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「日本再生“アベノミクス”を成功させるために何が必要か」 (53)
高齢化社会の地域コミュニティを考えよう (29)

東京P2M研究会 渡辺 貢成: 8月号

Z. Iさん!
先月号の話では町長選挙を前にして、町長の話があり、今の再生協議会は期待以上のことをしてくれたという話だった。町長の話に対し、Iさんは今の再生協議会は素晴らしい成果を出した。そして協議会のメンバーは実力があると賛美した。しかし、次の課題がある。今回の成果だけでは、これ以降の人口減に見合った予算縮減への対応が難しい。そのため町が掲げた総合戦略の最も重要な課題への積極的な対応が求められる。そして、今のメンバーなら新たな対策で成果をだすことができると思う、と回答した。町長はその理屈は十分理解しているような口調だったと聞いた。
I. 先月のお約束である県住宅供給公社理事長の話
公社がこれまでに協議会として実施してきたのは、若者向き、1DKのリフォームでスマートさと家賃の低下で入居者が増え、昨年度の人口増減がとんとんとなった。
ただ、この程度の改革では公社は生き延びられないと以下の方向転換を考えている。
公社の理事長の簡単な履歴
ドイツでの留学が長く、その後もドイツの政府機関で働き、ドイツの素晴らしい経済成長とその政策に貢献していたという。その実績が買われて、公社の新しい政策を企画し、理事長として実行することになった。
大きな政策転換は県民への住居提供の継続だけでは破産するため、農業を取り入れた施設運営の実施。これからの農業は最先端技術を利用する農業、一般的な農業では第六次産業化することで施設運営産業とのコラボで収益を図ることができる。ドイツで鍛えられた発想で、農産物の有効利用、農作物の廃棄分を自社で活用し、実質的な農産物のコスト低減化を企画する。
老人が増えている環境の中では建物の建設維持管理だけで空き家対策まではできないが、在宅介護も含めて、介護施設の運営管理に進出するが、JAを経由しない安く、新鮮で美味しい野菜類を廃棄処分なしで提供することで農産物の実質的な値下げを行い、収入を増やすという発想で、新しい道が開けると決断したようです。
このような話がありました。
Z. 公社が方向転換できると、再生協議会も新しいアイデアが出てくると思うがどうかね。
I. そのとおりです。その理由を説明します。この町は3年前に町の総合戦略を立て、この戦略を実施するために、再生協議会を発足しました。
基本目標1. 安心な暮らしをまもり、住み続けられる地域をつくる
基本目標2. 町の強みを活かした魅力ある暮らしを提案し、新しい人の流れをつくる
基本目標3. 若い世代の結婚・出産・子育ての希望を叶え、子育てを楽しめる環境をつくる
基本目標4. この町で安心して働き、仕事を生みやすい環境をつくる
です。
協議会が、これまで実行したプロジェクトは
プロジェクト1. A小学校友情の山プロジェクト
A小学校の裏山に山ゆりを栽培し、見事な群生が見られます。開花の時期には新聞社が報道すると横浜。鎌倉あたりから多くの人が詰めかけます。コミュニティスクールの展開
プロジェクト2. 古民家活用プロジェクト
古民家を活用して、歴史とイベントの会を開き、無料ですが、当初の予想を上回る人が集まり、成果を上げています。
プロジェクト3. 文化イベントプロジェクト
50年前にミカン山を切り開き、大型の団地をつくりました。団地は富裕層向けに、150坪から200坪の区画の土地の販売、100坪から75坪の土地に建売住宅の販売、2DK~2LDK並みのアパート群、県営の小型アパート群が団地に建設されました。50周年を記念する式典のために“山ゆり合唱団”小学生から90代の老人を含む大合唱団を結成しました。合唱団は数名のプロのオペラ歌手が指導し、これまでにアメージング・グレース、本年はヘンデルのハレルヤが演奏されます。この合唱団の迫力のすごさに圧倒されます。
プロジェクト4. 地域福祉プロジェクト
老人の活性化を求める活動で、体操、カーリンコン(ゲーム)歌の会、落語会等痴呆防止を含めた健康寿命の向上を目指す運動に多くの老人が集まり成果を出しています。
プロジェクト5. 公社のリフォームプロジェクト
公社が独身者のためのアパートをリフォームし、若者の入居が増加したおかげで、人口減が昨年はとんとんとなった。
プロジェクト6. 公園・散策路改修プロジェクト
人口減に人が集まらない公園の活性化をめざすプロジェクト。花の少ない都市公園に大型の花壇をつくり、地域住民のゆとりの拡大をはかった。次期テーマは予算がないので、児童遊園地の花壇化をバーチャル・リアリティで住民に考えてもらう提案を打診している。もともと子供が少なくなった公園にむりやり人集めする必要はないではないかという意見が強い。
別の都市公園ではこれまで公園愛護会がなかったが、公園付近の子持ち(幼稚園年長、小学生を持つ親)が複数名で公園愛護会を設立し、公園の改修を町にお願いするのではなく、改修のための材料を町から支給してもらい、住民親子で大工仕事、ペンキ塗りまで行うことを前提とした公園利用愛護会が結成されました。
また、探索路開発チームは富士山遠望を求める地域回遊者のための探索路を開発し、これから道開きをするところです。これまでに3回程度参加者募集したところ20~30名程度の参加者があることがわかりました。
Z. それは素晴らしいことだね。6つのプロジェクトは概ね成功といえるな。しかし、すべてのイベントが無料で公開されているが、収入なしで将来も引き続き経営管理できるか疑問だな。
I. 再生協議会の幹部の発想は再生協議会という組織は寄り合い所帯で、幹部の意思で業務を自由にコントロールできない。最初は確実にできるテーマを取り上げ、成功させることで、住民の信頼を獲得し、それから拡大するという方針でした。
Z. それは一つの見識といえる。本職を退職した後のプロジェクトで信頼する部下もいない状況でプロジェクトを成功させるのは困難だろうな。しかし、このままでは折角改修した公園の持続的維持管理ができるか私は疑問に思う。
I. 本件は基本的な問題で、困難が付きまとうため、プロジェクトマネジメントの専門家ではないと二の足を踏みます。私はバーチャル・リアリティ的な戦略の検討を提案してみます。利害関係者が大勢いますから、まとめが困難です。仮想的にいろいろな条件を掲げ、検討を進め結論を出します。検討に失敗しても無駄にはなりません。条件を変えて検討しますと、ラッキーな結果を出すこともできます。この結果が魅力的だと、関係者の意気込みが高くなり、成功間違いなしになります。
Z. では、Iさんの方針を信じてみよう。

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