリートのスロープで足を取られ転倒し、左肘を思いきり擦りむいた。6月のフランスで転倒して左手首を捻挫しているので、またか、だ。以前からであるが、視線と脚が同期しないのが問題だ。

 いくつかの大学院で教えていると素晴らしいプロフェッサーに時々出会うが、今年も慶應義塾大学大学院の夏期特別授業で、ペンシルベニア州立大学のケンジ・ウチノ教授と合同授業を行い、米国の一流プロフェッサーの博識と講義技術に大いに学んだ。ウチノ先生は圧電テクノロジーの世界的な権威で昨年からIEEE(米国電気電子学会)の世界アンバサダーとして1年のうち三分の一はヨーロッパを中心に海外の大学で招待講演を行っている。テクノロジーの権威であるが、MBAでもあり、‘ポリティコ・エンジニアリング’という独特のパラダイムを生み出して迫力のある講義をされる。日本出身(大学准教授まで)であり、本来は柔軟性のある方であるが、こと講義については、名門ペンシルバニア大学流を決して曲げないのはすごいが、学生は課題の厳しさに悲鳴をあげている。一方筆者は国内外各校の学生のレベルに応じて講義内容と成績評価を変えており、教員としてのスタイルは異端であろう。

 今年も8月第4週恒例の、フランスSKEMA経営大学院でのEU EDEN博士セミナー“Perspectives on Projects”に出席した。2003年から始まり16年間続いているが、体調不良で参加を辞退した11年以外はすべて出席しており、参加者中で最長記録を誇っている。今年の筆者の持ち場は、”Project marketing in the worldwide oil and gas industry - a constellation of stakeholders co-creating strategic value for the industry”という学術研究の90分の中間発表とDBA(Doctor of Business Administration) 博士論文最終審査の審査員2件、及び筆者の専門分野に関係する研究テーマを有する学生とのスポット面談指導であった。この世界セミナーは、所属を問わず、教員と学生の出会いと自由指導・交流の場であり大変よい。

 研究発表は共同研究の相手であるProfessor Laurence LECOEUVRE (元研究科長)と2人で行う予定であり、これで二人ともEDEN Seminarを引退と考えていたが、7月末にSKEMAを退職して9月新学期から新たな大学院に移るLaurenceはSKEMAから参加を拒否され、結局田中が一人で発表を引き受けることになった。

研究発表(60分真剣に聞いていただいた) 研究発表(60分真剣に聞いていただいた)
研究発表 (60分真剣に聞いていただいた)
 
 今年の発表も最終3日目の最終スポットであったが、きわめて集中してプレゼンテーションを行うことができて、参加の学生と教員のフィードバックは上々であった。今回のセミナーでも、拘束は9時から19時で、その後毎日夕食会があったが、食事は軽いものを食べる、ワインは飲みたい量の半分にする、皆さんより早くホテルに帰る、セミナー中もつまらないセッションでは、大学院の隣のホテルに戻って休憩をとる、と徹底した自己管理を行ったので、疲れも昨年の半分になった。

 フランスは、今年3回目の訪問であったが、最近はテロ防止もできており、町も落ち着いている。しかし、8月末はTGV(新幹線)の遅れ(30分~60分)が常態化している。リゾート帰りの家族6~7名で十数個のバッグやボードなどリゾート用具をかかえ、幼児やシニアもいるので、TGVに乗り降りするだけで大変である。

 今年は、出張というと旅程が乱れることが多かったが、今回もパリから帰路のアシアナ航空ソウル・インチョン行が3時間遅れた。インチョン空港は世界有数のハブ空港であり、日本や中国の各空港からアシアナ便でインチョンに来る乗客を待って、ヨーロッパ便が出発するので、帰りのヨーロッパ発の便が遅れがちとなる。その結果、昼にホテルをチェックアウト後パリ空港で11時間待っていたが、アシアナはスターアライアンス所属であるので、ラウンジで粘って、仕事をしていた。パリで早朝から夜まで待つのは、セネガル帰りで慣れているが、パリのスターラウンジはともかく冷房が効きすぎて寒い。

 猛暑で仕事を行う意欲も減退していたが、日本で得られない仕事仲間と集うEDENセミナーは一番の覚醒剤であり、頭が冴えてきた。フランスでも帰国しても時差ボケはないので、秋もがんばれそうだ。 ♥♥♥

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