図書紹介
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大富豪からの手紙  Nine Letters from a Millionaire
(本田健著、ダイヤモンド社、2018年3月28日発行、第3刷、349ページ、1,600円+税)

デニマルさん : 8月号

今回の本は、友人が主宰する読書会に誘われて参加した時に紹介されたものだ。その会は、読書好きなサラリーマンや定年後の方々や学生が集まって、新しい本や珍しい本を紹介し合っている。その中にはブログで定期的に書評を発表している猛者から、単に本が好きでジャンルを問わず月に平均10冊以上も読破している青年や、特定の作家の作品だけを追い続けている老人等々がいる。確か、今年3月上旬に友人が紹介したのが、今回の本である。この本に興味を持った筆者は直ぐに読んでみた。ここで紹介するに相応しい内容であると確信し、本の内容だけでなく背景や著者等を色々と下調べして、やっとここで紹介する運びとなった。先ず著者であるが、「ユダヤ人大富豪の教え」(2006年6月発行)等130冊以上も著書を出版し、累計で700万部も売り上げているベストセラー作家である。それと「お金と幸せ」「ライフワーク」「ワクワクする生き方」等の講演会やセミナーでの人気講師である。更に、インターネットラジオ「本田健の人生相談~Dear Ken~」では3000万のダウンロードがあると自己紹介している。その著者が13年振りに書いた大富豪シリーズである。この内容は、ビジネスで大成功して大富豪となった祖父が、財産を全く残さずに他界した。その代わり9通の手紙を孫の敬(ケイ)に遺していた。そして、主人公の敬(ケイ)が、弁護士を通じてその手紙を受け取り、人生を変える旅に出るというストーリィだ。この旅に出ることと9通の手紙が物語の軸となり、「今、何を成すべきか」を追い求める旅が続く。
著者は、本の発表インタビューで「この本を書く前に、人生で大切なテーマを列記して、そのうち手紙という形式で内容を9つに絞ったが、楽しい作業であると同時に難しくもあった。9つ以外にも、時間、結婚、健康等々たくさんあった。そして偶然に導かれて旅に出るという発想が若い青年には必要であると思って構想を練った。」その結果「構想に10年、執筆に3年を費やして、この本が完成した」と語っている。この9通の手紙には、それぞれタイトルが付いている。それが【1.偶然】【2.決断】【3.直感】【4.行動】等と続いて【9.運命】まである。この1通の手紙が次の手紙に繋がり、それぞれが相互関連して、主人公の敬(ケイ)と言うか、読者を新たな時空に引きずり込んでしまう本である。

最初の手紙         ――必要な時に読む手紙――
この本は9通の手紙から成っていると書いたが、実はこの9通を紹介するプロローグ的な手紙から物語は始まる。この手紙には孫への優しい気持ちと、手紙を読むタイミング等のルール的ことが書かれてある。先ず、手紙を読む時は「必要と感じたタイミングで、1番から順次開封する。」そして「そのタイミングは君の直感でいい」とある。そして、その手紙は人から人へ、世界各地の都市への旅に誘われる。神戸、小樽、チェンマイ、ブータン等に出掛けたのは、一見「偶然」に思える旅が、「偶然には必然もある」と意識させられる。

大事な手紙         ――自分らしく生きる手紙――
この手紙には「人生で一番大切なものを学ぶ機会を得る」と書かれてある。然らば「人生で一番大切なものとは何か」を明確にする必要がある。だが、人の価値観は多種多様であり、一言で表現するのは難しい。しかし、誰しも「最高の人生を生きる」と想い願う人は多い。手紙には「具体的でなくても、最高の未来を手に入れる目標でも良い」とある。その時点から最高のパートナーや仕事等々の関連性がイメージ出来る。もう一歩踏み込んで「自分にしか出来ない最高の人生を“決断する”こと」が、全ての始まりだと書いている。

運命の手紙         ――シンクロニシティ――
この本に「シンクロニシティー(Synchronicity)」というキーワードが出てくる。これは、心理学者のカール・ユングが提唱した概念で「意味のある偶然の一致」を指し、日本語では「共時性」「同時性」「同時発生」と訳される。例えば、虫の知らせのようなもので因果関係がない2つの事象が、類似性と近接性を持つことと言われている。しかし、著者は一見偶然に見える「意味ある必然を偶然の出会いのチャンス」として、勇気を持って行動する。そして出会った相手に貢献することも、シンクロニシティーが生れる原点だという。

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