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シェアリングエコノミー

PMAJ理事長 光藤 昭男 [プロフィール] :7月号

 米国で急速に勢いを増している新興企業として、AirbnbやUberが注目されている。Airbnbは民泊仲介ビジネスであり、Uberは車の相乗り仲介である。いずれも米国西海岸のサンフランシスコで、それぞれ2008年、2009年に創業している。活用されていない資源の有効利用で、Airbnbは空き部屋の、そしてUberは車を利用していない時間の活用だ。資源の共用をサービス化しているのでシェアリングサービスといわれる。このような経済をシェアリングエコノミーと呼び、特にこのビジネスはICT抜きには成り立たないので「デジタルエコノミー」とも称されるそうだ。このビジネスの世界的な市場規模は急拡大している。

 シェアリングエコノミーは、「日本語では『共有型経済』」だ。(「日本大百科全書」より)この貸し出しや交換・共有の対象は、有形資産だけでなく、無形資産も含まれる。また、多くの場合、仲介する人・企業には、インターネット経由で間接的に”会う“ことはあっても、直接顔を合わせることは原則ない。従い、最大の課題は当事者同士の”信頼性や安全性“をいかに確保するかである。

 総務省「平成29年度版情報通信白書」の特集では、「スマートフォン経済の現状と将来」をテーマに、スマートフォンの効用がシェアリングエコノミーを拡大しているとしている。「シェアリングエコノミーは、資産やスキルを提供したいという個人と提供を受けたいという個人とをマッチングさせるもので、インターネット利用を前提としている。スマートフォンの普及によってそうした個人間マッチング取引がいつでもどこでもリアルタイムで行うことが可能になり、徐々に身近なものになろうとしている。シェアリングを一層後押しているのが、SNSである。・・・実名利用のソーシャルメディアの普及に伴って、これまで顔が見えず、信用度を推し量りにくかったインターネットの向う側の個人等について、一定程度の信用度が可視化され、個人等によるサービスも、選別して利用することができるようになった」。この“実名利用”のSNSとは、FACEBOOKの事を指していると思われるが、“実名利用”ということで、上記課題であった“信頼性や安全性”の問題がかなり軽減されている。

 白書では、さらにシェアリングの対象を「モノ」、「空間」、「スキル」、「移動」、「お金」の5類型に分けている。「(1)モノに関するシェア(モノ×シェア):個人間で利用していないモノを共有するサービスなどで、フリマアプリやレンタルサービス」で、最近上場したメルカリなどが事例だ。「(2)個人の所有するスペースを共有するサービス(空間×シェア):住宅の空き部屋等を宿泊場所として貸し出す民泊サービスをはじめたとしたホームシェアや、駐車場、会議室の共有」で、スマートパーキングやAirbnbなどが事例だ。「(3)個人に家事等の仕事・労働を依頼できるサービス(スキル×シェア):家事代行、介護、育児、知識、料理」で、AsMamaやエニタイムズなどが代表例だ。「(4)移動に関するシェア(移動×シェア):自家用車の運転者個人が自家用車を用いて他人を運送するライドシェアやカーシェア」でUberが代表例だ。最後に、「(5)お金に関するシェア(お金×シェア):クラウドファンディング」だ。

 このサービスのステークホルダーは、“提供者”、“利用者”、“インターネット上マッチングプラットフォーム提供の事業者”であるが、この3者の中で、シェアリングエコノミー下でサービス開始が容易となり大きく変貌したのは“提供者”の在り方である。スマートフォンがあれば、いつでもどこでも誰でもサービス提供者になりうる。従い、「(1)(B to B型やB to C型から個人でも出来る)C to C型の取引への移行、(2)個人所有の遊休資産等の有効活用、(3)事後レビューの下での適切なサービス提供(に移行)」。(同白書)知恵と熱意があれば、個人がビジネスを立ち上げやすくなった。かつ、事後レビューは、顧客ニーズが「見える化」されたと同じで貴重な情報だ。これに適切に対処していれば、方向転換もタイミングよく何度も出来る。ビジネスの成否が早目に掴め、撤退する、あるいは、本格的に投資する等の判断がタイミング良くできそうだ。

 シェアリングエコノミーは日常の生活に入り込み、拡大の一途だ(同白書)。現在、政府でも検討はされているが、拡大する実態に法律が追い付かない整合性や制約の問題、シェアリングにより得た利益の税務上の問題、対象が広がりなんでもシェアリングした際の人々の慣れの問題(特に、シニア世代)が課題として指摘されている。シェアリングサービスが企業内で利用されるには、しばらくの時間が必要のようだ。

以 上

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