PMプロの知恵コーナー
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「エンタテイメント論」(125)

川勝 良昭 Yoshiaki Kawakatsu [プロフィール] :8月号

エンタテイメント論


第 2 部 エンタテイメント論の本質

6 創造
●創造とは
 筆者は、創造とは何か? これをシンプルに定義している。以前、本稿でもこの事を書いた。「創」とは「発想(思考)」を云う。「造」とは「発汗(行動)」を云う。エジソンの「閃き(Inspiration)」と
「発汗(Perspiration)」を引用して、新しい意味を加えた。

 創造は1%の閃きと99%の発汗が不可欠とエジソンが主張した。しかしどちらが重要か? エジソンと某人物で争った。この逸話を本稿で書いた。どちらが重要か? 某人物とは誰か? 答えて欲しい。

出典:トーマス・エジソン Thomas-Edison-Quotes-.jpg.co 出典:トーマス・エジソン
Thomas-Edison-Quotes-.jpg.co

●AIを核とするデジタル革命の時代
 本号でデジタル革命の時代の到来によって何が起こるか? 少しだけ議論したい。しかし「革命」はオーバーな表現で「変革」が適切と云う意見もある。またそもそも「創造」を議論している本論で、デジタル革命の時代の到来を何故議論するのか? 下記の事を知れば、「革命」と「創造」の意味を理解して貰えるだろう。

●デジタル革命に対応しない会社は将来、消滅
 AI技術、IOT技術、クラウド技術、ロボット技術などの「先端デジタル技術」は、今後も急速な進化を遂げる。これは「デジタル変革」と言われている。しかし筆者は、「デジタル革命」と云うべきと考える。何故なら「先端デジタル技術」を導入・活用した企業は生き残り、発展する。しかし導入・活用しない又はできない企業は近い将来、消滅するからだ。まさに新しい産業革命が起ころうとしているからだ。

 おまけに、世界は、既に「デジタル経済」の時代にまで突入している。しかし日本だけが「蚊帳の外」にいる。何でこんな事になったのか?

●先端デジタル技術の本質
 この技術は、単なる技術ではない。その範疇を超え、「経営改革」を実現させる「経営基盤技術」に変質している。だからこそ、これを導入・活用した企業、例えばUber、Airbnb、Spotify、WeWork等の様な企業は、現時点で既に事業の範囲を広げ、事業の深度を深めている。今後益々その数を増やし、益々発展し、近い将来、世界の経済、産業、事業の中核的地位を占めるだろう。

 一方導入・活用しない企業又はできない企業は、業種、業態、規模の一切を問わず、衰退して、確実に消滅する。その兆候は既に始まっている。

出典:各社のPR画 各社のHP等

●AI技術の進歩で全世界の全産業の被雇用者の半分の「職」は消失
先端デジタル技術の中で「AI技術」の進歩で最短10年、最長20年以内に全世界の全産業の被雇用者の半数の「職」は確実に消失する。
この予測は、世界で最初(2010年)に国立情報研究所の新井紀子教授の発表で始まった。その後、オクスフォード大学、MIT、駒澤大学、野村総研など数多くの機関の教授や研究者が続々と異口同音に予測を発表した。予測内容は、ほぼ近似している。
なお日本のAI技術の開発は実は遅れている。米国や中国等に負けたくない。勝てるか?

出典:AI artificial-intelligence.jpgcom 出典:AI
artificial-intelligence.jpgcom

●消滅する「職」とは
 それは、受付、事務、営業、総務、経理などの「事務系の職」、生産、製作、加工、修理、工場管理、各種システムの分析、評価、制作、各種の設備操作、運転などの「技能系の職」を云う。しかし弁護士、公認会計士、医者、専門技師などの「専門系の職」は無くならない。しかしその専門職の大半はAI技術で補佐されるので、今まで必要として専門職の数は大きく減少し、余剰の専門職者は失業する。

●消滅しない「職」とは
 それは、AI技術が対応不可能な「創造的な思考と行動」が求められる「職」を云う。その職に従事する人物とは、新しい商品、製品、サービス、事業を考案し、「新しい価値」を創造する「ビジネス領域」の「経営プロ」や「仕事プロ」である。また「新しい知」を創造する「科学領域」の科学者、「新しい技」を創造する「工学領域」の工学者、更に喜び、楽しさ、驚き、恐怖などの「新しい美と感動」を創造する「芸術&エンタテイメント領域」の各種の芸術家、各種のエンタテイナーである。

 筆者が本論で「デジタル革命」を取り上げた理由はまさしく此処に在る。「豊かな発想」と「豊かな発汗」が可能な「創造的仕事のプロ」は、絶対に「職」を失わないのである。我田引水の謗りを受けるが、筆者の「夢工学式発想法」を一刻も早く体得し、このプロになっておくことは、その人物の仕事だけでなく、将来を決する。

●米国SF映画「マイノリティーリポート」と酷似の「AIポリス・パトロール」
 米国ロスアンデルス・デルモンテ警察署は、AIポリス・パトロール・システムを使って不審者を検挙している。米国SF映画「マイノリティー・リポート」の一部は実現してるのだ。

出典 AIポリス・パトロール Loangels+Polis+Dept+imgesnews_web.com
出典 AIポリス・パトロール Loangels+Polis+Dept+imgesnews_web.com

 同警察のAI技術システムは、過去の数百万の犯罪ケースを場所毎に読み込み、他の犯罪の数百万ケースと組み合わせ、超レベル数の犯罪分析データを完成させた。それをベースにパトロールする地域の犯罪発生率と犯罪種類などを予測したデータをパトロールカーに送信。一方パトロール中の現場データをAI分析センターに送る。この双方向で犯罪予知と犯罪現場の容疑者を検挙する。

 しかし同警察署長は「最後の判断は人間が行う」と語った。AIパトロールの警官の「職」はなくならないが、人数は半分になるだろう。

●「味噌も、糞も一緒にするな!」
 AIとAI技術は別物である。似ているが、全く別物である。多くの人はAIを誤解している。AIはこの世に存在していないのである。将来も存在しないかもしれない。しかしAI技術は存在する。

 AIとは、「人工知能」を云う。まさしく人間の頭脳を人工的に創造したものである。これこそがAIである。これを真のAIと云うべきだ。しかし紛らわしいので筆者はAIと区別するためAI技術とした。一般の人は、なんでもかんでもAI。この事を昔の人は「味噌も、糞も一緒にするな!」と言った。
汚い話だが、味噌も、糞も良く似ている。

 AIが実現し、シンギュラリティーが起こる時とは、人間が、第1の脳(頭脳)、第2の脳(腸)、第3の脳(皮膚)の機能と構造を100%解明した時である。その時、人間は、神の領域に一歩踏み込んだ時だろう。またAIとAI技術が一緒になって、「感性」の機能を発揮し、その活用範囲が無限化する時であろう。筆者は、その様なAIの実現を人間の手では不可能と「感覚的」に思っている。

 さてAI技術は、自己学習能力を持つ「深層学習(Deep Learning)」の力を得た。しかしAI技術は「理論、確率、統計」の数学3要素に基づくコンピューター計算技術である。AIモドキ人工知能の、AI技術は、意義、意味、常識などの理性的機能を発揮することは現時点では不可能である。将来は可能になるかもしれない。しかし上記の通り、喜怒哀楽、感情移入、感情吐露などの感性的機能を発揮することは、将来も含めてほぼ不可能ではないか。

出典 人工頭脳イメージ&深層学習 Deep-Learning-Architecture.com
出典 人工頭脳イメージ&深層学習
Deep-Learning-Architecture.com

つづく

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